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妖と組んで怪異事件を解決することになりました〜私の平凡な日常が行方不明なんですけど!?〜  作者: mii


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3/3

3.まさかの給料発生するパターンだった

家に帰るとお母さんがニコニコしながらデートはどうだったのと聞いてきた。デートじゃないと否定しても全く聞く耳を持ってくれず、もう否定するのを諦めることにした。


お母さんの中での綺咲くんはイケメンで彼女思いのハイスペック男子らしい。ハイスペック男子というのは分かるが、彼女思い以前に人の心がないと思う。そもそも人ではないけど。


お母さんもそうだが、お父さんからも質問攻めにされてげっそりしながらお風呂に入って就寝した。


朝、朝食を食べ終わって歯磨きをしているとインターホンが鳴った。なぜか嫌な予感がする。そしてその予感は的中した。


「詩葉! 今日も来てるわよ急ぎなさい!!」


(昨日だけじゃなかったの!?)


幸い、今日はご飯を食べ終わった後に来てくれたが、人の住所を特定した挙句こうしてなんの断りもなく続けて来るのはどうなのか。心では悪態をつきながらも、結局これはずっと続いていくのだろうと詩葉は半分諦めていた。


家を出ると案の定、綺咲くんが不機嫌そうに腕を組んで立っていた。


「遅い」

「昨日より5分早いんですけど」

「俺の基準では遅い」


飛んだ暴君だ。通学路を並んで歩く。いつもと同じ風景なのに、横にいるのが人ではない存在だと思うと、あまり現実味がなかった。


「それで」


魁人が不意に口を開く。


「昨日の説明で理解はできたか?」

「理解はできたけど、だからと言ってはいそうですかとはならないよ。まだこれは夢なんじゃないかって思ってる」


妖に神、神使…。自分が革命派に狙われる可能性があること。昨日の夜ファミレスで聞いたことだが、革命派が私の存在を既に認知している可能性が高いらしい。燃える人影の事件以降、妙な動きが増えたとかなんとか。


少し不安げに俯いた詩葉を横目に、魁人はさらなる爆弾発言をするのだった。


「そういえば、委員会は俺と一緒に学級委員会に入ってもらうからな」

「え???」


チクチクとした視線を受けながら校門を抜けて下駄箱に行く。正直駅から別行動をしたいところだが、いつ革命派が襲撃して来るのか分からないため、朝から”わざわざ”家まで迎えに来て通学も一緒にしてくれているらしい。


1限目は委員会決めのため、クラスではどれに入るかなどの話題が飛び交っていた。先生が来て、各委員会の説明をする。先ほどの爆弾発言が気になりすぎてほとんど頭に入ってこなかった。


「では、最初に学級委員になりたい人から決める。誰かいないかー?」


先生がそう言うと、周りの生徒は辺りを見回して他の生徒がどう出るかを探り出した。


「誰もいないみたいなので、僕と神楽木さんでやります」


(うあああああ!!! もうどうにでもなれ!!!!!)


先生がそれでいいかと確認を取ると、綺咲が選んだ奴なら問題ないみたいな雰囲気になりあっさり決まった。一部の女子からは多少の批判も出たが、神楽木さんは家も近いし連絡がしやすいと魁人が言うと、それならと納得していた。世の中顔とはこういうことか。


そこからは綺咲くんと私で委員会決めを進めて無事に全部の委員会が決まったところで1限目が終了した。どうしていきなり学級委員になると言い出したのか聞いてみると、少し気になることがあったとあまり詳しくは言ってくれなかった。しかし、少しだけ険しい顔をしていたのが気になった。


今日は何やらやらなければいけないことがあるらしく、部活は休めと言われた。






放課後、再びあの神社へ向かう。


「正式に俺のアシスタントになるからには、契約をしないとな」

「…契約?」


嫌な予感しかしない。


(やらなければいけないことってこれかぁぁぁ)


鳥居をくぐると昨日と同様、結界が張られ、外界の音が遮断された。そして拝殿から出てきたのは白狐の雪影だ。


「待っていましたよ。人間のおなご」

「ちんちくりんって言わないだけマシですね」


ふっ、と雪影が笑った。


「今日は契約手続きと妖術の練習です」


雪影の説明によると、契約とは


・妖退治において人間を協力者にする場合に行う承認手続きである

・妖退治は神と共存派の幹部の管理下にあり、極力人間を巻き込まないことが前提である

・無償協力は原則禁止(命の危険があるため)


「それってつまり……」

「給料がでる」


魁人が淡々と言った。


「ついでに言うと、お前は一昨日の件で実質一体退治してることになるな」

「え???」

「歩合制だ」


なんと。


出会って以来の好待遇である。まぁ、まだ知り合って3日しか経っていないが。しかし、給料がでると言ってもどのように支給されるのだろうか。


「それなら心配ありませんよ。こちら側の世界で使っている通貨を電子マネーに変換できるので」


そう言って雪影が指をパチンと鳴らすと、詩葉のスマホが震えた。


「ご、五万!?!?」


◯ay◯ayからの通知に腰が引けた。中級だから相場だな、と魁人がこぼす。命と引き換えの五万円。高いのだか安いのだか。


(ていうか、神使が電子マネーて…)


「では、そろそろ妖術の練習をしましょうか」


拝殿の裏の本殿まで行く。本来なら行けない場所なのでなんだか罰当たりな気もするが、命がかかっているのでそんなことは言っていられない。雪影が護符を取り出し浮かべると、辺りが光に包まれた。


目を開けると、茜色の空が広がり、木造の家屋が建て並ぶ大きな通りに出た。通りは賑わっており、あちこちで客引きの声が聞こえる。太鼓や笛の音が鳴り響き、とても現実とは思えない。ずっと続く大通りのその先には、一際立派な高い建物が存在感を出していた。


「綺麗……」

「ようこそ、隠り世へ」


カランコロンと下駄の音が響く。揺れる提灯のあかりがこの街並みをより一層美しいものにしていた。周りに気を取られながらも、雪影と魁人のあとをはぐれないようについて行く。


そういえば、なんだかちらちらと視線を感じる気がする。不思議に思っていると、雪影が小豆洗いと思わしき妖に話しかけられていた。


ザルいっぱいの小豆を抱えて店から出てきたので、やっぱりどう見ても小豆洗いだ。ちなみにどら焼きが売りらしい。あとで買いに行こう。


「雪影さん、どうして人間がここにいるんです?」

「あぁたきさん、彼女は魁人のアシスタントなんです」


滝という小豆洗いの妖はとても驚いた顔をしてなんだってと叫び、それを聞いた周りの妖たちもざわめき始め、妖たちが仕事を放り出して雪影を質問攻めにしている。何かまずかったのだろうか。


「あ、あの綺咲殿が、アシスタントだって!? それも人間の…」

「俺のことをなんだと思っているんだ」


どうやら綺咲くんは有名みたいだ。やはり現実世界と同じで顔の良さで有名なのだろうかと思っていると、それは違うからなと否定された。


(やっぱ読心術が使えるんだ!)


「それも違う。お前が顔に出やすすぎるんだ」


地味にショックを受けた。ババ抜きで一度も勝ったことがないのは、思っていることが顔に出ているからだろうか。雪影は彼も成長したんですよと言って、群がっていた妖たちを仕事に戻らせていた。


一旦狐のお面でもつけといてくださいと言われ、お祭りで売っていそうな白に赤い花が描かれたお面を渡された。つけてみると意外にもピッタリとはまって、綺咲くんには馬子にも衣装だなと言われた。もっと他の言い方があるでしょうが。


しばらく歩いていくと、大きな門の前で雪影が止まった。重厚感のある木目に、少しだけ緊張する。雪影が私です、と言うと、ひとりでに門が開いた。奥には立派な屋敷がある。


着いてきてくださいと言われ、屋敷へと続く道に足を踏み入れる。右には立派な桜の木、その奥に百日紅の木。左には美しい紅葉の木、そしてその奥に椿の木。四季が詰まったその空間は暑くも寒くもなく、まるで時が止まっているかのようだった。


「もうお面は外していただいて結構ですよ」

「あ、はい」


感動でお面を片手にポカンとしていると、間抜け面だなと魁人は少し小馬鹿にして笑った。いちいち人の琴線に触れるような言い方をする。カチンと来たが、詩葉は心を無にしてじっと魁人を見つめ返した。


「なんだその顔」

「ううん、手のかかる子供ってどこにでもいるよなって思っただけ」


若干キレ気味に俺はガキじゃないと魁人と詩葉が言い争っていると、2人とも静かになさいと雪影に怒られた。バツが悪そうに魁人が雪影から目を逸らす。


(ざまぁ見なさいよ)


「詩葉、貴方も人のこと言えないですよ」

「う゛っ」


また顔に出ていたらしい。






屋敷の入り口から一番近い部屋に荷物を置き、裏庭へと続く回廊をローファーを持ちながら進む。とにかく広い屋敷で、どこになんの部屋があるのかさっぱり分からなかった。雪影曰く、慣れれば大丈夫らしい。途中、吹き抜けになっている箇所があり、縁側から美しい日本庭園を楽しめる仕様になっていた。最初と比べれば微弱ながらも、詩葉は胸が熱くなった気がした。


やっと裏庭に着いたと思ったら、すぐにローファーに履き替えるように言われ、急いで雪影と魁人のいる庭の中央に向かった。


「では、今から妖術の練習をします。まずはこの間妖退治をした時をイメージしながら弓を作ってみてください」


深呼吸をし、目を閉じて詩葉は集中する。そうすると何やら不思議な力が集まり、弓が形成された。


「前は自分の意思じゃなかったのに…」

「やっぱ普通じゃないな」


本当に妖術を扱えるようになっていたらしい。雪影と魁人が言うには、妖ならば誰でも妖術を使えるが、体力と妖気ようきの消費が激しいらしく、それを抑えるために護符を使って緩和しているそうだ。


体力を使い果たすだけならしばらく気絶しているだけだが、妖気となるとそうもいかないらしい。妖には真名というものが存在しており、妖気を使い切ると真名に傷がつき、最悪消滅してしまう。


「異世界ファンタジーものだと、魔力を使い果たすとコアに傷がつくみたいな感じだな」

「妖が魔力とか言っちゃってるよ」


確かにこの話を聞くと、護符なしで妖術が使える普通じゃない人間というのも納得できる。


「とりあえず妖術が使えることは分かりました。あとは、弓がベースの攻撃しか使えないのかどうかを調べたいところですね」

「弓道部だから弓ベースとか安直すぎだろ」


なんだこいつ。


「この屋敷は時間が流れるのが遅いので、時間はまだたっぷりとあります。ゆっくりやっていきましょうか」

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