1話 入学式、そして始まり。
あくまで脚本形式です。お手柔らかにお願いします。
〈きみは男の子
もし明日
理想の人に告白されるとしたら
なんて答える?
きみの理想は何?
きれいな人?
それとも可愛い系?
ショートヘア?
それともロング?
体型は? 身長は? 足の長さは? 胸の大きさは………?
―――もし、全部選べるとしたら……
———本当に付き合えるんだとしたら……
きみはこれからずっと
『きみのまま』でいられる?〉
○初登校
「気まずいよな……そりぁ」
入学式初日、学校に登校中に侑斗は人ごみの中ひとり呟く。
「何が気まずいんだ?」
すると突然、侑斗の後ろから見知った声が聞こえてくる。
侑斗はビクンッと驚くとともに、後ろを振り向く。
「俊大……ッ!? って、お前いつの間に……」
「ちょうど後ろ姿が見えたんだよ」
「あー………」
「で?」
「………?」
「さっきのだよ? ブツブツひとりでしゃべってたじゃねーか」
「…………っ!」
目を逸らす侑斗。
「……何でもねぇーよ、別に……」
「それ、『あるやつ』が言うセリフな」
「……………」
気まずそうな顔を見て、俊大は
「―――ま、いいかそんなのこと。別にどうでもいいし」
「なら始めから聞くなっつーの………」
「今何か言ったかー?」
「………はいはい、何でもありません」
大勢の生徒の中、校門を通るふたり。
何一つ会話もないまま、歩いていく。
(……そういや、前にもこんな話したな)
○受付を終え、クラスの掲示板を見に二人は一旦別れる。自分のクラスを確認し終えた侑斗は人ごみの中から抜けだすと、自分よりも早く戻っていた羽瀬俊大の方に向かって歩き出す。
「どこだった? クラス」
と、侑斗
「4組。お前はどう———」
―――えっ、みよりも2組!?
その時、少し先にいる女子の集まりの中から声が聞こえる。
『やったー!』と、女子たちが騒いでいる。
それを見ていたふたりのうち、俊大が話しだす。
「そう言えばさぁ」
「………?」
「前から思ってたけど…………お前、生田のこと好きなんだろ?」
「は………ッ!?」
「いや……だってお前、生田といる時毎回挙動おかしくなってたから」
「…………!!」
「図星だなあこりぁ」
「———いや、違うッ。そうじゃなくて……」
「じゃなくて?」
(やべー、話逸らさねぇと……)
「皆、気づいてたのか? そのこと」
「そのこと……?」
「だから、おれが挙動おかしかったってことだよ」
「あー………そりゃあないと思うぜー。だってお前のこと興味あるやつなんて別にいないだろ、お前地味だし」
「おい言い方……」
「で、どうなんだよ? さっきの質問。やっぱり好きなのか?」
(げ………)
「おれは………」
———何が好きなの?
そんな中、突然ふたりの間に生田みよりと、その取り巻きが現れる。
「————ッ!?」
(生田さん……!?)
「おー、生田。ちょうど今———」
その瞬間、侑斗は俊大の勝手な発言を防ぐべく、片手で口を塞ぐ。
『お、おいッ! 何ずんだよいぎなり!!』
「こっちこそッ、何話そうとしてんだっ!!」
せめぎ合うふたりを前に、女子三人組がぼおっとそれを眺める。
前澤イチカ「まったく、男子ってホンっとこういうこと好きですわな~」
みより「そうかな?」
イチカ「みよりは今まで見てこなかったのー? しょっちゅうこういう喧嘩みたいなことしてた男子いたでしょ?」
そして一瞬、みよりはいまだにせめぎ合っている侑斗たちの方に目を向ける。
みより「あー……たしかにそんなこともあったかも?」
南根ユカ「えっ!? 私知らないよ!? そんなこと」
イチカ「あー……ユカは天然だから多分説明しても無駄だと思う」
ユカ「……え、なんか今私バカにされた……?」
イチカ「うんん、そんなことないよ。ユカはユカらしくいてねーって話」
ユカ「私らしく………?」
みより「あっ、終わった……!」
そうみよりが口にするとともに、ふたりの視線も男子の方に行った。
見れば、今までせめぎ合っていたふたりは「はあはあ」息を漏らしながらお互い少し離れた位置にいた。
そんな様子を見たイチカは、二人に向けてぼそっと発言。
イチカ「で、ふたりはさっきから何で争ってた?」※呆れた風に。
みよりは、また俊大を警戒して一瞬目を向ける。
侑斗「……いやッ、ホントに何もないから」
イチカ「何もないわけないでしょう? さ、白状白状!」
侑斗「…………」
侑斗は、もう一度俊大に目を向けちゃんと隠し通そうとする様子を確認。しかし———
みより「あっ、それなら私聞いてたよ! 少しだけ」
侑斗「………!」
イチカ「えっなになに!? なんて言ってた!?」
みより「えっとー……何かのことを好きなのか、それとも好きじゃないのか、みたいな……」
イチカ「えっ、何それ……!? 恋バナ?」
女子三人の目線が男子に向かう。
〈いやいや………何て言えばいいんだよ!
……ていうか、ここで黙ったらやばいんじゃないか!?
早く何か言わないと—――〉
俊大「ははははっ! 違う違う!! 俺たちは普通に『映画の話』してただけだよ。昔の映画とか言っても、どうせ分かんないだろ?」
イチカ「あー……。……ってホントに映画の話ー?」
俊大 「ホントだよ」
イチカ「………ふーん」
俊大 「んじゃ、俺はあっちの方にでも行くっかな。別の組としゃべっててもしょうがないし」
そうしてこうじは、片手を高く上げながらその場を去っていく。
呆然とする女子たち。
イチカ「羽瀬って何組なの?」
侑斗「あー……四組って言ってた」
イチカ「ふーん。……ならーーーって………何だったっけ名前……」
侑斗「……………」
沈黙
みより「鳴見くんだよ! イチカ」
イチカ「……え、そんな人いたっけ……?」
みより「―――ってここにいるよ、もう~!」
(あはは……。おれも人のこと言えねぇー……)
イチカ「そっかそっか。じゃあ鳴見くんは何組だったのー?」
侑斗「二組……」
イチカ「あー、だから……」
みより「え! 鳴見くんも二組だったの!?」
侑斗「……あ、うん」
みより「そっか~。じゃあ結構多いねー、同じ中学の人」
イチカ「多いって言っても、大半は知らない学校の人たちだけどねー」
みより「でも少し安心しない? 知り合いがいるのって」
ユカ「私も私も! みよりちゃんと一緒なのちょーうれしい~!!!!」
ふたり(みよりとユカ)が仲良くハイタッチ
イチカ「ま、同じ中学同士協力していきましょーや」
みより「だねだね!」
ちえ「うん!」
イチカ「さてッ。そろそろ移動でもするかー、もうすぐ入学式始まるし」
みより「え! もうそんな時間!?」
イチカ「ウチらしゃべり過ぎなんだよ、さっきから」
みより「……………」
みよりが侑斗に目を合わせる。
侑斗の瞳孔が開く。
「またね!」
「………うん」
「……あっ、違った」
「………?」
「これからよろしくね、鳴見くん!」
と言って、女子たちは侑斗の元を離れ生徒玄関の方へと向かいだす。
侑斗「……………」
(ホントわけが分からんというか………
あれは一体
何の『宣言』だったんだろう……)
〈中学が終わる最後の日―――
おれは突然、生田さんから告白された
そしておれはその告白を
あっさりと断った〉