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23話 勇者、の日常切り取り”二”。 ●

  

 これまた卓袱台風景。

 神主がリンゴ(貴重品)の皮を台所で剥いている以外は卓袱台の前に陣取っています。

 タケルは何かを布巾で壊れ物に触れるように拭っているようで。


「タケルさん……それは?」

「おお、これか。とある場所で発見した古典的ゲームハードだ」


 タケルが拭き掃除をしていた長方形の二枚に畳まれたゲーム機に気付いたアイシアが問う。


 地上世界は一度滅びました、戦争やら核実験やら薬物実験やらで滅茶苦茶になった地上は一度放棄されたとのこと。

 その際に地上には多くの「遺品」が残されました。

 それをなんとか原型を留めるよう保存できるようにと”ノンロスト”という技術で、まるでその物たちの時間を止めるようにして腐敗も腐食も崩壊も回避できる技術で守護されました。 

 その技術は地上全体に適応されているという膨大な規模なのだけど、普通に考えたらありえないんだ――ぶっちゃけ魔法みたいだよね。

 時間軸的にモンスター群が出現したのが、地上放棄後で”魔力”というものが生まれ始めたので、魔法ってことも考えにくかったり。


「これは……西暦二千年代の初期に存在したという”ミンテンドーデーエス”というゲーム機体ですね」

「おお、知ってるのか。デーエスの一個体であるのは分かるんだが、それ以外の情報が分からん」


 ちなみに上半分が銀色で下半分が黒色、上辺が左右両方に僅かに傾斜しているデザイン。

 当時だと先鋭的なデザインだったのだろう。


「……それもこれは最初期モデル……まさか現存個体が存在していたとは」

「アイシアは物知りだなー、そういう情報ってどこで調べるんだ?」

「……かつて滅んだ地上の近代文化や情報の一部は地下世界の中央国文化エリアに存在している”国立近代総合図書館”にアクセスすることで閲覧できます」

「はぁー、そんなものがあるのか」

「……しかしサーバーがあまり強くないので、アクセスが数千単位で集中するとかつては簡単に落ちました」


 国立のサイトなのに貧弱すぎなんじゃないでしょうか。


「ということで今は……アクセス権を持つ五千人だけがアクセスできます。ちなみに私は……裏ルートでアクセス権を極秘裏に入手しました」


 世界で五千人だけというのは冷静に考えたら、すごいもんだね。


「すげえ競争率だな……てことは、それを使えばレトロアイテムの正体も一部はつかめるってことか」

「そういうことです。今の相互通信環境は二千年代の数千分の一までになっていますから、情報量は圧倒的です」


 この一応は廃れた地上のインターネット環境も勇者・魔法使い仕業の為に再整備されたのだけど、軽量化高速化圧縮化がなされてるのであくまで長距離連絡手段としての色が強い。

 わかりやすく言えば某ーグル検索をすべてにかけてもヒットするのは「十万件」まで。

 娯楽関連の情報は殆ど存在せず、大抵が仕業用の掲示板や情報管理サイトぐらいになってしまっている。

 なので娯楽が欲しければ地下世界でダウンロードするか、地上世界で高価にデータ販売されているものに頼るしかない。


「……しかし今は一文無し……通信料が支払えないので無理です」


 昔も今も同じなんだねえ。


「……それって俺が金を払えば出来る?」

「はい、一か月一〇〇〇Gで」

「じゃあ一〇〇年分契約――」

「お兄ちゃんっ!」


 それまで携帯アプリを嗜んでいた妹が兄の脳天にチョップを叩きこむ。


「何度も言うけど! そんな無茶苦茶な契約許さないから!」

「っつ……ええー。アクセス権があれば下手すれば数百年前のフリーゲームとか出来るんだぞ?」

「何百年前のフリーゲーム……いやいやいや! それでも一か月一〇〇〇Gで一〇〇年契約とかおかしいから!」


 ちなみにキリは結構なゲーム好きで、地上にやってくる際にこれでもかと言うほどに携帯端末にゲームアプリを詰めこんできたのこと。

 タケルがレトロコレクターでキリがゲームマニア。


「じゃあ一か月契約は?」

「なら……いや、ここで始めたら……うーん」

「絶対便利だぞ? あって損はない、試しに一月で。キリにも貸すからさ!」

「超アナログなフリーゲームかぁ……わ、わかったよ」

「わーい、じゃあアイシアよろ」


 タケルは軽くゴールドカードを取り出してアイシアのゴールドカードにかざして一〇〇〇G移動させる。


「……了解。毎度あり……じゃあタケルさんの携帯端末を出してください」

「おお」


 タケルの古典的携帯電話を外装に使った携帯電話のかつてのメディアカードスロットに、アイシアの携帯端末を触れさせる……ゲームプラスウォッチャー外装って。

 

「ゲームプラスウォッチャー!? うおう、アイシアのそれこそすごくねえか? 名前だけは知ってたけど、それってよ」

「……これ、ええと……自家製? さすがにこの現存個体はないでしょう……から」

「それはそれですげえな、まあ残ってたらどんな値が付くかだよな……」

「……ウン千万行きますね……稼働個体なら億付きます」


 言い方は悪いけどもそんな旧型ゲームで需要高すぎだ。


「……タケルさんの携帯端末は……モノホンでしたね」

「てか、これの改造頼んだのお前じゃんか」

「……でした」


 ははあ、メカ屋としての繋がりがあった頃にもそんな依頼したんだ。


「……これでアクセス権は一時的に移行しました……貸出期間が終了次第返還モトム」

「わかってるよ、どうも」


 そうして超古代インターネットワークへの接続権を一ヶ月限定で入手したタケル。 

 その時のこと、このお茶の間に居る勇者・魔法使い問わずに携帯端末が「ピィッ―――」というような異音を発しました。



『緊急クエスト依頼です!』


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