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十章:「分かってしまった」

「聞いてもいいの?」の続きです。

時間を巻き戻せるなら巻き戻したい。

だけど、どれだけ巻き戻そうと僕は彼女の願いを叶えていただろう。



翌日、あの公園で待ち合わせした後僕と最上さんは目的地である崖を目指す。

……なんでだろうか、心中するみたいな言い方になってしまう。

と、兎も角。

目的地までは徒歩40分ぐらいでつく。

……のだが。

「はぁはぁ」

「……」

まだ10分しか歩いていないのに最上さんは息切れを起こしている。

どうやら弟とは違い底抜けなまでに体力がないみたい……。

と言うよりは弟に体力取られたのでは?

そう疑ってしまうぐらい彼女は体力がない。

「大丈夫?」

「え、ええ」

肩で息しているのに大丈夫なわけがないと思いますが……?

このままでは時間がかかりそうだと判断した僕は財布が痛いがタクシーで行くことを選択した。

さすがに弱っている女の子を歩かせる非道なことはしないつもり。


歩くのとは違いタクシーで行くと僅か10分ぐらいで到着。

夏だと言うこともあり蝉がうるさいがその空間だけはひっそりとしており静かだった。

崖には気が生えておらずそこだけが別世界のようだ。

小さい頃はよくここで友達と凧をあげていたな~と、想い出に浸っていると最上さんは何かに取りつかれたようにそろりと崖へ歩く。

「……ここが」

そう小さく呟くとその場に座り込む。

慌てて僕が駆けつけるが……足が止まってしまう。

何故足を止めたのかわからない。

ただ本能的に今は彼女をそっとしておくべきだと思ったのが一番僕の頭の中にあったことかもしれない。

「……本当に何も聞かないのですね」

彼女が喋ったのは意外にも早く僕は反応できなかった。

「貴方は愚かなまでに優しく馬鹿なお人好しですね」

「なんで誉め言葉とほど遠い言葉なのか今すごくお訊きしたいですね」

「事実です」

連れてきてやったのに何様だ!?とは、僕は微塵も考えていなかった。

確かに理由を聞いてもいないのに馬鹿みたいにタクシー代まで払って彼女を案内するのは愚かでお人好しなのだろう。

だからといって彼女以外の人にもしたか?と言われると答えは「あり得ない」だ。

彼女だからこそ僕はここにきた。

それが事実だが小心者の僕にはこんな“告白”まがいな言葉を告げることなど出来ず曖昧に笑うだけで流した。

すると彼女はため息をついて唐突に話し出す。

「あくまで独り言です」

「は?」

「私には桐以外の家族はいません」

独り言ですと言いながらと誰かに聞かせるように話す彼女。

何か分からないけど黙っていた方が賢明だと思った僕は聞いていないふりをして他のところをみていることにした。

「4年前まで母が居ました

母は優しく朗らかな人でどこをどう見ても普通でした

私と桐はそんな母が大好きで母が“無事”ならどんなことでも耐えれました」

「(無事……?)」

「……でも、母は4年前突然行方不明になり数日後にここで死体となって発見されました」

「っ!?」

「母が亡くなってから私と桐は父親と名乗る人物に引き取られ今もそこで暮らしています……

西木くん、私の父の職業はなんだと思いますか?」

振り向きながら問われたことに僕は何も答えれなかった。

そんな僕に気を悪くすることもせず彼女は哀しげに笑う。

「ヒントは私の“頭脳”と桐の“身体能力”」

「……(ああ、駄目だ)」

分かってしまった。

たった一言で分かってしまった。


メタ発言を承知で言うなら10話目で重要部分が分かるのは物語の展開が早すぎるかも知れない。

でもこれは僕達の中では必要な時の展開。

だから少し早いけど僕は小声で言った。


「遺伝子……に関すること……」


そういえば彼女は、


「正解です」


哀しげに答えた。

本文でも言いましたがここから少し物語が急展開します。

早いと感じる方々もいるかもしれません。

逆にようやくと感じる方々もいるかもしれません。

ですがここで「遺伝子」と言う言葉を出すことで、物語は次へと進みます。


なお、夜桜は遺伝子についてそれほどくわしくありません。

もしかしたら読解ミスも多々あるかもしれません。

もしそうであっても読んで頂けれたら幸いです。

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