二十六章:「……会いたい」
私が自由で無くなったのは貴方に近づき過ぎたせい。
貴方が目をつけられたのは私が近づき過ぎたせい。
どう考えても私の自業自得。
もし、こうなると分かっていても私は貴方に近付いたと思う。
それほどまでに私の中は貴方で一杯でした。
“最上司”の指紋でしか開かない扉。
天井近くには小さな窓。
机と椅子とベッド、そして簡易なユニットバスがあるだけの本当に牢獄のような部屋に私は“幽閉”されている。
食事は1日3回、家の使用人が持ってくる。
それだけが人との関わりが持てるとき。
だけどプロ根性なのかどれだけ私が話しかけても彼らは反応さえしない。
「……はあ、明日には飛行機か」
文化祭当日の朝、“最上司”に明朝アメリカに飛ぶと端的に伝えられてから何度もここからでようとするが、さすがと言うか強固な檻。
「自業自得だけど何としてもここから出ないと……
もう二度と音樹くんに会えない」
予感ではなく確定事項。
やると言えば完璧にやり遂げるのが“最上司”。
彼から逃げ切るなんて今はできない。
だからせめて音樹くんに別れの挨拶をしたいのに……。
「なんで……音樹くんを好きになったのかな?」
壁に背中を当ててズルズルと滑って座る。
床暖房がついているけど私にはその暖かさは感じられない。
「……会いたい」
「彼はそれを望んでいないのにか?」
「!?」
扉の向こう側から聞こえた声。
当たり前だけどガラス張りじゃないので相手の姿は見れない。
それでも直感的にわかった。
「……お父さん」
“最上司”だと。
遅くなってすみません!
夜桜の馬鹿妹が入院しましてドタバタしていまして……。
骨折で入院ってね?
思わず「馬鹿」と言ってしまいました(笑)




