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01話 勇者、と魔法使い(見習い)。 ●

「”十字斬り”ぃー」

「ぐわあああああああああああああ」


 どうも、タケルです。

 性別は男です、歳は二十を越えても伴侶となる女性はいません。

 でも、一応勇者です。

 そんな今、何しているかと言えば――


「ぐ、ぐぐ……一発だ、と……!?」


 襲撃してきた盗賊を返り討ちにしてやったった、まぁただそれだけのこと。


 どうせ特に豪華な装いもなく、見た目には駆け出しの勇者にしか見えない俺の見た目だけあってちょろく遅いかかってちょろちょろっと小銭や装備を巻き上げる算段だったのだろう。

 しかしこう見えて俺結構強いし、なんとなく剣を縦横に切ってみたらそれが割と盗賊に効いてしまったらしい。

 ちなみに返り討ちに遭った盗賊の男は、泡を吹いて地面でもがいていた。

 

「……てことで、俺行っていいかな?」

「ふふふ、俺の甘く見るなよ。俺様のギルドには俺よりもずっと強い奴が沢山――」


 泡吹いてるのに喋るなんて器用だなお前……もっともそんな盗賊の与太話を聞いててもなんの得も無いので早々に立ち去ることとする。


「あ、まて! て――」

「”地面直下”」

「は、ははは! なんだそれは? 地面に剣さしただけでぐぶうううううう!?」


 五月蠅いので黙らせた。

 剣を勢いよく地面に挿すことで、アレしてコレして結果的に目的の相手まで勢いよく挿した剣の衝撃ままが伝わってしまう技。

 言ってしまえばここまでの一連の動作、盗賊を返り討ちにすることなんて造作も無いこと。

 レベル上げやら、金目当てか知らないが……俺を狙っては返り討ち、もはや日常茶飯事のことだった。


「あー……出てきていいぞ」


 白目を向いて気絶している盗賊男を尻目に、近くの人一人がしゃがんで隠れられるであろう手頃な岩石へ声をかける。


「お兄ちゃんありがと……って、相変わらず瞬殺だね」

「殺してはねえから」

「圧勝的な意味でだよ」

「……俺は正直戦いたくないんだけどなー」


 その理由が「人を傷つけたくない」なんて偽善者丸出しという訳ではなく、単に「面倒臭い」だけである。

 弱肉強食のこの世界とはいえ、殺したらお墓作らないといけないし、場合によっちゃ葬式に参列しないといけない……めんどすぎる。

 第一ちょびっとでも力使って懲らしめれば、もう刃向かってくることはなくなるし……気絶程度に倒す、これでいいんだよな。


 というかだな、やっとギルドの拘束から解かれたのに……まあ拘束時代よりはまだマシなんだろうけども。

 そして、のんびりまったり一人旅が出来るかと思ったら――


「お兄ちゃん……それは勇者の発言としてどうなの?」


 こいつ……妹が金魚のフンのように付いてくるハメになった。


「私は勇者じゃなくて魔法使いだけど……って正確には魔法使い見習いだけど。それでも! お兄ちゃんの勇者としての自覚は足りないんじゃないかなあ?」


 魔法使い見習い。

 それ故に見習いを卒業した「勇者」にくっついて現地で修行する、ギルドの方針でそう決めれている以上逆らえないことだった。

 ちなみにギルドの方針に逆らうと見つかり次第、判断され次第拷問である……それも死ぬ直前まで追いつめられる最悪鬼畜のレベルで。

 もっとも俺ならなんとか耐えられそうだが、やっぱり面倒なのは嫌だししょうがないか、と半ば諦め気味に。

 

「……見習いじゃなくなりたいなら、さっさと実戦経験積めよ。俺ばっかに任せやがって……面倒なんだよな、いちいち向かって来るのを相手するの」

「いやいやいや! お兄ちゃんに襲いかかるのは大体がレベルニケタ後半以上で必殺技持ちのハイレベルプレイヤーじゃん! 無理だよ! 殺す気?」


 大抵俺に襲い掛かるのはそこそこ腕に自信があり、調子づいたようなタイミングの輩ばかりだった。


「そこら辺に茂ってる”命源草”でも飲んでけば大丈夫だろ」

「それには調合魔法必要だし、そもそも死んだ私がどうやって飲めるのよ」

「まあ、根性?」

「お兄ちゃんはやってくれないんだね……」


 んー……めんどくさい。


「ああ、出来るかもしんないけど面倒だからな。だから死ぬなよ? 兄に迷惑かけんなよ?」

「そこまで言うなんてひどい! おにいちゃんの馬鹿! 私だってそう簡単に死んでたまるか! ……だからお兄ちゃんとグループ組んで、お兄ちゃんの得た経験値のおこぼれを私が貰う」


 なんかハイエナ行為っぽいことしてるけど、自覚あるんだろうか。


「グループ組んだ最初からそれやってるじゃねーか! 楽して経験値貰えるとか良い御身分だな!」

「お兄ちゃんの経験値マックスじゃん! 勿体ないから私は貰ってるんだよ? いわゆる有効活用なんだから!」


 そうは言っても納得しづらいし、なんだか損した気分になるのだが。


「威張るな、自分で戦え」

「戦ってるよ……モンスターと」

「レベル一から三までの弱小ばっかだけどな」

「し、仕方ないでしょ! そもそも私が”地上”に来たのなんて一か月前なんだよ!?」

「はいはい、分かりましたー」

「あっー! なによなによその反応! 面倒くさいみたいにーっ!」


 ……一応こいつ妹です、正直五月蠅いです。 

 ギルドさえ無ければこんな妹と行動なんてしませんとも……見てくれは悪くないのに、変に絡んで来るというか………やたら節介焼きというか。

 俺は勇者の大義名分こと「魔王とかの害悪討伐」を仕事とし、妹は「兄に付いて行き経験値積んで見習い卒業」の、そんな二人で旅しているという話。



 そうしてしばらく歩くと、岩だらけ土砂だらけの荒野の中で一つの町に辿りつく。

 どうやらそこでは市場が開かれているようで……俺はなんとなく覗いてみることにした。

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