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新しい始まり!

4日が経っていた。


医療室は静かで、天井のライトの薄暗い輝きが壁に柔らかな影を落としていた。カイの心臓モニターの規則的なビープ音が静寂を切り裂き、安定しているものの弱々しかった。


ローズはまだそこにいた。


彼女はカイのベッドのそばに座り、頭をそっと彼の胸に預けて、ぐっすり眠っていた。彼女の呼吸はゆっくりで、尻尾は膝の上にだらりと垂れ、呼吸ごとに上下していた。


カイの指がピクリと動いた。


体は痛み、四肢は重く感じたが、彼に寄りかかる温もりが最初に気づいたものだった。


ゆっくりと、まぶたが開いた。


ぼやけた天井が徐々に焦点を結び、視線は下へ――彼に寄りかかる重さに移った。


ローズ。


彼女の顔は穏やかで平和だったが、眠っている間も疲れが表情に残っていた。


カイは静かに息を吐き、声がかすれた。


「…ローズ?」


ローズは鋭い息を吸って目を覚ました。耳がピクッと動き、一瞬、方向感覚を失ったように見え、眠そうな視線がカイの疲れた半開きの目と合った。


そして――彼女の息が止まった。


体がこわばった。


「カイ!!!」


何が起きているのか処理する間もなく、ローズは前に飛び出し、強く抱きしめた。


「よかった! 生きてて!」彼女の声は震え、数日間抑えていた安堵でいっぱいだった。


カイはうめき、全身に鋭い痛みが走った。傷は癒えていたかもしれないが、痛みは深く――ローズは彼を押しつぶしていた。


「ロ、ローズ――」彼は咳き込み、声が詰まった。「押し、つぶしてる――!」


彼女はすぐに離れ、耳をぺたんと下げて自分が何をしていたかに気づいた。


「うわ、まずい――ごめん!」彼女は手を離したが、最後にぎゅっと強く抱きしめた。


カイはうめきながら、枕に頭を沈めた。「本気か? しばらく離す気なかったみたいだぞ…」


ローズは腕を組んでふんっと鼻を鳴らした。「だって、死なれたら困るんだから!」


カイは目を瞬かせた。「それ、『生きててよかった』の変な言い方だな。」


ローズの尻尾がピクッと動いたが、彼女は目をこすりながらそっぽを向いた。「…うるさい。」


カイは弱々しく笑い、声はまだかすれていた。「ローズ、こんなのらしくないな…」


彼女は少しこわばり、尻尾が後ろで揺れた。


「ずっとここにいたのか?」


彼女の耳がピクッと動き、久しぶりにローズは恥ずかしそうに見えた。


彼女は頭をそらし、防御的に腕を組んだ。「も、もちろんよ!」


カイは眉を上げた。


「ほら! あんたが私を助けてくれた借りがまだあったから!」彼女は少し声を上げてまくし立てた。「これでチャラよ!」


カイは目を瞬かせた。「どうやってチャラになるんだ? ただ昼寝して俺が寝てるのを見てただけだろ。」


パチン。


鋭い一撃が彼の腕に着地――痛くはないが、注意を引くには十分だった。


「ったく!」ローズは頬を赤らめてふんっと言った。「可愛いデミキャットが寝てる間に寄り添ってやっただけで十分じゃないの?!」


カイは口を開けて答えようとした。


その時――


「変態!!」ローズの叫び声が医療室に響き渡った。


カイの顔が混乱で歪んだ。「は?! 何――」


外で、足音が部屋に向かって急いできた。


ドアがバンッと開いた。


アイカとアルニクがドアに立ち、目を見開いていた。


アイカはまだ半分寝ぼけながら目をこすり、医療室に向かってよろめいた。アルニクは一体何の騒ぎかと訝しげだった。


そして、彼らは見た。


カイ。


起き上がって。目覚めて。


彼らの目が見開いた。


「カイ!!!」


反応する間もなく、二人とも前に飛び出した。


「待って――ダメ、ダメ――」


ガシャン。


アイカとアルニクが全力で彼に突進し、ベッドに押し戻した。過剰に熱心な友人たちの重さに彼の肺から空気が押し出され、喘いだ。


「う――痛い! やっと目覚めたばっかりなのに!」カイはまだ癒えつつある体に走る痛みにうめいた。


アイカは彼にしがみつき、胸に顔を埋めて泣いた。「バカ! 死にかけたんだから!!」


アルニクは腕で彼を抱き、強く締め付けたが、顔はそっぽを向いていた。「ちっ。目覚めるのに時間かけすぎ。」


カイは息を切らした。「お、俺――また昏睡状態に戻された気が――」


アイカはさらに強くカイにしがみつき、肩を震わせて小さなすすり泣きを漏らした。彼女は彼のユニフォームを握り、再び彼が消えてしまうのではないかと恐れるように。


「よかった…」彼女は震える息の間で声を詰まらせた。「あんたまで失うわけにはいかなかった。」


カイの息が喉で止まった。


彼の腕は弱々しくも本能的に彼女を抱きしめた。彼女の声には何か冷たいものが背筋を這う感覚があった。


「どういう意味だ…」彼はゆっくり、ほとんど囁くように尋ねた。「あんたまで…?」


彼の視線が部屋を彷徨った。


アイカは答えなかった。


アルニクも。


ローズも。


彼らの顔――その沈黙。


カイの心臓がドキドキと鳴り始めた。


胸が締め付けられ、ゆっくりと実感が忍び寄ってきた。


喉がカラカラになりながら、彼はついに尋ねた――


「マーカスはどこだ…?」


カイ…


アルニクの声はいつもより静かで、ためらうようだった。


「彼は…助からなかった。」


カイは顔を上げ、短く息を吐くような笑いを漏らした。


「は、面白いな…でも、ホントにそんな冗談やめろよ。」


誰も笑わなかった。


ローズとアルニクは立ち尽くし、拳を握りすぎて指の関節が白くなっていた。アイカは顔を拭ったが、新たな涙が止まらなかった。


カイの笑顔が揺らいだ。


「まさか信じろってのか…? なあ、みんな…」


彼の声が震えた。


彼の手はシーツを握り、心臓が肋骨を叩いた。


「なあ…冗談だろって言えよ。」


誰も何も言わなかった。


「本気だよ」とローズがつぶやき、目をそらした。


カイは-sheは彼らを見つめた。彼の心は受け入れを拒否し、話された言葉を処理することを拒んだ。


ゆっくりと、彼はベッドにもたれかかり、頭を枕に沈めた。胸が空っぽに感じ、呼吸がゆっくりになった。


「…そうか。」


アイカが最初に振り返り、袖で顔を拭きながら鼻をすすった。


「カイに少し空間を」とアルニクが重い声でつぶやいた。


ローズは一瞬立ち尽くし、尻尾を一度振ってからようやく振り返り、彼らについて行った。


ドアがスライドして閉まった。


カイは小さな笑い声を上げたが、目が焼けるようだった。


「気をつけろって言ったのに…嘘つき…」


彼の指は毛布を握りしめた。息が不安定になり、涙が顔の横を滑り落ちた。


「これから俺が頑張らないとな…」


彼の声は静かだったが、決意に満ちていた。


「2倍強くならなきゃ。」


ドアの向こうからくぐもった泣き声が聞こえた。


ローズの尻尾が後ろで揺れ、床を見つめながら、いつもより静かな声で言った。


「彼らは親友だった。」


アイカは袖で目を拭き、鼻をすすった。「うん…」


アルニクは鼻で息を吐き、腕を組んだ。彼の表情は硬く、読み取れなかった。


「みんなくそくらえだ…彼が一番辛いはずだ。」


その後、誰も話さなかった。


ドアの向こうから聞こえるカイのくぐもった泣き声だけが響いた。


廊下に足音が響いた。


アンドリュー・ハンダーフォールが近づいてきて、表情は読み取れなかった。彼は彼らの前で立ち止まり、一人一人を見回してから口を開いた。


「ついて来なさい。」


彼の声は落ち着いていて、反論の余地がなかった。


アイカはためらい、医療室のドアを振り返った。ローズの尻尾がピクッと動き、アルニクはゆっくりと頷いた。


一言も発せず、彼らは彼についていった。


歩きながら、アンドリューがしっかりとした揺るぎない口調で話した。


「大切なチームメイトを失って動揺しているのは分かる…でも今は、主要な問題に対処する時だ。」


誰も答えなかった。金属の廊下に足音が響き、緊張が彼らの間に重く漂った。


ブリッジに着くと、巨大なパノラマウィンドウに水星の技術的な輝きが広がっていた。


鋼とネオンの世界、巨大都市が惑星の表面に無限に広がり、すべてのビル、すべての交通手段、すべてのセクターをつなぐエネルギーの回路が脈打っていた。金属とガラスの超高層ビルが空を突き刺し、表面を流れる同期したデータストリームで輝いていた。浮遊する列車や高速輸送機が生き物の動脈のようにつづられていた。


しかし、彼らの注意を引いたのは都市の建築ではなかった。


それはそれを守る艦隊だった。


巨大な戦艦が隊形で浮かび、滑らかな黒い船体には赤い紋章が光っていた。軌道防御ステーションは蓄積されたエネルギーで脈打ち、許可なく通過しようとするものを壊滅させる惑星砲を準備していた。


数十の巡回戦闘機中隊が空を飛び、推進器が青い光の筋を残し、完璧で規律正しい飛行パターンを見せていた。ガンシップは巨大なプラットフォームに停泊し、武器は即時展開の準備ができていた。


都市の境界には、機械化された歩哨がすべてのセクターを巡回し、すべての動きをスキャンしていた。二足歩行の戦闘メックが軍事施設の近くに静かな巨人として立ち、1体で地区全体を破壊する火力を備えていた。自動ドローンが空を飛び回り、不気味な機械的精度でコマンドセンターにデータを送り返していた。


惑星全体が制御、効率、そして揺るぎない軍事的支配力で脈打っていた。


そこを突破する?


それは戦いではない。


自殺行為だ。


「…驚くべきことに」とアルニクがつぶやき、水星の巨大で難攻不落の防御を見つめた。


「当然だ」とアンドリューは腕を組み、表情を読み取れないまま下の要塞都市を見つめた。


彼は振り返り、しっかりとした表情で言った。「みんな…火星は無駄にはならない。ライオネルとの戦いで得た情報は我々の防御をさらに強くした。」


彼はアルニクの肩に手を置いた。その仕草には権威だけでなく、期待の重さがあった。


「聞いてくれ…」


部屋は静まり返った。


「君たちはもっと強くなる必要がある。ずっと強くな。」


アルニクは拳を握りしめた。「どれくらい?」


アンドリューは息を吐き、握りを少し強めた。「最低でも? 君たちの先生たちと同じくらい。」


空気が重くなった。


アイカの肩が落ち、ローズの尻尾が鋭く振られ、アルニクの唇が薄く結ばれた。


そしてその瞬間、彼らの残された希望が消えたように感じた。


「エンジェル・スクワッドであり続けるつもりなら…もっと強くなれ」とアンドリューは続けた。彼の口調は決定的で、揺るぎなかった。「そうでなければ、完全に解散する。」


彼は彼らを見回し、声は落ち着いていたが重かった。


「それが我々のソブリンの最後の命令だった。」


「了解」とカイが部屋に足を引きずりながら入ってきた。


アンドリューは鋭く振り返った。「休むべきだ。」


カイは手を振って、動きは硬かったが目的に満ちていた。「できるだけ早く…タカシマと一緒にラボに入れて。ライオネルの軍を蒸発させる武器を作る。」


拍手が部屋に響いた。


ゆっくりと、意図的な音。


クラウンがいつもの笑みを浮かべて入ってきた。その後ろには他の先生たちが続き、言葉を発せずとも存在感を放っていた。


ヴェインは手袋を調整し、目の前の光景を面白そうに見つめた。


「優雅だ」と彼はつぶやいた。


タカシマは腕を組み、鋭い目で立っていた。


彼の笑みが深まった。


「それだ」と彼は言った。「それが聞きたかった。」


アンドリューは微笑み、部屋を震わせるような大声で叫んだ。


「よし! 始めよう!」


彼はヴェインを指した。「避難民の整理を全て終わらせろ。」


ヴェインは小さく頷き、カフスを調整した。「了解。」


アンドリューは次に振り返った。「クラウン、ミウ、ブリッツ――すぐに新しい訓練コースを準備しろ!」


クラウンはニヤリと笑い、ミウは腕を伸ばして笑い、ブリッツは拳を鳴らした。


「了解!」と彼らは声を揃えた。


最後に、アンドリューはタカシマを見た。


「そしてタカシマ…仕事にかかれ!」


タカシマはニヤリと笑い、すでにラボに向かいながら。「了解!」


エンジェル・スクワッドは肩に重いものを感じながら、きつく抱き合った。


アルニクは一人一人を見て、顎を締めた。「マーカスの戦いを無駄にはしない。」


アイカは目を拭き、静かだがしっかりとした声で言った。「彼が私たちのためにしてくれたことを無駄にはしない。」


ローズの尻尾が鋭く振られた。「その通り。彼がここにいたら、感傷的になってる私たちを笑うわ。」


カイはまだ痛む体を隠しながら、ニヤリと笑った。「じゃあ、彼に見る価値のあるものを見せてやろう。」


彼らは言葉を交わさず、互いを見つめた。


マーカスはいなくなった。でも彼の戦い――彼らの戦い――はまだ終わっていなかった。

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