地球の支配者は悪魔である!

マーズニアの通り

マーズニアの通りは死んではいなかったが、そうであるも同然だった。ネオンサインの輝きが崩れた建物にちらつき、汚れた道路に砕けた光を投げかけていた。人々は幽霊のよう通りを歩き、疲れ果てた顔はこけ、目は恐怖と空腹で虚ろだった。空気は緊張感で重く、肌にまとわりつき、離れなかった。

カイはローズの横を歩き、手をポケットに突っ込み、武器を脇にしっかりと固定していた。街の重みが彼を押しつぶしていた。静けさは平和ではなかった――息が詰まるようだった。

「この場所、日に日にひどくなってる。」ローズは崩れた建物や路地に積まれた仮設の避難所を眺めながら呟いた。家族たちはちらつく街灯の下で身を寄せ合い、冷たい夜の空気の中でわずかな温もりを求めていた。

カイは鋭く息を吐いた。「ああ… 俺たちは彼らを守るはずだったのに。」

ローズは苛立ちで尾をピクッと動かした。「守るほどの生活でもないね。」

小さな配給所を通り過ぎる時、騒ぎが彼女の注意を引いた。

ボロボロのジャケットを着た男が、食料を配る衛兵に手を伸ばした。「お願いだ、子供たちが二日間何も食べてないんだ――」

衛兵は顔をしかめ、彼を押し返した。「他の奴らと同じように並べ。」

「並んでた！ 配給を早く切り上げたんだ――」

パチン。

平手打ちの音が通りを響き、飢えた群衆の囁きを切り裂いた。男は顔を押さえ、よろめきながら後退したが、反撃しなかった。ただ頭を下げ、屈辱を飲み込んで立ち去った。

ローズは槍を握る手を締めた。金色の目が怒りで光り、前に進もうとしたが、カイが彼女の手首を掴んだ。

「ローズ。」

彼女は彼を振り向き、怒りが表面下で沸騰していた。「これをただ見過ごすつもり？」

カイの表情は読み取れなかった。「全部は直せない。」

彼女は腕を振りほどき、彼を睨んだ。「それ、臆病者の答えだよ。」

カイはため息をつき、鼻の付け根を擦った。「現実だ。」

ローズの尾が鋭くピクッと動き、我慢が脆い小枝のようにはじけた。彼女は踵を返し、衛兵に向かって歩き、槍をすでに手に構えていた。

カイは唸った。「おい、ちょっと…」

衛兵が反応する間もなく、ローズの槍の先が彼の喉元わずか数センチに迫っていた。彼の息が止まり、目は突然の恐怖で大きく見開かれた。

「反撃できる相手を叩いてみろよ。」ローズは刃のように鋭い声で言った。

群衆が静まり返った。

衛兵の手が武器に動きかけたが、ローズは首を傾け、ほとんど遊び心のある笑みを浮かべた。「どうぞ。理由をくれよ。」

衛兵のこめかみに汗が流れた。

カイが前に進み、声を低くした。「ローズ。」

彼女は動かなかった。

衛兵は強く唾を飲み込んだ。「ただ命令に従っただけ…」

「最低な言い訳ね。」ローズは槍を少し近づけ、彼がビクッとするのを見た。「この人たちは全てを失ってるのに、お前はそれを悪化させてる。」

カイは鼻の付け根をつまんだ。「もういいって。」

ローズはもう一瞬衛兵を睨みつけ、槍をクルッと回して肩に担いだ。

カイは首の後ろを擦りながら、唖然とする群衆から離れて歩き出した。「多分、命令に従っただけだろ。」彼は呟いた。

ローズは彼を一瞥した。「それで許されるって？」

カイは首を振った。「いや。でも考えてみろ――金持ちが食料のほとんどを独占してる。もし多すぎる量を配ったら、状況が悪化した時に自分たちに残らないって怖がってるんだ。」

ローズは鼻で笑い、尾を苛立ちでピクッと動かした。「最低だね。」

カイはため息をついた。「ああ… でもそれが人間だ。権力者はまず自分たちが食うことを確保する。他は後回しだ。」

ローズは槍を強く握り、金色の目が苛立ちで暗くなった。「だからあんな奴らが嫌いなんだ。」

カイはわずかに笑ったが、そこにユーモアはなかった。「それなのに、お前はそいつらを守るために戦ってる。」

ローズは舌打ちした。「思い出させないで。」

彼らは壊れた通りを歩き続け、現実の重みが逃れられない力のように彼らを押しつぶした。

ローズの腹が大きく鳴り、緊張した沈黙を破った。

カイは彼女をチラリと見て、口元に面白がる笑みが浮かんだ。「おっと… 誰かお腹空いてるみたいだな。」

ローズは耳をピクピク動かし、苛立ちで彼を睨んだ。「黙れよ。」

カイは肩をすくめ、腕を頭の後ろで伸ばした。「じゃ、昼飯はいらないってことか。」

ローズは即座に彼の腕を叩き始めた。

「うわっ――痛っ――やめろ！」カイは身をよじって防御した。

「撤回しろ！」ローズはふんっと鼻を鳴らした。

「わかった、わかった！」カイはメガネを直しながら唸った。「何食いたい？」

ローズは通りを指した。

カイは彼女の視線を追った――ボロボロのバーだった。

彼はまばたきした。「バー？！」

「そう！」ローズはニヤリと笑った。「そこはいつも最高の食べ物があるんだから。」

彼女の目は輝き、興奮でその場でクルッと回った。「行こうよ！」彼女は彼の手首を掴んで引っ張った。

「うわっ――引っ張るなよ！」

バーは粗野だが温かみのある雰囲気で、任務を離れた兵士や労働者が外の厳しい現実から束の間の休息を取っていた。焼き肉とスパイスの効いたドリンクの香りが空気を満たし、ローズの尾が期待でピクピク動いた。

屈強なバーテンダーが彼らが入るとニヤリと笑った。「さて、お二人の兵士さん、何がいい？ 君たちには全部半額だよ！」

ローズの耳がピクッと立った。「おっ、最高の言葉！」

カイは腕を組んだ。「それ、悪用するなよ。」

「…絶対しないよ。」彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

彼女はカウンターに寄りかかり、尾を嬉しそうに振った。「チキンと魚、たっぷり！」

カイは彼女の興奮を眺めながらため息をついた。やっぱりデミキャットは普通の猫と同じ欲があるんだな…

「俺は腹減ってないから、払うだけだ。」カイは付け加えた。

ローズは拳を振り上げた。「やった！ それとビールもたっぷり！」

カイは彼女に頭をパッと向けた。「ローズ、19歳だろ！」

彼女は鼻で笑った。「もうすぐ20歳！」

「それでも――」

「それにさ。」彼女は舌を出してニヤリと笑った。「火星の法定年齢はもっと低いよ。」

カイはこめかみを擦りながら唸った。「マジか…」

彼女の食事がすぐに運ばれ、彼女は野生動物のようにつけ込んだ。バーテンダーはその光景を見て笑い、カイはただメガネを直しながら見つめた。「ちょっと品を持てよ。」

ローズは手を振って追い払い、食べるのに夢中だった。

そしてビールが来た。

1杯。2杯。そしてまた1杯。

しばらくすると、彼女の耳と尾が少し垂れ、酔った間抜けな笑みが顔に広がった。

カイはため息をついた。「ローズ… 酔ってるぞ。」

「ヒック――違うよ…」彼女は呂律が回らず言った。「あ、うそつき…」

カイはため息をつき、カウンターにいくらかクレジットを放り、立ち上がった。「もう終わりだ。行くぞ。」

ローズは立ち上がろうとしたが、すぐに椅子に倒れ込んだ。

カイは顔を覆った。「マジかよ。」

彼はしゃがみ、彼女を背中に担ぎ、彼女の槍も持った。「うわ、重いな。」

「デブって言うなよ！」彼女は彼の肩にもたれながら呟いた。

カイは笑った。「言ってないって。」

彼女の腕が彼の肩にだらりと垂れ、街を横切って運ぶ間、彼女は耳元で囁いた。

「キスしたい？」

カイは固まり、顔が真っ赤になった。「絶対嫌だ！」

「えー、なんで？」彼女は不満そうに言った。「舌まで入れるよ。」

カイはつまずきそうになった。「酔ってるやつを利用する気はない！」彼はメガネを押し上げながらキレた。

彼女はまた近づき、耳に温かい息がかかった。「じゃ、シラフの時なら…」

カイは唸った。「ローズ、そうやってからかうな！ マジで乗ってくる奴もいるぞ。」

彼女はクスクス笑った。「からかうの楽しいんだから。」

カイはブツブツ呟きながら、基地まで彼女を運んだ。

カイがローズの部屋に入ると、彼女をそっとベッドに下ろし、肩に担いだ槍の重さを調整しながらため息をついた。

「じゃ、寝ろよ。絶対二日酔いになるから… 今のうちに『だから言っただろ』って言っとく。」

彼は去ろうとした――が、袖を引っ張られた。

カイは凍りついた。「え… ローズ？」彼は振り返った。「今度は何？」

ローズはまだ半分酔っていて、いつもより柔らかい声で呟いた。「ちょっと… 寝るまでいてくれる…？」

カイは口を開き、反射的に「ダメ」と言いそうになった。でも、彼女が袖を掴む様子、普段の燃えるようなエネルギーが薄れている姿に、彼はため息をついて負けた。

「わかった…」彼はベッドの横に椅子を引き、メガネを直した。「寝るまでな。」

ローズは満足そうに唸り、わずかに動いた。そして――彼女の手が彼の手を握った。

カイは固まった。

「離してもいいんだぞ。」彼は呟いた。

「嫌。」

「……わかった。」

数分が過ぎ、さらに時間が経った。彼女の呼吸がゆっくりになり、握りが少し緩んだ。長い一日で疲れ果てたカイは、椅子に凭れて眠りに落ちた。

やがて朝が来た。

「うわあああ！！！」

何か――枕――がカイの顔に直撃し、彼は飛び起きた。

「この変態！」ローズの叫び声が部屋に響いた。

カイはパニックで起き上がった。「何？！」

ローズは非難するように彼を指さした。「私の部屋で寝た！」

カイは額を擦り、半分寝ぼけていた。「お前がマジでいてくれって言ったんだろ！」

「嘘つき！」

彼が反論する前に、ローズの表情が歪んだ。彼女は腹を押さえ、顔が青ざめた。

カイはまばたきした。「やばい。」

ローズが振り返った。

そして――

彼女はバスルームに駆け込んだ。

激しい嘔吐の音が部屋に響いた。

カイは首を振ってため息をついた。「ほら、言った通り。」

また嘔吐の音。

カイはわずかに笑った。「まだビールが最高だったと思う？」

バスルームからくぐもった唸り声が聞こえた。「黙れ…」

カイは笑い、立ち上がった。「よし、水取ってくる。」

ローズは唸った。「バケツも…」

カイは首を鳴らし、ドアに向かった。「了解。」

出て行く際、彼は独り言を呟いた。「これ、絶対からかわれるな。」