造られなかった聖者の独白
目に映るものだけを真実と思うなら、僕の育ての親は世紀の大悪人で、僕は拐かされた哀れな子供で、僕の親は殺された被害者ということになる。
けれど僕は、あのひとたちが被害者面するのを許さない。
あのひとたちは僕を聖者に仕立て上げようとした功名心ばかり先走る愚かものたちで、僕は育ての親に救ってもらった。あのひとたちに言葉や理屈は通用しなかったから、育ての親である彼女が最終的に手を汚すしかなかった。そしてまた、彼女はただ、僕が造られた聖者なんてものになるのを阻止することが仕事だっただけで、僕を育てる謂れはなかった。
あのひとたちが何でもかんでも口出しをしていただけで、僕は生活基盤さえあれば成長できたのだから、放っておかれたことを恨みに思ったりしない。
だというのに勘違いする人間が、特に神殿関係者には多くて、僕は呆れることしかできない。
あの連中がお節介にも伸ばした救いの手とやらを、はねのけたのは僕で、ただ僕の意志で、そこに育ての親の意向なんて反映されたことなどなかったのに。むしろ彼女の本心としては、僕みたいなお荷物を抱えていたくはなかったろうから、完全に僕の我儘だというのに。
ほとほと呆れて、言葉もない。
僕は彼女に追いつくために。彼女に追いつくためだけに。あのひとたちから彼女に奪われてから、それだけが僕の生きる意味になった。
結局、その最後には全て壊れてしまったけれど。