第8幕 トイレの花子さん
雪女…… 常に白装束を身にまとい、白い息を相手に吹きかけて凍死させるというなかなかに戦闘に特化している妖怪で、雪と同じ性質を持っている為熱に弱く火に当たったりするとすぐ消えてしまうという儚さも備わったある意味最強の妖怪……! その為アニメや漫画では良く美少女として扱われており、妖怪女子会ではその事で良く嫉妬の言葉を投げかけられているという…… 極めてどうでもいいわね、はい。
「えーっと、私はその雪女さんの『藍』さんのお家へ居候する事になるのです……よね?」
「えぇ」
「学校に来させない理由は、教室が冷凍庫になる可能性があるから、ですよね?」
「そうね」
「じゃあ居候する私は凍らされる可能性あるんじゃ?」
「貴女のような感の良い女の子は嫌いよ」
私が一際輝く(黒く)笑顔で花子さんに嘘偽りなく言葉を返すと、彼女は一八〇度ターンして、私に背中を向けて全力で走ろうとする。
しかし、それを見越していた私は彼女の肩に手を掛けて、力づくでその場に留まらせた。
「いやあああああああああああ、いやあああああああああああ!!!! そんな命の危機に常に晒されるぐらいなら私は旅に出るううううううううううう!!!」
「ここまでやらせておいて今更どこに行こうと言うのよ! 大丈夫! 彼女は感情が昂らない限りは普通の子だから!!」
「絶対発動しちゃいますよね、それ!!? あなたに会った瞬間恋の炎がバーニングして大吹雪を起こすわよね!??」
「何で恋なのか分からないけど、大体その通りだから私は何も言えないわ!」
だから、私は余程の事が無い限りは自分から彼女に会いに行くことは無い。藍ちゃんから来られる時はあるけどね、その場合諦めて私はコールドスリープしますよ、えぇ。
「それにほら、私も一応保険として彼女の家へ泊まるって言ってるから…… 旅は道連れ世は情けって言うでしょ?」
「それはそうだけども…… でも、頼んだのは私の方だから仕方ないね」
彼女はそう諦めたように言い、私は内心ほっとした。
もし、このまま私が説得出来ずに花子さんを路頭に迷わせてしまうと、普段は姿を見せない悪鬼等から狙われる可能性が高くなる。そうなると、悪鬼から勧誘されて悪の道に堕ちるか、最悪喰われてしまう事だってある。
だから、私達巫女はあまりはぐれ妖怪を出したり、地縛霊をそのままにして悪鬼に襲われないよう出来る限り早く彼らを見付けて新しい住処を見つけたり成仏させたり奔走しているの。
「その代わり、ちゃんとこの学校へすぐ戻れるように生徒にしてよね!」
「勿論、私は嘘を吐かないし、約束は必ず守る清き生徒会長を自負しているから」
「確かにお腹の中は綺麗なぐらいまっくr」
「花子さん、貴女が生徒になったあかつきには雑用係に任命して毎日便所掃除をさせますね♪」
「ごめんなさい許してください普通の生徒にしてください」
私がいつもの綺麗な笑顔で彼女へそう言う(脅す)と、花子さんは猛烈な勢いで謝って私に土下座して頭を下げまくる。その様子を見て、未来ちゃんはある意味的確な一言を呟いてこの場を締めくくったのだった。
「正にトイレの花子さんだね」
「誰が上手い事言えと」