十四章:「あるけど?」
梢さんとの勉強会を時折混ぜた夏休みが終わり、九月。
三回目の定期テストが登校してから直ぐに行われて僕は自己最高順位20位に入れた。
原因を考えるまでもなく梢さんのお陰だ。
勿論当の梢さんは学年首位で満点。
いくら遺伝子上頭が良くても本人の努力が伴わないと満点は取れないのではないかと思う。
「音樹くん」
「……梢さん」
ボーッと考えていると後ろから声をかけられ、振り替えると淡い笑みを浮かべている梢さんと感心したように頷く桐がいる。
梢さんはともかく桐の反応がおかしく思い問いかけようとすると、
「姉貴が誰かに心開くなんて珍しいな」
桐が嬉しそうに話す。
僕は彼の意外な反応に固まってしまうが梢さんは違った。
遠慮なしに弟の脛を蹴りあげたのだ!
いやいや、いくら照れ隠しでもやり過ぎでしょう!?
桐なんかあまりの痛さに踞ってるよ!?
「余計な事を言うからよ」
「ご、ごめんなさい」
「別に桐が悪いわけじゃないのに謝るんだね……」
「姉貴に纏わるほど怖いものはないと思ってるから」
あ、それは分かる。
僕の姉も普段は変態犯罪者紛いな馬鹿姉貴だけど怒るとかなり怖い。
この間なんか姉が外出中の時に梢さんに勉強を教えてもらっていたら、帰ってきたときにボロクソに言われたのは記憶に新しい。
わざわざ姉に言わないといけないの?と思ったのはここだけの話。
「そうだ、音樹この後時間あるか?」
「あるけど?」
唐突に僕の予定を聞く桐だがこの後は放課後。
図書館に行く以外の予定はないのは彼も知っているはず。
わざわざ聞く意味がわからないが僕の答えに満足したのか「後でな!」と言って梢さんと共にクラスへと戻っていく。
少し意味深な言葉に僕は首を傾げるものの特に深く考えずに自分のクラスへと戻る。
今もそうだが桐は相手の予定をあまり考えずに突然遊びに連れ回すことが多い。
だから彼がこっちの予定を聞くときは僕は覚悟している。
ろくなことじゃないと。
だけどこのときの僕は知らなかった




