命くらい捧げてやる
深夜を過ぎた王城。
激闘の果てにところどころが崩壊し、瓦礫となった王座の間にて。
激闘を超える死闘の幕を開けようと。
身構える聖騎士の前で、真の力を発揮すると暗殺者は宣言する。
「魅せてあげるよ。天より堕した、モノの力。無貌の神とそしられし、混沌の力をッ!」
狂気の顕現だと語られた得体のしれないナニカ。
それらを従えたムーが、その場でくるりと一回転する。
それに応じるようにどす黒いものは弾け飛び、一瞬、ムーの姿が隠される。
その瞬間の後、空間に溶けるように、ナニカたちが微塵も残らず消滅する中。
暗殺者という仮初の姿を破り、ソレは立つ。
思わず息をのむミリア、そしてセーラ。
そんな彼女らの前に現れたのは――
「じゃーん。妖花、アルラウネちゃんだよー? にょきにょきー」
大輪の中より咲き誇り、頭長に綺麗な花を咲かせる妖艶な美女だった。
「……」
「……」
ミリアとセーラは、そろって口を噤んだ。
だがそれは、恐怖、驚愕とは無縁の感情。
……気まずさ故だった。
ミリアとセーラは「えーっと、その、どうしましょうか……?」とでも言うように、ちらちらと互いの出方を窺っていた。
そうされるのが予想外だったらしく、ムーが困惑する。
「え!? ええ!? どうしてそういう反応!? 『変身能力、だと!?』もしくは、『アルラウネ、だと!?』ってびっくりしてよー!」
ムーは目一杯体全体を揺らして文句を垂れる。
「と、申されても……のう?」
「……うん」
「もうなに!? 言いたいことがあるならはっきり言ってよー!」
イライラを見せるムーへ、セーラが渋々口を開く。
「確かにアルラウネとは凶悪で珍しいモンスターではあるが、狂気だ混沌だなどと大仰な文句の後にそのような姿を見せられてものう。いささか迫力に欠けると申せばよいか……。はっきり申して残念でないか? のう?」
「ええ。せっかくのキメッキメなセリフも台無しだよね。黒歴史引っ張りだしてもらって悪いけどさ」
「く、黒歴史!? そんなことないでしょ!? さっきのはそんなでもなかったでしょ!?」
顔を真っ赤にして抗議するムー。
「そうかの?」
「そう?」
セーラとミリアが、互いに構える。
「え? なになに?」
きょとんとするムーの前後で、
「『魅せてあげるよ。天より堕した、モノの力』ッ!」
セーラは片目を押さえ、歪んだ笑みで魅せながら。
「『無貌の神とそしられし、混沌の力をッ!』ッ!」
ミリアは上半身を不自然に反らし、悠々と腕を組みながら。
息ぴったりに、ムーのセリフを再生した。
「きゃー! やめてやめてー!」
ムーは顔を押さえてしゃがみ込む。
「ごめんなさい! 確かに冷静になってみれば結構アレなセリフでした! 黒歴史がこんにちはしてました! ムーが全面的に痛い子でした! 認めるからもうやめてー!」
「フ。よいじゃろう」
「言われなくてもやめたげる。こんなカッコ悪いポーズ、誰が好んでするものか」
「ちょ、ちょっと!? そのポーズはキミたちが勝手に追加して――」
「「『魅せてあげるよ。天より堕した――』」」
「ごめんなさい! なにも思うところはございませんからっ!」
涙ながらに深々と頭を下げるムー。
無様な姿に笑いを禁じえなくなりかけていたミリアだったが、ずっとこうしているわけにもいかなかったので、しぶしぶやめてやった。
「うむ。欠陥品のわらわじゃが、今のはこう、悪くなかったと思えたぞ?」
「ですね。姫さま、なかなかやるじゃないですか」
「ククク! その方こそ、褒めて遣わそう」
確かな達成感を覚え、笑い合うミリアとセーラ。
その様は、激戦の後に健闘をたたえ合うライバルのようだった。
「キミたち殺し合ってる相手だよね……? どうしてそんなに息ぴったりなの?」
「さて、茶番はこのくらいにしておこうか」
「そうですね。ほら、クソアマその二、呆けない。さっさと続けようよ?」
「なんか、とっても納得いかないんだけど……。でも、そうだね」
ムーは気持ちを切り替えるように大きく深呼吸。
そして、変化前とは違う大人びた声で叫ぶ。
「さあ、ここからが本当の闘いだよ! 『パンデミック・パーティー』ッ!」
次の瞬間、大理石の床を破り、巨大な蔦たちが幾本も出現した。
その蔦は不気味にぜん動する何百、何千もの腕を全体に生やしている。
「そーれっ!」
ムーの声に応え、腕たちはその手に握っていた大きな種子を辺り一帯へと放り投げ始めた。
地面に落下するやいなや、それらは床を突き破って地面へと埋まり、すぐさま成長。
いくつもの大輪が部屋中へ咲き乱れ、真っ黒い女性たちが咲き誇った。
「むっ!」
蔦の一本がセーラを玉座ごともちあげ、激戦にてすでに壊れていた天井より、さらに高くへ彼女を退避させる。
「姫さまー! 今からちょっと危ない粉が舞い踊るから、キマっちゃわないようそこに避難しててねー?」
上空へと叫んだ後、ムーは安心するようにつぶやく。
「いやあ、姫さまに進言して兵隊さんたちを全て出払わせたのは正解だったねー。おかげさまではばかることなく全力を出せるよー」
そして今度は部屋中を埋め尽くさん勢いの黒い女性たちへ声をかける。
「みんなー? 準備はいいかなー?」
「「「「はーいっ」」」」
ムーの声掛けに、数百もの返答が返ってくる。
「うんうん、いいお返事ー」
それにムーは満足げにうなずいた。
「それじゃあ総攻撃開始ー!」
そして、場違いなお茶らけた声音が、死闘の火蓋を切って落とす。
幾本もの巨大な蔦たちと、何百、何千もの細い蔦たちが、ミリアへ向かって伸びてくる。
「なるほど、見た目だけじゃないんだ」
「そうなんだー。ムーは相手の能力を分析する術に長けててねー。能力をあらかた分析できた相手なら、姿形だけでなく、それも真似することが可能ってわけ」
説明した後、ムーは不思議そうな顔をする。
「でも、いいの? 集中してないと死んじゃうよー?」
直後、ミリアの背後の地面より何本もの蔦が出現、すぐさまミリアへと襲い掛かる。
前後左右より蔦は伸び、逃げ場ないかと思われた。
だが、
「関係ないよ」
ぽつりとつぶやき、剣を構えたミリア。
次の瞬間、迫る蔦すべてが千切れ飛ぶ。
「この程度、わけはない」
神速の剣技で脅威を打ち払った姿に、セーラが思わず声を漏らした。
「騎士団最強と呼ばれていたのは伊達ではないのう……」
「にゃははっ! いいねいいねー! 聖騎士程度、すぐにコンプリートできると思っていたけど、意外と楽しくなりそうかも!」
やる気に満ち溢れるムーに応えるように、アルラウネたちはすぐさま新たな蔦を出現させ、ミリアへと襲い掛かる。
ミリアは地を駆け、叩き潰そうとしてくる蔦を避け、拘束しようとする蔦を切り裂き、攻撃を無効化していく。その動きにはまったくの無駄がなく、付け入る隙を一部も与えはしない。
「すごいすごーい! なんだか舞台見てるみたい! 頑張れ頑張れー! みんな負けるなー!」
ムーの声に応え、漆黒のアルラウネたちの攻撃が増す。
アルラウネたちは蔦を操作しながら、部屋中に毒、麻痺、混乱など、様々な色の花粉たちをまき散らし続けていた。
だが、それでも最強と呼ばれる聖騎士を止めるに値しない。
一対無数、多勢に無勢だというのに、ミリアはそれを感じさせないほどの剣の冴えを見せ続ける。蔦を切り裂きながら、手近にいるアルラウネたちを斬り伏せ、それらの奥に座す、混沌を生み出した張本人を打ち倒すため、確実に進路を作っていく。
だがミリアの頭に、一つの疑問が浮かんでいた。
聖騎士であるこの身は、ほぼすべての状態異常を無効化する。
多少の耐性ではない。完全な無効化だ。
尋常でないほど花粉が飛散し続けてはいるが、どれだけ散布されようと、ミリアは状態異常に陥ることはない。それは過去、アルラウネ相手のクエストで実践済みである。
効果がない事くらい、歴戦の暗殺者であるならば知っているはずだろうが……。
「がんばれー! ひゅーひゅー!」
ちらりと視線を向ければ、密集するアルラウネたちの一番奥で、ムーは呑気に小躍りしている。その姿が、ミリアをとてもイラつかせる。
一秒たりとも我慢できない。
すぐにでも、あの愚者を消滅させるッ!
蔦を回避し、切り伏せながら、ミリアは剣を握る手に力を込めた。
体に宿る魔力を集中。
剣先へ伝わせ、呼吸を整える。
それに応えるように、剣が光り輝き始めた。
これを、打ち放つイメージで――
「『セイントファング』ッ!」
剣を振るうと同時、その軌跡をなぞるよう、光の斬撃が空を薙いだ。
手近にいたアルラウネたちが両断され、それを養分とするように斬撃は肥大化。
威力、速度を増しながら、妖花たちを食み殺していく。
『セイントファング』
魔力を剣先から斬撃と換えて打ち放つ、聖騎士の得意技。
放たれたそれは敵を切り伏せれば切り伏せるほど、威力が増幅していくという、一対多であればあるほど有効な光の刃である。
それを証明するかのように、たったの一撃で妖花の群れは殲滅されようとしていた。
雑草のように成す術なく切り払われていくアルラウネたち。
そして遂に聖なる牙は、混沌を作り出した妖女の喉笛へと迫る。
「おおっと!?」
だが、ムーは身をよじってそれを回避。斬撃は空を斬った。
轟音と共に堅牢な壁に大穴を開け、過ぎていく斬撃。
その光景を見て、ムーはわざとらしく額の汗を拭って立ち上がった。
「にゃははっ。やっぱりやるねー。たったの一振りでムーちゃん以外全部全滅とかさっすが聖騎士! でも不思議だなー? 今の技は見たことあるけどー。いくら大軍を屠ったっていってもあんなに大きくはならなかったような――」
そこでなにかに気付いたのかハッとした顔になるムー。
次の瞬間、斬撃によって穴が開いた壁が、外側から衝撃を受け壊される。
現れたのは光の斬撃。
舞い戻って来たそれが、上空、蔦の上に座すセーラの命を絶ちに行く。
「ほう……!」
「にゃる、しゅたんっ!」
ムーは慌ててナニカを表出させ一回転する。
だが、意味はない。
何に変化しようと、目前にまで迫った斬撃に追いつけるはずがない。
「さよなら、姫さま」
ミリアが零すと同時、強力な斬撃を受けた蔦が大きく弾け飛んだ。
ミリアはターゲットを屠ったと確信した。
だが、
「……チッ」
思わず舌打ちする視線の先。
地に降りた王座の前に、無傷なセーラと、彼女を抱きかかえる銀髪の女性の姿があった。
「あっぶないあぶなーい。いやあ夜でよかったよー」
だからこそ十全な力を発揮できたと。
銀髪と赤眼を持つ、人外の美貌を携えた女性となったムーが溜息をつく。
「さっすがヴァンパイア。この機動力は馬鹿にできないねー」
抱きかかえられていたセーラを地面へと降ろしつつ、ムーは尋ねる。
「どうどう姫さまー? お姫さまがお姫さま抱っこされた感想はー?」
「そ、それを言うな! 気分が悪い!」
「にゃははっ! 照れちゃってもー」
玉座に腰かけそっぽを向くセーラを笑ってから、ムーはミリアに向き直る。
「いやあ今のは焦ったよー。確かに姫さまが身罷られれば、依頼主がいなくなるわけだから暗殺依頼はなくなるよねー。最初もそれを狙ってたみたいだけど、まさかムーを通り越して先にそっちに行こうとかさー、なかなかチャレンジャーだねー」
ミリアを称賛した後、ムーは悪戯っぽく笑う。
「というかー。もしかしてムーちゃんの実力にチキっちゃったー? にゃははー?」
「違うよ。姫様もクソアマも、アタシの愛を妨げた肉塊だから。どちらもミンチにするのは変わりない。今のは、ただのついで」
「……あの、そろそろクソアマ扱い止めてもらえないかな? 気にしないって言ったけど、やっぱりこう、興が削がれるというか……」
おずおずと主張するムーの言葉を、ミリアは小首を傾げて突き返す。
「自分のことムーちゃんなんて呼ぶ存在自体がギャグの塊のクソアマ邪神がいる時点で、シリアスとかお察しじゃない?」
「キ、キミに言われたくないよー!? この愛狂いのヤンデレ騎士っ!」
「あ、愛狂いだなんて……。確かにアタシ、ゼロワンちゃんのこと、狂っちゃいそうになるくらい全身全霊で愛しているけど……」
「なに照れてるの!? 褒めてないよ!? それに狂っちゃうじゃなくて狂ってるから! 既に出来上がってるから!」
「お、お主ら、殺し合っているのだよな……? なにゆえそのように息がぴったり――」
「そんな反応しないでくれる!? 姫さまだってさっきこんな具合だったんだからね!? 今姫さまがやっている『何やってるんだこいつら……』って目でムーは見てたんだからね!?」
ムーはぜえぜえと息を切らしてツッコんだ後、気を取り直すように言う。
「か、かんわきゅーだいっ!」
このままでは話が進まないとでも言う風に、ムーは流れをぶった切る。
「え、えっと、何か言いたいことがあったような……ああそう! ムーちゃんびっくりしちゃったってことー。聖騎士相手のミッション、何度かコンプリートしたことあるんだけどねー? 『セイントファング』? 威力もなんだけどー、あれああいう風に軌道を変えられる技だったかなあ? それも百八十度も。見たことないよー?」
「答える必要はないよね?」
「うん、期待はしてなかったけどねー。さってと、じゃあこれからどう出ようか……あれ? どうしたのー?」
ムーがミリアに声をかけてくる。
「なんでも、ないよ」
応えるミリア。
平静を装おうとしていたが、その顔色は見るからに青ざめていた。
冷汗が吹き出し、体は震え、立っているだけで吐きそうになってくる。
視界は歪み、頭は激しく痛み、指先を動かすのすらままならない。
(なに? これじゃあまるで……)
「状態異常を全部くらったみたいな顔、してるよー?」
ミリアの考えを先読みするように、ムーが楽しげに笑った。
「なにを、した?」
「にゃはは。さっきの『パンデミック・パーティー』の時の花粉、ちゃんと効いてたみたいだねー」
ムーは周囲に蠢くナニカを出現させ、優しく撫でた。
視界がぼやけたミリアにはよく分からないが、ソレらはまるで喜ぶかのようにうにゃうにゃと動き回る。
「『トリックスター・ダークネス』。これは真似っ子じゃない、数少ないムーちゃん自身の特技なんだけどねー? 変身するとき、この子たちは周囲に溶け込んで、ありえないことを引き起こしちゃうんだー。具体的に言うと、ムーちゃん以外の相手の耐性を弱体化、属性攻撃や状態異常がよく効くようになったりー。すごいでしょー? まさに聖騎士殺しって感じでー?」
先ほどから聖騎士を下に見るような発言を何度かしていたのは虚勢からではないらしい。
確かに状態異常に陥らないとたかをくくっている聖騎士には、最悪の特技である。
ペースを崩され、そのまま手にかかった者たちも多いのだろう。
「じゃあ次はこれだー! にゃる、しゅたんっ!」
さらにナニカを表出し、ムーが素早く一回転。
どす黒いモノらを再び辺りへ溶け散らせ、次の瞬間にはその姿が変化する。
「じゃーん。ロリっぽいミミックちゃんとかレアレアでしょー?」
豪奢な宝箱より半身を現す、幼き少女の姿へと変化する。
「ほんとはもうちょっと楽しみたいんだけどー、キミはなんだか他の聖騎士と違う気がするしー。大番狂わせとか嫌だから、味気ないけど終わりにするねー?」
ムーは少しだけ残念そうに言った後、
「『イガリマ』」
死の呪文の名を口にする。
「ッ!?」
瞬間、状態異常に苛まれ、既にボロボロとなったミリアの身体が硬直する。
それは、身動きを封じられたことを意味する。
対象を確実な死へと誘うための前準備が掛けられた証。
そんなミリアの背後に、黒衣を纏った骸骨が現れた。
いや、それだけではない。
一体、また一体と現れ、その前後左右、合計四体の骸骨たちが顕現する。
その手にはそれぞれ静かに光る巨大な鎌。
斬り裂いた相手の魂を確かに奪い取る凶器が構えられた。
「これで任務達成だ。じゃあね」
無感情な声。
それを合図に、一切の情け容赦なく、一人に対するには十分すぎるほどの死の刃が振り下ろされた。
聖騎士は、ほとんどすべての状態異常を無効化する。
だが、唯一防げないものがある。それがこの『イガリマ』を代表する、即死の効果だ。
人の身である以上、死の力には逆らえないとでもいうのか、その異常のみは無効化することができない。だから聖騎士たちは即死の力を持つ相手と戦う際には十分に注意して討伐にあたる。
ムーが凄腕の暗殺者というのはやはり間違いないらしい。
効かないとたかをくくっていた状態異常に苛まれ、動揺したところを、通常の状態でも効果のある、恐れられる死の呪文なんてものを向けられれば、その恐怖はいかばかりか。
恐れ震えることしかできず、成す術なく散ってしまうだろう。
確かに自分で聖騎士殺し、なんて言っただけはある。
だが、その凄腕が認めたように、ミリアはただの聖騎士ではない。
つまりは――このようなところで倒れるはずはないという事!
「……そんな、モノ」
「え?」
身動きを封じられ、本来動かせないはずの口を気力で動かし、
「効く、ものかッ!『ナイト・シールド』ッ!」
少女は吠える。
瞬間、体の周囲に滲み出た光り輝く金色のオーラは、魂を刈り取る刃を弾け飛ばす。
「にゃはッ!?」
その光景に動揺するムー。
そんな彼女に息つく暇を与えないとでもいうように、ミリアは剣を構え直すこともせず、鎌を弾け飛ばされオロオロとする骸骨たちへ、勢いのままに牙を剥く。
「うせろおおぉッ!」
獣のように吠えながら、骸骨たちを両断し、寸断し、微塵に変える。
「な、なんと……」
人の身で避けえないはずの死の顕現を蹂躙する様にセーラが息を漏らす。
それを意に介すことなく、ミリアは眼光鋭くムーを睨む。
「ハアッ、ハアッ……。この、程度?」
「……いやー、おみそれおみそれー。正直防がれるなんて思わなかったよー」
ムーはミリアを素直に称賛し、小首を傾げる。
「ねえ、その特技なに? ムーちゃん聖騎士のそんな技見たことないよー? 『ナイト・シールド』って言えば、確かヴァンパイアの得意技だよね? 光を払う闇の盾。なのに今、キミは迫る死を、闇の力を払いのけた。ねえ……ソレナニ?」
仄暗いものを覗かせる問いかけを、ミリアはにべなく叩き切る。
「だから、答える必要はないよね?」
「にゃはは。まあそーだよねー。ではでは、じーっ……」
ムーは眉根を寄せ、ミリアの周囲を覆う光のオーラを見透かすように凝視する。
「『セイントファング』ッ!」
「いやんっ! 分析中に攻撃しちゃやだよー?」
ムーは軽口を叩きながら、ミリアが放った斬撃を余裕で回避する。
「……ふむふむ、なるどねえ」
そしてムーは深くうなずいた。
「斬撃を華麗に回避した武闘もこなせるムーちゃんせんせーの分析結果がでましたー。ずばりっ、それは闇を払う光の力!」
ムーは正体見破ったりとでもいうように、自信満々でオーラを指差す。
「物理、魔法問わず、闇の力が混じっていれば、それを全て防ぎきるんだねー。ただし魔力の消費量が激しくて、長時間に渡り纏い続けることはできないみたい。でもでもその効力には目を見張るものがあるぞー? だってモンスターの攻撃には少なからず闇が混じっているから、その状態でいれば絶対に攻略することはできないもんねー」
自身に不利な力を纏われたと分析しながらもムーは楽しげに笑う。
「ヴァンパイアのそれが夜の盾なら、さながらそれは誇り高き騎士の盾ってやつー? いやんっ、しゃれが効いてるとかちょっぴしかっこいいー! 」
「軽口叩いている場合? 確かに今、アタシは状態異常喰らってフラフラだけど、切り刻んだクソアマを野犬に振舞うまでの間なら、この力を纏い続けることくらいできるよ?」
「キ、キミやっぱりただものじゃないよねー。光の消えた目でそういうこと何度も言われると、混沌を振りまくムーちゃんだってガクブルだよー?」
ミリアのことを化け物でも見るような顔で見て震えた後、ムーは取り直すように言う。
「そうだねー。そうしていられると、確かに困るねー。詠唱省略の緊急変化だったから、ムーちゃん能力が下がって動きにくいってのもあるしー。光の加護の宿った剣に対するには、闇を纏った姿のままじゃやりにくいしー。だからねー?」
ムーは瞳をつぶり、呪文を唱える。
「にゃる、しゅたん。にゃる、がしゃんな。にゃる、しゅたん――」
「させるか! 『セイント』……グッ!?」
光の斬撃を打ち放とうとしたミリアだったが、状態異常、その中の激痛の波が体を襲い、思わず膝をついてしまう。
「……にゃる、がしゃんな」
その間に、ムーの詠唱が終了。
くるりと一回転し、新たな姿へ変じる彼女。
「……悪趣味な」
そうして変身した姿を見て、ミリアは悪態をつかずにはいられない。
白銀の鎧を纏い、手には輝く剣。
肩にかかる艶やかな黒髪をなびかせ、悠然と立つ女性。
それは、聖騎士。
「わたくしはミリア! 聖騎士ミリア! 愛する人と共に居続けるため! 立ちはだかる者は、何であろうと排除します! ……なーんちゃって」
ミリア自身へと変身したムーが、その場に立っていた。
「クソアマ……。一体いつから?」
数日前、兵士たちに放った言葉を再生され、思わず尋ねる。
だが、ムーは答えない。
「ふっふっふー。さあねー? そんなことよりどうかなー? 弱り切ったキミが、十全なキミ自身を打ち倒せるかなー?」
ムーは余裕綽々で言い、剣を振りかぶると、
「『セイントファング』ー!」
振り下ろした剣より、光の斬撃を見舞ってきた。
「『セイントファング』ッ!」
片膝をつきながら、ミリアはどうにか斬撃を打ち放つ。
ぶつかり合う斬撃と斬撃。
だが、ミリアの打ち放った斬撃は容易く食い破られる。
そして、本来聖騎士が敵に放つはずのそれが、聖騎士自身へと迫って来る。
聖騎士の『ナイト・シールド』は、闇の防御に特化した光の障壁。
同じ光の魔法に対しては有効な効果を発揮しない。
そのため当てにすることはできない。
かといって相手はミリア自身に変身している。
不用意に回避すれば、体勢が崩れたところを方向転換した光の斬撃に斬り裂かれるだろう。
「ならっ!」
ミリアは状態異常にさいなまれながら、その場で斬撃を待ちかまえる。
そして数瞬後に到達した光の刃を、剣で真っ向から受け止めた。
「ぐッ!?」
(思っていたより、重い!?)
剣を介し伝わってくる斬撃の強力さに、思わず歯噛みする。
食いしばり、必死でこらえようとするが、じりじりと押されていく。
「にゃははっ! いけいけごーごー!」
苦痛に喘ぐ姿を、ムーが楽しそうに鑑賞する。
それが、ミリアの怒りに油を注いだ。
(こんなヤツの見世物になど、なってやるものかッ!)
「ぐううぅ……だああああッ!」
ミリアは渾身の力を振り絞り、斬撃を叩き切った。
両断された斬撃は弾け飛び、部屋の両側の壁をぶち破った。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ……」
「にゃはは! あれをまともに受けてー、両断しちゃうとかすごーい! まあ不意をつかれないためには今のが最善手なんだろうけど。でもやるよね! 五十レベルも上の聖騎士の攻撃をさー!」
「なに、を……?」
聞き間違いであってほしいと驚くミリアへ、ムーは残酷な事実をぶつける。
「ムーちゃんの変身ってねー? 変身相手より五十レベル上になれるんだー。だからー、一対一のこの状況じゃ、勝ち目はないに等しいよー? えーっと、今のレベルは……え!?」
ムーが驚いている隙を見計らい、ミリアは懐からエリクサーを取り出す。
「わおっ。弟子ちゃんが見たら乱舞しそうな高級薬草―!」
エリクサーは、使用すれば瀕死の重傷すらたちどころに治癒させ、さらに状態異常をも、複数負っていようと一瞬で回復してくれるのだ。
邪魔される前に、ミリアはそれを使用する。
たとえ相手が数段上であろうと、ところどころで回復できさえすれば勝機は――
そこに、血だまりが出来た。
「ゴフッ!?」
口から血を吐き、目からは流血。
「グ……ガハッ、ウ、うあ……」
全身の毛穴すべてに焼けた鉄を流し込まれたような激痛に襲われ、倒れ込み、あまりの地獄に割れた床から現れた土をむしる。
使用したのは確かにエリクサー。毒草などでは決してない。
なのに、これはどういうことだ。
「あちゃー。見るも無残な血の海だー」
喘ぐミリアの前で、ムーは手の平で顔を覆い、わざとらしくブルブル震えた。
「『トリックスター・ダークネス』にはねー、もう一つ効果があって。ムーちゃん以外の回復を反転させるの。させて、ダメージを与えちゃうんだー。そこでエリクサーなんて回復アイテムの王様を使っちゃうとー……。怖い怖ーいっ!」
「……ふざけた、ことを……」
瀕死の重傷を負ったミリアが、剣に縋り、どうにか立ちあがる。
アルラウネは『ドレイン』という生命力を吸収する特技を持っている。
それを発動すれば、相手だけでなく、所持している薬草類の生命力も奪い、使用不可能にできるのだ。
死地に乗り込んできたミリアが回復のための薬草類を持っていない方がおかしい。
だというのにアルラウネに変じた際、それを封じるための『ドレイン』を発動しなかったことから、何か策を巡らせていると気付くべきだったのだ。
自身の迂闊さを悔いながら、ミリアはムーを睨み付ける。
「やだーっ。血涙流しながら見つめないでー? ムーちゃん怖くて泣いちゃうよー?」
呑気に言った後、ムーは続ける。
「それにしても謎が解けたよー。どうしてキミが、『セイントファング』をああいう風に使えたのか。それに見たことのない強力なオーラを纏うことができたのか」
苦痛に喘ぐミリアへ、ムーは言う。
「キミ、レベルがカンストしてたんだねー?」
カンスト。
つまり最大値まで上がり切ったということ。
それが信じられないという様子でムーは続ける。
「ムーちゃん、相手の能力を分析する力に長けてるから、もしやとは思ってたの。変身したら相手のレベル、能力値がはっきり分かるんだけど、やってみてほんとにびっくり! その年でレベルカンスト、99レベルなんて、ほんとに信じられないや」
レベルは上がれば上がるほど、次のレベルに至るために必要な経験値の量が多くなる。
そして、聖騎士というのは総じて高レベルのものは多いが、カンストしているものはほぼいない。
聖騎士は最強などと呼ばれ、強力な力をもっている代わりに、レベルアップに必要な経験値量が尋常でないほど多いのだ。普通にクエストや訓練をしているだけでは達することのできないほどに。
さらに、聖騎士となれば敵う相手などほぼいないため、進んで経験値稼ぎに出かけようとするものは多くないからだ。
「『セイントファング』って最終的には方向転換できる特技になるんだねー。そのオーラも90レベルを超えないと覚えられない特技みたい」
ムーはミリアとなった自分自身を更に分析するように、体を観察していく。
「さてさて他には他にはー? ……わお! 『エンジェルラック』!? 経験値が何十倍も得られやすくなる常設特技!? こんなの持ってるの、世界に数人いるかいないかじゃなかったっけ!? キミ、どれだけチートなの!?」
きらきらと瞳を輝かせるムー。
ミリアはそういった目を見慣れていた。
そして、見飽きていた。
それは、自身が特別だと、恵まれていると羨む目。
「……だから、なに?」
「え?」
「特別な力を持っていれば幸せになれるの!? 満たされるの!?」
ミリアは悲痛に叫びをあげた。
「名家に生まれても異例の速さで聖騎士になっても女王に懇願されて騎士団に入っても! 騎士団最強なんて謳われて民や仲間たちに羨望されて女王に褒章を数えきれないほど与えられても! どうしても、どうやっても満たされなかった!」
漏れ出る本音。絶望に包まれた経験。
そんなことを語ってやる筋合いなどないのに、一度零れたそれらは、吐き出しきるまでとまらない。
「諦めてた! 死んだままで終わるんだって、ずっとずっと泣いていた! こんな力いらないから、アタシに人並みの心をくれって、何度神に祈ったか!」
「キミ……」
「それでも意味なんてなくて! 幸せなんて感じられなくて! 幸せそうに笑うヤツら全員を道ずれにして死んでやろうって思ってた! ぶっ殺してやりたいって思ってた!」
すべてを壊して、自分すら壊して、終末を迎えようと切に思った。
「でも、やっぱり嫌で! そんな終わり方なんて、このまま終わるなんてやっぱり嫌で! だけどどうしたらいいかなんて分からなくて! ただただ、みじめったらしく世界に縋りついていたよ!」
そんな時、救いの主が現われた。
自らを救う暗殺者が現われた。
「そしたら、ゼロワンちゃんが救ってくれた! アタシに幸せを教えてくれて! 温かさを与えてくれて! 生きるってこんなに素晴らしいことなんだって、愛する人がいるってこんなに素敵なことなんだって、教えてくれたの!」
愛を覚えた感動を。
そして、幸せの感触を。
欠陥品を人間にして、恋人にしてくれた彼女。
彼女のために、ミリアはなんだってやると、誓ったのだ。
「アタシ、あの子のためならなんだってできるの。命くらい捧げてやる。だって、こんなにいっぱい幸せをもらって、初めてこの世に生まれることができたんだから!」
だからこそ、この心に今、確かな悔いが生まれる。
だが、それは嫌ではない。とても心地いい。
だから、ミリアはすべてを捧ぐ。
「……ん」
残りすべての力を剣に込める。
地を踏みしめ、構えた剣にすべてを注ぐ。
全身を覆っていた光のオーラ、それが鮮血のように真っ赤に染まり、剣先へと集中していく。
打ち放たんとするは、聖騎士の奥義。
その身に傷を負えば追うほど威力を増す、最期の一撃。
だが、ミリアの技はそれだけではすまされない。
分析したムーが言う。
「それは、何か混じってるねー? ……ああ、そっか。『ラ・ピュセル』かー。さながら聖女みたく、その剣には、生命力を燃やして力を底上げする効果が宿ってるみたいだねー。まあ、聖女みたいに寿命を使うわけじゃないみたいだけど。……でも、いいの? それでも今の死に体でぶっ放しちゃったら……死んじゃうよ?」
ムーが瞳を細めて忠告する。
だがそんなもの、ミリアには毛ほども響かない。
「知るものか! 命くらい、捧げてやると言ったはずだ!」
一切の躊躇なく放たれた言葉に、ムーは苦笑する。
「……勇ましいね、キミは。そこまでして弟子ちゃんを幸せにしようとしてくれるんだ?」
「当たり前じゃない! 愛する人を幸せにしたいって、誰だって思うことでしょう!?」
「……そっか」
どことなく悲しげに笑ったムーも、剣を構える。
「そんな風に思うことができて、今のキミは、本当に幸せなんだね」
言って、ムーは懐からエリクサーを取り出した。
そして、それを自身に使用し――地獄を見る。
「グハッ! ア、グゥ! うあぁ……。にゃ、にゃはは。これ、とってもエグいねー……?」
「な、なにをやっておる!?」
血反吐を吐き、自ら衰弱するムーの行動を蛮行と受け取り、セーラが声を荒げた。
「一時的に回復反転を適応して、大ダメージ受けてみたんだー。そうしてムーちゃんも、聖騎士の奥義使おっかなーって。血みどろはムーちゃんらしくないけどねー」
ムーは口の端の血液を拭い、うつろな目でミリアを睨み付けた。
「でも、そうしてでも、この子には負けたくないからねー。あ、姫さまは『テレポート』で退避してたほうがいいよー?」
ムーの身体を神聖な光が包み込む。
変身は完全にその存在になりきるらしく、ムーはそれ自体ではダメージを受けていない。
その光を、剣へと集中させる。
「キミの覚悟、とっても強いみたいだだけど。でも、それは偽善だよ? 考えているようで、キミは弟子ちゃんのこと、全然考えていない。大切だって、思っていない」
ムーは瞳を吊り上げる。
「自己犠牲なんかで救われる者などいるものか! そんなものに! そんな侮辱に塗れた献身なんかに! ムーは絶対にやられないッ! ムーは絶対に認めないッ! それが正解だと思うキミに、あの子といる資格などないッ!」
「うるさいッ! 誰にも文句は言わせないッ! これがアタシの愛なんだッ! ゼロワンちゃんに幸せでいてもらうための、形なんだッ!」
ミリアが叫ぶ。
命で形どられたオーラは聖剣を包み込み、肥大化し、燦然と煌いていく。
それは月まで届かんと錯覚するほどの、巨大な剣。
国を、民を守るはずの聖騎士の力。
そのすべてを、彼女は愛するただ一人のために振るう。
対してムーも同様に肥大化した剣を構える。
固唾を呑むセーラに見届けられながら、少女と邪神は同時に猛る。
「アタシの命はあの子のためにッ! 『ヘブンズ・イグニッション』ッ!!」
「愚者の独りよがりを終らせるッ! 『セイント・イグニッション』ッ!!」
大切な人を幸せにするための、その種火となるための一撃。
独りよがりな献身を叩き潰すための、その種火となるための一撃。
それらが、夜闇で激突する。
そして――
***
力と力のぶつかり合いにより、崩壊した城内にて。
「はあ、はあ、はあ……」
ムーは、生きていた。
ボロボロになりながら、確かに地を踏みしめて。
性能までは真似ることはできず、衝撃で真っ二つとなった模造の剣をその手に握って。
その背後、瓦礫の中から紅のドレスを着た少女が現われる。
「ク、ククク。どうなったのじゃ、ムーよ」
「姫さまか……。逃げなかったんだね」
ムーは懐から取り出したエリクサーを自身に使用しながら、セーラへ言った。
「わらわは王族。将来の狂王ぞ。退却などありえぬわ」
「足、震えてるよ?」
「な、なにを!?」
「にゃはは。嘘だよー?」
「お、おのれ謀りおって! そこになおれ――」
顔を真っ赤にして駆け寄ったセーラだったが、そこで固まった。
「……終わった、のか?」
ムーの前。
瓦礫の上で砂埃に塗れ、倒れ伏した少女の姿が。
「そうだよー? これで終わりー」
壮絶な戦いを繰り広げたと思えないほど、穏やかに瞳を瞑り、命を手放した彼女。
あれだけ愛を叫んでおいて、その最期が犬死か。
だから言ったではないか。自己犠牲などでは、と。
ムーの胸に、何とも言えない思いが去来する。
「……馬鹿な子」
思わず漏らした言葉に、セーラが反応する。
「貴様! あれほどの覚悟を見せ、散ったものを馬鹿の一言でこきおろすなど!」
「あれれー? 姫さまらしくなくないー? いつからそんなに熱血さんになっちゃったのー?」
「い、いやそのようなことは!? わらわは欠陥品で……む、むう?」
頭に疑問符を浮かべるセーラ。
少女の死は、自他ともに狂王の卵と認める彼女の心に、何らかの影響を与えたようだ。
どうやらまるっきりの無駄だというわけではなかったらしい。
(でも、キミが望んだのは、弟子ちゃんの幸せだったよね……)
それに関してはなんの成果も出すことが出来なかった。
その結果、今からムーはゼロワンを――
「師匠。ゼロワンは、紹介するですよ」
「!?」
突然の声に、ムーは瞳を開いた。
そして、声のする方へ目を向け、驚愕した。
一瞬目を離しただけだったのに、そこにはいつの間にか件の弟子、ゼロワンがいた。
驚愕の理由はそれだけではない。
確かに散ったと思われたミリアが、きょとんとした表情で目を開けていたのだ。
しかも、その身に受けた傷が全快しており、生命力に満ち溢れている。
『トリックスター・ダークネス』にて、回復も蘇生も通用しないはずなのに。
「……ゼロワン、ちゃん?」
ミリアの声に、ゼロワンは膝枕しながら笑いかけた。
「ですよ? あなたを愛する素敵な恋人、ゼロワンですっ。えへへっ」
ゼロワンはミリアを優しくいたわりながら、ムーへと告げる。
「師匠。この方が可愛すぎる暗殺者ゼロワンの心を射止めたラッキーヤンデレガール、ミリアなのです」
そして、確かな決意の宿った目で、
「この方と一緒に幸せなお嫁さんになるために。ゼロワンは、今こそ目にもの、見せるのですよ」
弟子は、師匠を超えると宣言した。




