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09話 勇者、おしるこ。 ●

 神主視点だとなんか凄いっぽかったけどね。

 ……いやまあ、凄いことには変わりないんだけどさ。

 タケル視点だと、こうなる。



* *



 あー、面倒臭い。家帰ってコタツ入って緑茶すすりたい。

 あの外は砂漠で暑さムンムンだっていうのに、お茶の間内には冷房で寒いぐらいにして温いコタツに入る!

 アレ以上の至福はないね、緑茶のこと考えてたらまた喉渇いてきた。


『ここは……どこなのです?』  


 起きちゃったことには仕方ないからテキトーに答えておく。

 なんか彼女、コロコロ表情変わってる気がするけど、まあいいか。

 とりあえず目の前に見える敵倒そう……でっけー、クエスト報酬の割りあわねー、実は俺にはそんなのどうでもいいー

 木刀構えて、はいちょい回転すりゃいいか……なんか技繰り出す時に言った方がいいらしいから、今考えたヤツを適当に。

 っぷ、要は半と半々回転として木刀振るっただけど――語呂的にいいかもしれん。

 いかん、気に入った。面白い。


「”3/4ami斬り”」


 なんか、妙にツボ。

 でも喉渇いたわ……帰りたい、お茶も飲みたい――ああ、愛しのお茶の間へ!


「ああ、喉渇いた」


 彼女なんか言ってたみたいだけど風の音で聞こえないわ、いいかスルーして。

 さて、帰るか。



* *


 

 予想以上のひどさ。

 まあ、あの技地味に凄いんですけどね……なんという残念勇者。

 砂を空中に持ち上げた上に、前方向へと勢い付けた上に砂一粒単位で高速振動させて、いわゆる勝手に前方に向かう電動ノコギリ状態になってたってこと。

 それも頑丈そうな岩の塊を粉砕するほどの威力で、凄いのになんというか、うん。

 

 それでタケルはといえば、バリューカードに付属したカメラ機能で倒した痕跡を撮影するとスクーターに乗る。

 一応クエスト終了を確認する為の行為なんだけども、あくまで保険で。クエスト開始時に動画撮影機能が稼働するようになってるから必要ないんだけも。

 その動画撮影ってのも何か衣服や物体を通してでも出来るからどうでもいいけどすごい。


「おーし乗れ、中継地点で約束のジュース頼むぞ」

「え、ちょっと待って下さい!」

「なんだ? あ、担架モードのままだったな。ハイ、直したから後ろに座れるぞ?」

「そうではなくて! あなたは一体何者なんですの」

「俺? レトロコレクターだけど?」

「レトロ……なんですか?」

「大昔の物品とか集めるのが趣味なんだよ、で副業が剣使いね」

「そっちが本業でないのですか!?」

「うん、俺勇者とか興味ないし」

「な、なんという……」


 彼女は思ったことだろう、勿体ないと……今に始まったことじゃないけどね。


「置いてくぞ? いや、やっぱ連れてく。そしてジュース奢れ」

「どこまでジュースに執着するのですかっ! あの、一応飲み物はあるのですけれど」


 膜を張り、スクーターを発進させながらタケルは聞く。


「え、あんの? なになに?」

「えっとですね――おしるこです」


 なぜ持っているのかと。


「この砂漠でおしるこ……まあ汁物には違いない?」

「無理しなくてはよいのです、ただとても美味です! ああ……勿論、中継地点に送って下さればジュースも御馳走しますから」

「うーん、じゃ貰うか」

「運転中ですから、開けておきますね」

「サンクス」


 あれ、神主なんか慣れてない?



「(まあ正直結構暑い砂漠でおしるこって……出来れば、コタツで飲みたい。それでも貰ったしなあ、美味しいって言ってるし頂くか)――頂きますっと……ごくっ――!?」 


 その時タケルは衝撃を受けた、改めて開けられたおしるこの缶を見直す。


「(な、なんだこれは。口に含んで普通はべとりという感触が先行しそうだというのに、飲み口はさらり。だというのにどっとおしよせる小豆特有の癖のある甘い香り。それなのにその甘さも口からはすっと引いて、まるで何もなかったかのようなあっさり感。それでも何故か後を引く、体がその糖分を小豆を欲しがってしまう。冬に特化したような、特殊飲料だと断定していたというのに。これはブドウ糖も摂れて頭の回転をよくして、ほのかに分かる塩分が体にしっかりと吸収される、そして後を引くのにきっちりと飲みきれば口の中は潤い、圧倒的な満足感。ちょっとぬるくなっているのに、くどくなくこの暑さでも十分に美味しくいただける。もしこれをほんわかに温めて寒い最中に飲んだら……!)」


 あのテキトー勇者を饒舌にした。


「(ごくり……つまり。なんだこれは、すっごいうまいぞ!?)」

「お口に合いましたか? 私のお気に入りなのです」

「(……これはケースで欲しい)」


 いやいや、どういうことよ。


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