悪に立ち向かえ!パート3
火星の皇宮にて…
戦争会議室は緊張感に満ちていた。機械の唸り声とちらつくホログラムが、磨き上げられた黒曜石のテーブルに不気味な輝きを投げかけていた。壁には火星の皇帝のシンボルが飾られ、いつも以上に重々しい雰囲気を醸し出していた。外では、戦艦の離陸の遠い轟音が宮殿の基盤を揺らし、時間が刻一刻と過ぎ去っていることを思い出させた。
ミウはタカシマの腕にもたれ、からかうような笑みを浮かべていた。「まるでチームがまた全員揃ったみたいね。」
向かいのアラリックは磁器のカップを手に、ゆっくりと一口飲んだ。その動きは落ち着いていて、外の混乱にも動じていなかった。「確かに。もう20年近くになるな。」
クラウンは椅子にふんぞり返り、足をテーブルに乗せて鼻で笑った。「いつも茶をすすってるな、相変わらず。」
アラリックはクラウンを一瞥しただけだった。「品のない男に理解できるとは思わん。」
クラウンはナイフを指の間でくるくると回し、口の端に笑みを浮かべた。「ほらきた。お前、いつかその高級な葉っぱの水以外で何かすることになるかもな。」
ブリッツは目を丸くした。「いい加減にしろ。もっと大事な問題がある。」
カエルス・レッドスパイアはテーブルの上座に座り、鋭い銀色の視線は揺らがなかった。彼は拳をテーブルに叩きつけたり、命令を吠えたりする必要はなかった――その存在感だけで十分だった。彼が口を開くと、その声は鋼のように部屋を切り裂いた。
「ここは同窓会のために集まったんじゃない。」その口調は確固としており、部屋を貫くように響いた。「状況はさらに悪化している。」
クラウンは身を乗り出し、困惑した表情で言った。「同窓会じゃないのか?」
カエルスはため息をつき、首を振った。
タカシマは眼鏡を調整した。「アレクサンダーがいないから、ちゃんとした同窓会じゃない。」
アンドリューは指でテーブルを軽く叩いた。「なぜ我々が召集された?」
カエルスの鋭い視線が一同をゆっくりと見渡した。「なぜなら、火星は崩壊の危機に瀕しているからだ。」
部屋は静まり返った。
タカシマが珍しく真剣な口調で言った。「我々は1か月間持ちこたえる必要がある。それが避難にかかる時間だ。その後、火星は失われる。」
ミウはタカシマにもたれながら、だるそうに伸びをした。「それだけ?時間稼ぎ?」
カエルスの表情が硬くなった。「ただの時間稼ぎではない。彼らに一歩進むごとに血を流させる。代償を払わせるんだ。」
クラウンはニヤリと笑い、指でテーブルを叩いた。「それなら話が早い。」彼はナイフを一回転させ、テーブルに突き刺した。「ここで我々が動くってわけだな?」
ブリッツは腕を組んだ。「我々を最前線に置きたいんだな。」
カエルスは頷いた。「エンジェル隊と我々の最強の部隊と共に。お前たちはライオネルの精鋭を抑えられる数少ない存在だ。」
「エンジェル隊は優秀だが…せいぜい二流だろ」とクラウンが辛辣に言った。
「だが、彼らは成長する」とカエルスは落ち着いた声で答えた。
「君たちがいれば、何百万人もの避難が可能だ」とアンドリューが付け加えた。
「いいが、火星には1億人以上いたはずだろ?」
「その通りだ。」
「水星がいくつか船を提供してくれた」とカエルスが続けた。「だが、それらは避難専用だ。」
アンドリューは眉をひそめた。「軌道に乗ったら…我々は鴨のようになる。」
「我々の戦艦がそれを防ぐが、確かにその通りだ」とカエルスは認めた。「だから…我々は空間跳躍しなければならない。」
タカシマが拳をテーブルに叩きつけた。「それは不可能だ!それには膨大な魔力が必要だ!」
「ジャンプを10秒間維持しなければならない」と彼は眼鏡を調整しながら続けた。「それだけでも十分難しいのに――」
「だからこそ…」カエルスは彼の視線を捉えた。「火星の魔法石を使わなければならない。」
初めて、アラリックがティーカップを置いた。
「なるほど…それなら可能だ。」
クラウンは背もたれに寄りかかり、ニヤリと笑った。「最高だ!火星を放棄するなら、一番価値のあるものを奪うってわけだな?」
タカシマはため息をついた。「その考えは嫌いだ。」
「私もだ」とカエルスは認めた。「だが、それが唯一の方法だ。」
「つまり…我々の誰かにそれを取りに行ってほしいんだな?」
「そうだ」とカエルスが確認した。「それはシタデルの深部にある。」
タカシマは息を吐いた。「魔法石…火星の核から取り外された瞬間、すべての生命維持機能が即座に停止する。」
カエルスは頷いた。「火星は300年前の赤い惑星に戻る。」
「始めよう。」
彼らは席を立ち、シタデルの奥深くへと進んだ。空気は古代の力で重くなり、彼らが宮殿の最奥の部屋に近づくにつれてその重さが増した。
目の前には巨大な魔法の扉がそびえ立ち、複雑なルーンが刻まれ、かすかにエネルギーで脈打っていた。扉の周りの空気自体が彼らの存在Achievement
System: 存在を感じるように唸っていた。
カエルスが一歩進み、手を上げた。彼の命令に応じて、ルーンが光を放ち、扉が震えながらゆっくりと開き、火星の深部への降下路が現れた。
彼はクラウンに視線を向けた。「その栄誉を君に任せたい。」
クラウンの笑みが広がった。「そのつもりだ。」
数歩後退し、彼は低く身を構え、勢いよく前に飛び出し、地下の金庫へと飛び込んだ。
…
戦場は混沌としていた。爆発が街を切り裂き、敵の爆撃機が上空から破壊を降らせ、瓦礫が飛び散った。煙が立ち込め、壊れた摩天楼のガラスに炎が映っていた。
マルクスはその只中に立ち、トライデントの剣が握りしめた手の中で輝いていた。彼の呼吸は安定し、心は嵐の前の静けさに閉ざされていた。
彼は息を吐いた。「悪魔使い、機械、そして今これか?ライオネルは本気だな。」
頭上で甲高い轟音が響き、爆撃機が低空を飛んでいた。爆弾を落とす準備が整っていた。
マルクスは歯を食いしばった。「俺が見ている限りはダメだ。」
彼は姿勢を整え、筋肉を正確に緊張させた。手首を鋭く振ると、剣を槍のように投げつけた。
巨大な刃が煙を切り裂き、流星のように空を旋回した。鎖のセグメントがガラガラと音を立て、爆撃機の胴体を突き刺した――完璧な一撃だった。
マルクスは鎖を引いた。
航空機は空中でよろめき、エンジンが埋め込まれた武器の重さに引っ張られて停止した。
中のパイロットは反応する間もなく、爆撃機は下の通りへ墜落し、炎の爆発を起こした。
マルクスは戻ってきた武器を空中で受け取り、一回転させて地面に叩きつけた。
マルクスは前進し、刃が混沌を切り裂いた。兵士たちが叫び、機械が爆発し、血が通りを染めた。戦場は容赦なく、破壊の嵐が止まなかった。
変種と魔術師が彼と共闘し、彼らの魔法が戦火に焼かれた街を照らした。しかし、彼らも苦戦していた。悪魔使いはただ強いだけでなく、圧倒的だった。速く、残忍で、止められないように見えた。
マルクスは顎を締めた。どれだけ持ちこたえられる?
彼の頭をかすめてエネルギーの爆発が飛んだ。彼は身をひねり、機械兵を切り裂き、足を踏みしめ、もう一人の敵に武器を突き刺した。
戦場は縮小していた。
味方が次々と倒れていた。
彼の胸に石のような実感が沈んだ――彼らは負けていた。
アーニックの戦場の側は決して楽なものではなかった。
彼の姿はボロボロで、息を荒くしながら立ち上がった。
そして――悪魔使いが前に進み出た。
そびえ立つ姿、燃えるような赤い目が戦火の空の下で輝いていた。その存在感だけでアーニックの背筋に寒気が走った。
暗黒の魔法が彼の周りに脈打ち、しかし本当の危険は彼のオーラではなく――その爪だった。
長く、鋭く、不自然に伸び縮みする爪は、まるで限界がないかのようだった。
アーニックは鋭く息を吐いた。この奴は別格だ。
悪魔が指を動かし、歪んだ笑みを浮かべて突進した。
アーニックは壊れたビルの残骸を突き破り、埃と瓦礫が散乱する中、立ち上がった。体が痛み、息が荒かったが、止まる時間はなかった。
低い笑い声が残骸の中に響いた。
アーニックの目は煙の中を進む姿に釘付けになった。
悪魔使いは背が高く、暗闇の塊に包まれた体をしていた。その爪――長く、ギザギザで、まるで生きている武器のように――燃える空の下で輝き、伸び縮みしていた。赤い目がアーニックに固定され、楽しげに光った。
「まだ立ってるのか?」悪魔の声は滑らかで、ほとんど遊び心に満ちていた。「可愛いな。」
アーニックは肩を動かし、痛みを無視した。「もっとひどい相手と戦ったことがある。」
悪魔はニヤリと笑った。「そうか?」その爪が飛び出した。
アーニックはかろうじてかわし、爪が立っていた地面を紙のように裂いた。
速すぎる。
アーニックは回転し、拳に炎が裂けながら反撃を放った。彼のパンチは命中したが――悪魔は動かなかった。
その笑みが広がった。
「いい一撃だ。」
そして彼は振った。
爪がアーニックの鎧を深く切り裂き、胸に激痛が走った。彼はよろめき、咳き込みながら血が壊れたコンクリートに滴った。
悪魔は首を傾げた。「タフだな。気に入ったよ。」
アーニックは鋭く息を吐き、口から血を拭った。早く終わらせないと。
このままでは持たない。
彼は拳を握り、変種の力が目覚めた。
悪魔の笑みが広がった。「これで話が弾むな。」
悪魔が再び突進し、爪が動きの霞となった。アーニックはかろうじて横に飛び、攻撃が地面に深い溝を刻むのを感じながら風が顔をかすめた。彼は反撃し、拳に炎が爆発し、悪魔の胴体に壊滅的なパンチを放った。
命中し、悪魔を後退させたが――十分ではなかった。彼は笑っていた。
「まだ抑えてるな」と悪魔がからかった。「プライドか?それとも恐怖か?」
アーニックは答えなかった。この怪物と会話するのは間違いだと知っていた。集中する必要があった。
その時――
「司令官!」
アーニックが振り返ると、傷つき疲れ果てた人間の兵士たちが立っていた。彼らの武器はボロボロで、鎧はひび割れ、血にまみれていた。
「我々が彼を食い止める!」一人が叫んだ。
もう一人が進み出た。「司令官はここから脱出する必要がある!あなたは失うには重要すぎる!」
アーニックの目が広がった。彼らは彼のために死ぬつもりだった。
「冗談じゃない!」彼は怒りで鋭く叫んだ。「下がれ!それは命令だ!」
悪魔は笑い、爪から血を舐めた。「ほら、彼らでさえお前が自分たちより価値があると知ってる。」
アーニックは拳を握った。「黙れ。」
「お前は生きられる」と悪魔は滑らかな声で続けた。「彼らが時間を稼いでくれる。自分を犠牲にして何か大きなもののために。兵士ってのはそういうもんだろ?」
その言葉はアーニックの奥深くに刺さったが、彼の表情は揺らがなかった。
「誰も俺のために死なない」と彼は兵士たちの前に立ちはだかった。
「しかし、司令官――」
「それは命令だ!」彼の声は戦場に響き渡り、議論の余地のない権威に満ちていた。
悪魔は笑った。「高潔だな。」その爪が伸び、磨かれた黒曜石のように光った。「それがどれだけうまくいくか見てやろう。」
アーニックは身構えた。
この戦いは終わっていなかった。そして彼は誰も死なせないつもりだった。
残された全てのエネルギーで、アーニックは戦い続けた。
一撃また一撃、火星の廃墟で炎と鋼がぶつかり合った。彼の体は抗議し、筋肉は反応しなくなり、腕と脚には火傷の痛みが走った。しかし、彼は倒れることを拒んだ。まだだ。
そして――最後の攻撃。
アーニックの燃える拳が悪魔の暗黒のエネルギーの盾を焼き尽くし、悪魔は呻き声を上げた。一瞬の完全な静寂――そしてその姿は灰燼に崩れた。
戦いは勝利した。
だが、アーニックは立っているのがやっとだった。
視界がぼやけ、息が荒かった。全身が痛んだ。魔力が尽き、体は傷つき、火傷が腕と脚を焼いた。周囲には残った兵士たちが傷つき、死にゆく者たちの呻き声が空気を満たしていた。
もう…続けられない…
彼の足は崩れ、膝が瓦礫に落ちた。全身が痛みに脈打った。医者が必要だった。今すぐ。
その時――足音。
アーニックは歯を食いしばり、振り返り、掌に炎を灯して近づく者を爆破する準備をした――
そして彼を見た。
マルクス。
「ひどい状態だな、隊長。」
アーニックは息を吐き、安心感が押し寄せた。「ああ、マルクス…お前でよかった。」
マルクスはしゃがみ、アーニックの腕を肩にかけ、体重を支えた。「ほら、俺が支える。」
彼らが進む中、マルクスの鋭い目は戦場を見渡した。それは虐殺だった。
地面は血に濡れ、人間と機械の死体が通りを埋め、戦火が燃え続けた。
「血の海だ」とマルクスがつぶやいた。
アーニックは痛みに顔をしかめ、歩くたびに体が抗議した。「残りの者を…安全な場所に…」
マルクスは足を止めなかった。躊躇もしなかった。
「ダメだ。」彼の声は確固としていた。「お前が優先だ。」
アーニックは顎を締めた。「彼らを死なせない。」
マルクスは歩き続けた。
「それは命令だ」とアーニックが唸った。
だが、マルクスの目を見たとき、彼は冷たいものを感じた。
動じず、動かず。
「ただの兵士だ」とマルクスは即座に言った。「お前を死なせるリスクは冒せない。あの兵士たちはお前ほど多くの人を救えない。」
アーニックはそれが嫌だった。
仮設の医療ベイに戻ると…
「包帯をもっと持ってきて!魔力が足りない!」アイカが仮設の医療ベイの騒音の中で叫んだ。
兵士たちが慌てて彼女の側に駆け寄った。「はい!」
彼女は包帯のロールをやっと受け取り、目の前の負傷した兵士に目を向けた。彼は痛みにうめき、もがきながら、彼女が傷に包帯を巻きつけた。
「死ぬ!お前、俺を殺そうとしてる!」彼が叫んだ。
アイカは息を吐いた。「そんなことない!じっとしてて!」
彼女は最後の包帯を固定し、額の汗を拭った。疲労が押し寄せ、魔力が尽きかけていたが、まだ止まれなかった。
カイが腕を組んでドアを通り抜けてきた。「患者の様子は?」
アイカはマントで手を拭いた。「まだ誰も死んでない。」
カイは頷き、ポケットから小さな輝く結晶を取り出し、彼女に渡した。
「これを食べろ。」
アイカはそれを見て眉をひそめた。「…魔法石?」
「低レベルのものだ」とカイが説明した。「ブーストになるはずだ。」
彼女はそれを口に入れ、すぐに後悔した。顔をしかめながら無理やり噛んだ。「うっ、めっちゃまずい。」
カイはニヤリと笑った。「知ってる。」
アイカが何か言う前に、ドーンという音が部屋に響いた。
ドアが勢いよく開いた。
マルクスが傷ついた鎧で現れ、アーニックを肩に担いでいた。
アイカの目が広がった。「何があったの?!」
マルクスはすぐには答えず、カイと目を合わせた。
「ふむ」とカイがつぶやいた。「驚きだな。」
「話は後だ、治療を」とマルクスが唸った。
アイカはすぐに動き、アーニックを寝かせ、魔法を始めた。彼女の手から柔らかい青い光が脈打ち、彼の重傷を癒し始めた。
アーニックは鋭く息を吐き、痛みが和らいだ。「…ずいぶん楽になった。」
マルクスは後ろに立ち、髪をかき上げた。「それで…ローズはまだ現れてないのか?」
アイカの手が少し止まった。
マルクスの普段の鋭い表情がわずかに柔らかくなった。
「いいえ」とアイカが認めた。
重い沈黙が部屋を満たした。不確実さが彼らを圧迫した。
カイが舌打ちし、突然ドアを開けた。
アイカが顔を上げた。「どこに行くつもり?」
カイは振り返らなかった。
「ローズを探しに。」