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第一話 プロローグ
ぽちゃん。
音がした途端、私の世界が凍った。
重力に引きずり込まれる感覚とともに、冷たい水が全身を包み込む。
肌を刺すような冷たさに縮み上がり、頭まで沈んで、光が消えた。
冷たい水が、鼻の奥にまで一気に押し寄せる。
ツンとした痛みが、頭の奥まで響く。
喉が焼け、肺がひっくり返ったみたいに痙攣しながら、空気を探して暴れる。
でも、息はできない。
吸えない。吐けない。
ただ、水が喉に、胸に、無理やり押し込まれていく。
手足を必死に動かしているのに、足首が重い。
何かが絡みついてる。
冷たく、硬く、離れない。
怖い――。
水の中は、こんなにも冷たくて、暗くて、音すら聞こえない。
なのに、なぜか知っていた。
ああ、まただ。
また、だ。
なんで? どうして「また」なんて思うの?
初めてのはずなのに――。
――だけど、違う。
身体が知っている。
死ぬ。絶対に死ぬはずなのに――。
――それでも、終わらない。
助けて、なんて言えない。
喉で溜まった泡が破裂していくだけ……。
意識が黒く沈む直前。
耳の奥で、遠い誰かの声が囁いた。
――また、おいで。
なぜか懐かしい、聞き覚えのある声。
私は、また死んだ。