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再会 ③


 「おいっ海野。何でそんな隅っこにいるんだよ。俺に会いたくなかったとか?」


 そう言ってあたしの肩を掴み、自分の方へと振り向かせた。

 先生と目が合ってしまう。心臓の鼓動が急激に速くなっていく。

 どうしよう、目が離せない。早く何か言わなくちゃ……。

 震える唇を何とか落ち着かせ、口を開いた。


 「そ…そんな訳ないじゃないですか。会いたかったですよ、夕樹先生……」


 声が尻つぼみに小さくなっていく。

 あぁ…朝からあれだけ頑張ったのに、先生を目の前にすると、どうしてこうなっちゃうかなぁ……。

 自己嫌悪に陥り、俯いたまま顔を上げれずにいると頭に懐かしい感触が落ちる。昔みたいに頭に手を乗せてポンポンと撫でてくれていた。


 「何、敬語使ってるんだよ。お前らしくないじゃないか。いつもの元気はどうした?」


 うっわぁ〜、超嬉しいんですけどっっ!!!

 顔が自然にニヤケてしまう。

 そんなあたしの顔を見て、先生も嬉しそうに笑った。


 「お前、全然変わってないのな。良かったよ」


 え?良かった?何がだろう?

 先生のその言葉が気になったが、深い意味はないんだろうと聞き返すことはしなかった。

 そしてもう一度、先生の顔を見ると、さっきまでの笑顔が消えていた。

 私越しに何かを見ているようだ。それが何か気になり、あたしも振り返ろうとしたら、先生に腕を掴まれ止められた。

 不安になり、目だけで「どうして?」と訴えれば、先生は笑顔に戻りまた頭を撫でる。


 「そんな不安そうな顔するな。じゃあ、また後でな」


 そう言って、男子が何人か集まってるテーブルへと行ってしまった。

 

 「先生、どうしたんだろう……」


 どうしてもさっきの顔が気になり、先生が見ていた方を振り返ってみる。

 しかし、何もおかしなところはない。

 あたしの気のせい?

 何となく腑に落ちない気持ちのまま、あたしも賑やかな会場へと戻った。

  

 さっきから先生のことばかり、目で追ってしまう。

 本当はもっと話をしたかった。けれど、今日は4年ぶりのクラス会。絶大な人気の先生だけあって、誰もが先生と話をしたいに決まっている。

 次から次へと先生のもとに集まっては、会話を楽しんでいた。

 あたしも友達と軽くお酒を飲みながら話をしていると、七星が近づいてきた。


 「美夜、ちょっといい?」


 「うん、いいけど」


 話しをしていた友達に「ごめん」と謝り、七星についていった。

 会場を出て、控え室として使っている隣の個室に入ると、結花もいた。

 

 「何?どうしたの、二人揃って」


 あたしがそう言うと、二人は顔を見合わせてからニヤッと笑い、ジリジリと近づいてきた。

 何なんだ。嫌な予感がするんだけど……。


 「ねぇ美夜。夕樹先生と二人っきりにしてほしい?」


 「はいっ!?」


 「今日先生に告るんでしょ?私達がお膳立てしてあげるって言ってるの!」


 はぁ…やっぱり。気持ちはありがたい。ありがたかったけれど二人の顔を見ていると、絶対に楽しんでるよ。

 その笑顔の下に黒い影が見え隠れしてるんですけど……。


 「まったく……。今日はクラス会なんだよ。先生があの場からいなくなるのは不自然でしょ。気持ちだけ、ありがたく受け取っておくよ」


 「じゃあ、いつ告白するの?」


 七星があたしに詰め寄ってきた。


 「そ…それは……。さっき話しも少しできたし、会えただけで結構満足したと言うか……」


 そんなのは嘘だ。4年も待ったんだもん。会えただけで満足するはずがない。


 「4年ぶりにせっかく会えたのに、この機会逃すと、もうチャンスないかもよ」


 それはあたしも分かっている。でも行動を起こすことは、思った以上に難しそうだった。

 4年も胸の奥にしまい込んでいた“好き”という気持ちは、計り知れないほどに大きくなっていた。

 今日、夕樹先生にあって、その事にはっきりと気づいてしまったのだ。

 当たって砕けろっ!なんて大きな事を言っていたけど、告白なんかして断られたりしたらと思うと……。

 それに夕樹先生は7つも年上だ。

 七星達の情報で、結婚はしてない事は分かってたけど、今現在、恋人がいるかもしれないし……。

 

 「告白できるかどうかは分からないけど、また会いたいっていう気持ちだけは頑張って伝えてみるよ」


 あたしがそう言うと、七星と結花は、それ以上何も言わなかった。

 そして口々に「頑張れっ」と私を励まし、元気付けてくれたのだった。


 

 

 

 




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