七章:「ここどこだよ!!?」
「えーっと、何なされているのでしょうか?」の続きです。
話終えた僕たちは協力して図書館を掃除し始める。
この学校の図書館は古いし広い。
なんと言っても図書館で一つの校舎が占領されているぐらいだ。
本好きの僕でさえもこの量と広さは目眩を起こしてしまう。
「とりあえず僕は南の奥の方をしますから最上さんはカウンターの周りをして貰ってもいいですか?」
「構いませんが同じ所を二人でした方が早いのでは?」
「確かにそうですが奥の方は危険です
何よりあそこは図書委員しか入れませんから」
そう言って僕は苦笑してしまう。
この中で一番酷いのが奥の方でよく虫やら危険物やらが落ちている。
そんな所に最上さんを連れていって何か起こったらシスコン弟に殺されるのは目に見えている。
僕の説明に納得したのか最上さんは大人しく「わかりました」と言ってカウンターの方を掃除し始める。
……弟も姉ぐらい素直ならいいのにと思ったのはここだけの話。
予想通り奥は悲惨なまでに汚い。
電気が切れているのか薄暗いし床には本が無造作に置かれている。
何よりも埃まみれ過ぎて……ヤバイ、気絶しそう。
「……とにかく、一回本をどかすべきかな……」
そう思っても奥の本は汚い上に量が半端ない。
手で運ぼうにも時間がかかりすぎて日が暮れるのではなく、日が暮れるて朝日が昇ってきそうだ。
確かカウンターの近くに台車があるのでそれで運ぶとしよう。
そう思ってカウンターに来たのだが……。
思わず叫びそうになった。
「ここどこだよ!!?」
と言うか叫んだ。
確かカウンターに来たはずなのに何故かカウンターがない。
いや、正確にいうと無いのではなく見えていない。
何故かカウンターの上には大量の本と書類が散乱している。
しかも見たことのないものばかり。
さらに図書館にあってはならないお菓子まである。
それらに埋めつくされておりカウンターが見えていない。
更にはカウンターの付近には勉強机があるのだが椅子と机の位置がバラバラで混雑している。
……おかしい、僕は最上さんに掃除を頼んだはず。
もしかして泥棒が!?
「どうかしましたか?」
泥棒の可能性を考えていた僕に声をかけたのは少し埃まみれの最上さん。
それを見て泥棒の可能性を消した僕は口許をひきつらせながら彼女に問う。
「先に聞くべきことだったのですが……
最上さんは掃除をしたことありますか?」
恐る恐る聞けば彼女は困ったように眉を下げ顔を横に反らす。
心なしか頬が少し赤い。
「……恥ずかしながら……はじめてです」
「……」
「桐が危ないからとさせてくれなくて……」
珍しく素の表情で恥じらう彼女は可愛らしい。
正直こんな時じゃなかったら僕は赤面していたと思う。
だけど今は項垂れて心の底から桐を殴りたいと思ってしまった。
姉を甘やかすな!!!
この後、桐が図書館にやって来て僕は躊躇いもなく殴った。
彼は少し不満そうな表情をしていたが僕が怒っているせいかおとなしい。
桐にも手伝わせて掃除をしたが最上さんとは違い完璧に、専門の掃除屋さんよりも綺麗にしてくれた。
聞けば「姉貴が家事を“覚えないように”させられていたから俺が覚えたんだよ」とのこと。
色々引っ掛かるが一先ずは納得してやった。
この一件から僕はあまりにも悲惨な掃除を披露してくれた最上さんに掃除のイロハを叩き込んだのは当然の流れだったのかもしれない。