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3話 静かでうるさい物理室

 俊大「生田(いくた)に告白されたッッッ!!!?」



 場所は誰もいない物理室。


 ふたりは机の上に自分たちの弁当を並べ、雑談を交わしながら昼食を済ませていた。




 侑斗「まあ断ったけどな」




 モグモグ―――弁当にあるおかずを口にしながら口にする侑斗(ゆうと)


 そのあまりのあっさりさに、俊大(しゅんだい)は思わず目を見開く。



 俊大「……は!? 断ったって……。なんで断るんだよ、よりによってお前が」



 すると侑斗は「はぁぁ」と、重いため息をつく。




 侑斗「だから………なんではじめっからおれが生田さんのこと好きみたいになってんだよ? まだおれ何も言ってねーのに」


 俊大「じゃあお前……中学んの時のあれは何だったんだよ?」


 侑斗「あれ……?」


 俊大「動揺してたじゃないか。生田といる時いっつも」


 侑斗「…………」




 侑斗の急な沈黙に、俊大は思わず眉をひそめる。




 俊大「ほらな、やっぱり」


 侑斗「……いや、お前に言っても伝わんないだろうなって思って」


 俊大「……は? バカにしてんのか、俺のこと」


 侑斗「違う、そうじゃなくて……。お前みたいな誰とでも話せるヤツには、どうせ言っても通じないって思ったんだよ」


 俊大「は………なんだよそれ?」



 俊大は一旦考える素振りを見せたあと、



 俊大「じゃあ一回だけでいいから俺に話せよ。伝わるかはそのあとだ」


 侑斗「…………」



 侑斗は仕方ないと言った様子で、軽くため息をつく。



 侑斗「目の前にひとりの女子がいるとする」



 そこで一度俊大の方を見る侑斗。


 すると間が一拍ほど空く。



 俊大「……ん? なんだよ、続きは?」



 侑斗は、再び口を開く。



 侑斗「その女子は、まぁそこそこに見た目がよくて、普段まともに話したこともないのに妙に馴れ馴れしく自分に対して接してくるんだ」


 俊大「要するに生田のことが言いてーんだろ?」



 急に顔を赤に染めだす侑斗。


 勢いよく俊大の方を見て―――



 侑斗「ち・が・うッ! あくまでこれは一般論だっつってんだろ!! いいから人の話を黙って聞け」


 俊大「へーい……」



 話を再開する侑斗。


 ふたりが弁当を食すその手は、完全に止まっていた。



 侑斗「そういうシチュエーションで急に女子に接してきたら、否が応でも動揺してしまう。これはおれだけに限った話じゃなくて、普段女子と全く関わらない男子にとっては当たり前のことなんだ……多分」



 侑斗は反応のない俊大の方に目を向ける。



 侑斗「……分かったか? おれが言いたいこと」



 若干呆けた顔の俊大。



 俊大「わかんない」



 その顔のまま、俊大は子どものようにそう答える。


 その反応を見た侑斗は、『やっぱりな』と言いたげな表情だった。



 侑斗「これだからイケメンは……」


 俊大「それで? 結局お前がフッた理由は何なんだよ」



 再び弁当に手をつける侑斗。


 俊大は気になるとばかりに、体ごと侑斗の方を向いている状態だった。



 侑斗「それは言いたくない」


 俊大「は!? そこまで言っといて教えてくんねーのかよ!?」


 侑斗「まぁ……いつか気が向いたらな」


 俊大「……それ絶対言う気ねぇだろ」



 呆れる俊大。


 依然として侑斗は、モグモグと弁当に口をつけている。



 侑斗「それよりお前の方はどうなんだよ? またバスケ部入ったんだろ?」


 俊大「……ああ。どうったって……別にお前、バスケの話とか興味ねぇーだろ?」


 侑斗「いや……もう告白でもされたのかなって」


 俊大「は……っ!? されるわけねーだろそんなの。まだ入って1日しか経ってねーのに」


 侑斗「まあ……それもそうか」


 俊大「…………」


 侑斗「でもお前こそなんで恋愛しないんだよ? 告白されることとかフツーにあっただろうに」


 俊大「あー……」

   「毎回断ってるよ。別に恋愛する気なんてねーし」


 侑斗「へー……。人のことは散々言っておいて、自分は恋愛に興味ないんだな」


 俊大「お前のはいじり甲斐があるからいいんだよ」


 侑斗「何だよ、そのいじり甲斐って……」



 目先の時計を見る侑斗。



 俊大「あ……。もう昼休み終わるじゃねーかあ。早く食ってさっさとここから出よう———」



 侑斗が弁当を全て食べ終えていることに気づく俊大。



 俊大「ってお前、いつの間に……」


 侑斗「お前が遅いんだよボケ」



 カッカッカッと、残りの弁当を急いでかき込む俊大。


 対して侑斗は、ぼうっとしたままただ前を向いていた。




○教室


 同じくぼうっとした状態のまま、ただ場所だけが移り変わる。


 そこは六限が終わったばかりの教室で、それも相まって今は何かと騒がしかった。



 新しく友達グループが出来上がっている男子同士。


 男子と同じように、女子もまたそれぞれのグループができていて会話が聞こえてくる。当然その中には例のみよりの姿もあって……



 そんな教室の全体の様子を、侑斗は一番後ろの席から見つめていた。



 そんな中、突如後ろの棚から荷物を運ぼうとしたあるひとりの女子がバランスを崩し筆箱を落とす。


 どうやら筆箱の中身は開けたままだったようで、侑斗の席から真ん中の方の席にかけてバアッと中身が散らばっていった。


 慌てて反応した侑斗は、即座に目の前に落ちたペンの一つや二つを拾おうとした。がしかし、



 女子「……あ、大丈夫っ! 自分で拾うから!」


 侑斗「…………」


 

 そう言われた侑斗は、とっさに伸ばしていたその片方の手を差し引いた。



(恥っず……)



 そんなことを思っていると、前の方で異変に気づいた他の女子が駆け寄ってくる。


 「大丈夫……!?」と心配そうな言葉をかけ、落ちた中身を拾いだす彼女には、自分みたく拒否するような態度を取らずに、むしろ拾ってくれたその女子に対して「ありがとう……!」と声をかけていた。



 侑斗は思わず顔を窓の方へと逸らす。


 自分の机にある一つのポールペンを握り、カチカチと音を鳴らしだした。



〈俊大のやつ、今ごろ何してんだろう……



 友達はもう出き始めてるだろうし……


 あの見た目じゃ、どうせ女子にも声かけられてるんだろうな



 容易に想像がつく


 中学の頃と何ら変わらないあの光景が



 もしあいつがここにいたら———



 果たしておれは


 ここでどう振る舞ってたんだろう〉



 再び教室の前方を見る。


 偶然か、侑斗の目はみよりの目を捉えた。



 そして間もなく、みよりも自分の方を見た。


 そのみよりが、友人らと離れだす。


 行く末は、自分がいる方だった。



(…………)



 話しかけられる。



 そう思っていた矢先、彼女はさっと自分の席を通り過ぎた。


 侑斗の目が少しだけ見開く。



みより「鳴見(なるみ)くん」



 すると突如聞こえだす、透き通った女子の声。


 それは言うまでもなくみよりの言葉だった。



 彼女は棚に身を向けながら、そこで直接声を発していた。



 侑斗「…………」



 困惑で、言葉を発せられない侑斗。



みより「このあと、時間ある?」


 侑斗「………!」


 


○学内のとある渡り廊下にて


 みよりの友人である南根ユカは、みよりと侑斗が一緒に下校しているところを偶然目撃する。



 ユカ「え………」


 


次回は、来週金曜の更新となります。

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