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21話 勇者、と魔法使いのこと。 ●

「……ん、ここは」

「気づいたか?」


 アイシアが目を覚ました。インスタント救急治療術式の使用が早かったのもあって三時間ほどで彼女は回復した。


「とりあえず召喚の代償な」


 召喚系移動式術式にはコストが発生する、一応決まりで呼んだ際はその移動式術式を起動した代償を支払うこととなる。

 アイシアのような商売で使うものならば代償は「G」で支払われるもの。

 移動術式は召喚する側の魔力を使用する上に召喚される側でも魔力を消費する、まあ通販で言う送料を魔力に置き換えたようなもの。

 送るためには金が必要で、送られる側も場合によっては支払わなければならない。

 送料はお客様の全負担……といったところだろう。


 俺はそうしてゴールドカードをアイシアに提示する。


「……毎度どうも」


 アイシアも同じようにゴールドカードを提示し金銭の譲渡、支払が行われる。


「……でも……こっちもインスタント救急治療術式使わせたみたいだね」

「それはいい、とりあえず事情を聴きたい」


 アイシアは上級魔法使いとされるほどのヤツだ。

 攻撃術式よりも補助術式に特化しているとはいえ、魔法使い狩りにあそこまでの深手を負うことはないはずなのだ。


「タケルさん……魔法使い狩りは知ってます?」

「ああ、主に勇者で構成され。集団で魔法使いを狩る集団だよな?」


 この地上には「元」人間ならば二通りしかいない。

 地上世界に満ちてしまった魔力を操り能力を得た「魔法使い」と、化け物の蔓延る地上世界で生き残る為に常人以上の体力筋力脚力などの身体能力を得た「勇者」の二つ。

 地下世界での厳正なる審査でその二つのどちらかの適正で選定され、人体改造を施される。


 魔法使いは地上の魔力を味方に出来るが、肉体は常人以上にはなれないので「脆い」だが地上では「強い」。

 勇者は地上の魔力を操ることは出来ないが常人以上の身体能力を誇るので「強い」だが地上では「弱い」。


 双方の違いはそうだ。

 だからキリも見習いと言っても厳正な審査で「魔法使い」の適正を認められ、人体改造を施された上で、ある程度の最低限の能力と最低限の身体能力の確保がされた前提がある。

 俺も厳正な審査で「勇者」の適正を認められ、人体改造を施された上で身の力一つで身を守る術を見に付けねばならなかった。


 もし魔法使いと勇者のどちらかが優れているかといえば、地上に適応することのできた「魔法使い」ということになる。 

 その優劣を決められ、ある種の差別的、劣等的、嫉妬的感情を露わにして無差別に魔法使いを狩るのが殆ど「勇者」で構成される「魔法使い狩り」だ。


「……大体レベル四十超え……の集団でしたね」

「れべるよんじゅう!?」


 キリが驚いていた。だが数値的にはカンストの半分にも届かない。

 レベル初期の「1」と「3」では差はあまりないとも言えるが「41」と「43」では事情がかなり異なる。

 アイシアのレベルはおおよそ六十代後半、術の相性が悪かったとしても負けるようなことはまずないのだ。


「レベル以上の実力を狩り集団は持ってた、と」

「はい……強敵です”武器破壊アームスキラー”を使っても……素手の時点でチート。といっても私は……武器修理とかは得意なんですけど……実戦は苦手で」


 武器破壊アームスキラー……文字通り武器などのものを使用不能にする魔術で、完全復元レストアと対をなした術だった。


「素手か……それでも十分に強いってのは、かなりの実力を伴ってそうだな」


 「作るも壊すも紙一重」武器破壊アームスキラー完全復元レストアを使えてサポート役としては最強のアイシアが集団戦で負けたというのが重要だ。

 それとは関係ないが、召喚までの時間がかからないところを見ると、ここから直線距離にして数十キロメートルだろう。


「なるほどな。それで召喚のラグからここからそう遠くないってところか」

「ですね……襲撃地点はここから67.6キロメートル」

「お前はどれぐらいの集団で行動してたんだ?」

「20ぐらい……平均レベルは58.4」


 集団にしては高めだな。


「被害状況は?」

「自分が……転移術式は展開しましたから。私以外はなんとか……逃げ切れたはず」

「で、お前は転移術式に魔力を裂きすぎて魔力尽きたとかそんなところか?」

「……ビンゴ。ついでに体力も」


 それなら一安心か。


「……ところでタケルさん」

「ん?」



「身ぐるみはがされました」



 さりげなくアイシアはそんなことを言った。


「はい? マジで?」

「パーツベースは……確保したんだだけど……お金も食糧も移動手段も」


 パーツベース……四次元道具入れみたいなもんで、アイシアの場合は修理屋の命こと工具一式や様々な替え部品のパーツが入ってる。


「でもさっきのゴールドカードは?」

「サブアカ……支払われ用のね」


 そうアイシアにゴールドカードを見せられると、そこには俺がさっき代償に支払ったGしか入っていなかった。


「ここで俺が放ったらもしかすると飢えるかもしれないと」

「はい。それにタケルさん……移動式住居を購入したと聞いて……だから折り入って相談があったり」 

「ここに住みたいとか?」

「話が……はやい。払えない分は武器破壊アームスキラー完全復元レストアで」

武器破壊アームスキラーはいらん。じゃあ……まあ仕方ないよな」


 ということでスピード展開だけどもメカ屋が仲間になった!


「ありがと……早速直す?」

「じゃあ……コレ頼むわ」


 ということで早速ブレッドメーカーを早速直してもらったとのこと。

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