金色の鍵
小学二年の夏休み、オレはおばあちゃんの家についてすぐ研究部屋の鍵について聞いてみた。
おばあちゃんは、約束どおりちゃんと探し出しておいてくれた。
「部屋は真斗が来てから真斗に開けてもらおうと思ってね。」
そういって渡されたのは金色をした古い真鍮の鍵。
真鍮だって教えてくれたのはお父さんだけど。5円玉の材料なんだって。
おばあちゃんが見つけてから磨いておいてくれたその鍵は、持つところが王冠の様なデザインでお母さんからもらってから自分でも何度も読んだ人魚姫の絵本にぴったりでうれしくなった。
オレの手のひらの上でキラリと輝く鍵に見とれていたら
「すごーい。素敵じゃない真斗、部屋の中どうなっているのかしら楽しみね」
お母さんがやけにはしゃいだ声で覗き込んできた。
「そうだ真斗、なくさないようにこれ」
お母さんはつけていた金色のネックレスを外してその鎖を鍵の穴に通すと、オレの首にかけてくれた。
「二人とも、今日はもう遅いから明日みんなで小屋の掃除をしよう」
そうお父さんが言って、研究部屋探検は明日になった。
オレはすぐにでも、小屋にいってみたかったけどまぁしかたがない。
久しぶりのおばあちゃんの料理も楽しみだしな。
夕飯までの間、お父さんと縁側に座って東京と違う空いっぱいにキラキラしている星を見ながら明日からのことをワクワクと考えていた。
翌朝は、いつもより早く目が覚めた。お母さんもお父さんもまだ寝ていたから気がつかれないようにそっと布団をぬけだした。猫になったみたいだ。猫のまま廊下をそっと忍び歩いて庭にでた。
「おばあちゃん」
「おや、真斗おはよう。早いねぇ昨日は長旅で疲れたろうに」
ニコニコと振りかえったおばあちゃんの手には箒があった。
「楽しみで、目がさめちゃった。おばあちゃん庭の掃除はオレがするから朝ご飯。お腹がすいたよ」
「じゃあお願いね。お手伝いだなんて、真斗もずいぶん大きくなったんだね」
おばあちゃんは、いつものニコニコ顔をもっとくしゃとさせて笑った。
夏休み中の庭掃除はオレがしようと心に決めた。
「お手伝いの宿題は毎日の庭掃除にする。」
「ありがとう」
おばあちゃんは、目をまるくする。
見上げた空には上りたての太陽。澄んだ青空が広がっていた。
「早くご飯にして小屋掃除しようよ」
「はいはい」
楽しい1日になりそうだ。
朝ご飯の後、お父さんお母さんおばあちゃんもみんな揃って離れの小屋に向かった。
首にかけていた鍵を外し、鍵穴へそっと差し込む。
ずっと閉ざされていた秘密の扉。そう思うとドキドキする。
特にお母さんは、オレと同じくらい楽しんでいるみたいだ。
お父さん、おばあちゃんはちょっと違うかな……。
ギィーきしんだ音をたてて扉が開かれた。