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17話 勇者、買い物。 ●

 お茶の間のコタツにて。

 相も変わらず三人がコタツに足を入れてボーっとしている様は、いつ見ても旅している姿には見えない。

 タケルはレトロアイテムのロクヨンコントローラーの手入れ、マイは携帯端末を眺めて、キリは携帯端末でゲームをしていた――それは昼を過ぎた頃のこと。


「タケル様」

「ん?」


 ふと携帯端末のナビゲーションアプリを見ていたマイが、タケルを呼んだ。

 

「もう少しで町の近くを通るようですよ」

「あー、寄ってくか」


 食材などの消耗品が切れ始めているのが現状らしい。

 最近健康的な食事を行っていたこともあって冷蔵庫もとい冷凍屋の中身も無くなりつつあった。


「私だけで行って参りましょうか?」

「いや、俺も行きたいな」


 タケルは基本的に町などには寄るようにしている、まあレトロアイテム狙いなんだけども。

 

「荷物持ちぐらいするぞ?」

「よろしいのですか? それではお願いします」

「キリはどうする?」

「…………ん? なに?」


 キリはゲームに夢中で話を聞いていなかったらしい。


「町寄るんだけど、どうするって話」

「町! いくいくっ」


 以前キリは留守番するって言ってたきがするんだけどね、気まぐれである。


「じゃあ三人ですね……あ、タケル様今はここら辺ですね」


 マイが携帯端末(下敷きのような薄さの電子タッチパネル)の画面を指して、


「どれどれ……これぐらいならスクーターはいらないな、歩いてくか」

「お買い物、お買い物っ」

「キリ、浮かれ過ぎてると隙突かれてスラれるか誘拐されるぞ」

「大丈夫大丈夫!」


 フラグじゃないよ。


「……ふふ、それでは準備して参りますね」

「私も私もー」


 で、十数分後。


「(お茶の間の)防御魔法は発動中ですね」

「戸締りヨシ、じゃあショッピング!」

「おー!」

「おー、です!」


 そうして三人で街に繰り出すのだった。




 

 町。

 Dワールドビーフロ国十五番「グリーンワールド」平原の中に突然現れるその町……というか村にも近い印象を受ける。

 ログハウスのような建物が何十軒ほども並んでいるのが、なかなか風情があっていい。


「タケル様、このような小さな村には狙っている物品などあるのですか?」

「お見通しか、まあ。案外こういうところには民族的なものが売ってたりするんだよな」 

「そうなのですか……でも。まずは荷物持ちよろしくお願いしますね?」

「お手柔らかに」


 女性の買い物って長いし多いんだよね。


「じゃあ私は色々見てくるー!」

「気を付けろよー」

「じゃあ、まずはあそこに――」


 そうして色々なものを買う事になった。

 肉に野菜に果物などなど……タケルに提げられた簡易四次元買い物袋(買い物袋体積のおおよそ五倍は入る化学な買い物袋)に入っていく。

 マイが買い物をし、タケルがゴールドカードを提示して支払い。


「あの、今考えてみたらタケル様のお財布でしたね……勢い付きました。すみません」


 そういやそうだった。でもまあ料理作って貰う為に雇ってるのはタケル側でもあるし。


「いやいやマイの美味しい料理の為なら構わないでいいって」

「そう言っていただけると嬉しいです」

「本当にお世話になってます」

「そ、そんなかしこまられると……」


 二人頭を下げ合うという、これまたシュールというか結構に微笑ましいというか。

 それからしばらくして買い出しもひと段落して町を廻っていると、タケルの目に何かが止まった。


「……ん? アレなんだ?」

「アレ……ですか? 四角い白い箱ですね」


 雑貨屋のような店頭に並ぶのはそれは白い機械で、上へ方向に長く幅は二十センチ高さは三十ゴセンチ奥行き十五センチほどで天窓のついた蓋のようなものが上部に付き、いくつかのスイッチの付いたものだった。


「ちょっと見てくる」

「はい、お待ちしてます」


 そう言ってタケルは雑貨屋で、その機械を舐めまわすように持ったり触ったり、してから。

 タケルは躊躇なくそれを購入した。


「お帰りなさい……で、タケル様。何をお買いになったのですか?」

「これは結構凄いものかもな」

「? 何かする機械なのですか?」


 そうして、袋に入れられたその機械を取り出して見せながら。


「ブレッドメーカー……まあ、いわゆるパンが作れる機械だな」

「そんなものがあるんですか! でも、今は魔法で作れたりしていませんか?」 

「……妹は魔法使いだけども、そんな高等魔法使えないし」  

「あはは……でもタケル様が目を付けたということは、レトロアイテムなのですか?」

「そそ。おそらく三〇〇年以上前のだな、いやー良く残ってた」


 この世界に残っていたレトロアイテムの大半は”ノンロスト”という技術で風化・劣化進まないように施しを受けた物品だという。

 その技術が施されたのは確認されただけでも何億点があるといわれ、本当にそれは技術なのか? と疑問視されているとのこと。


 ――実際約三〇〇年前には魔法なんて存在しなかったはずなのだから。


「確かこういうのは小麦粉とベーキングなんとかが必要なんだっけか」

「……ベーキング? 入江の王様……?」

 

 ベーキングパウダーだけど、そもそも個人的にパンを機械でつくること自体があんまりないもんね。


「あ、お兄ちゃん! お買い物終わった?」

「まーな、帰るか」

「帰りましょうか」

「うん、帰ろっか」


 フラグでもなんでもなくキリと合流。

 そうして食材などの消耗品調達という目的も果たして帰って行きました。

 

 帰っていったのはいったんだけども。



「あ……あれ?」



 その町でタケルとマイとキリの三人とすれ違ったフードを被った小柄の人がそう呟き。


「見間違いかな……?」


 その人は歩いてくタケル達を少しだけ眺めると逆方向へと歩いて行った。

 これこそ、フラグ? 




 

 レトロアイテム……ブレッドメーカー。

 パンを自宅で簡単に作れるようにした当時は画期的な機械。

 動くかどうかわからないけども、見切り発車での購入。


「ちなみにおいくらだったんですか?」

「一〇〇……」

「それならお買い得でした――」

「万G」

「……ちょっとキリ

様お呼びしましょうか」

「えー、高いかな?」

「…………」


 そのあとキリに正座させられながら説教されましたとさ。

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