私の娘
つい娘の首を絞めてしまう。
そんな私の愛情表現に、娘は嫌がることもなく、いつも笑顔でいてくれた。その笑顔は痛々しく、けれどどこか嬉しそうな眼をしている。
「お母さん、大好き」
首を絞め終わった後に、娘は必ずそう言ってくれる。その言葉を聞くと、この行為は間違っていないのだと感じることができた。
娘の首に、私の指の痕がほんのりと付いている。
まるで花の首飾りのようだ。
「お母さん、またやって」
台所で卵焼きを作っていると、娘が私の横に立って言う。
娘が自分からそう口にするのは初めてのことだ。どうしたのと問うと、早く早くと答えるばかり。
「早く死にたい」
冷たい眼で娘が何か言った気がしたが、気のせいだったようだ。
私は火を止めて、いつものように首を絞める。
「もっと」
苦しそうな声で求めてくる。その眼は涙でいっぱいだった。
そんなに嬉しいならと、指に力を加える。私の指先は白い色をしていた。指の色が変わるほど絞めるのは久し振りのことで、何だか楽しくなってしまった。
あぁ楽しい。
娘の首を絞めることが楽しい。
私はこんなにも娘を愛している。
どのくらいの間、娘を愛していただろう。自分で立てなくなった娘を床に置いて、私はまた卵焼きに火をつけた。
どうしたのだろう。娘からいつもの言葉が無い。
声を掛けてみるが、いつもの言葉は返ってこなかった。
私は慌てて娘の首に手をかけなおす。
早く私にあの言葉を言って。
「早く死にたい」
細い声で、そう言われた気がした。
私の娘はどこにいってしまったのだろう。
娘の言葉は、いつ母親に届くのだろう。