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その舞台に、すべてを賭けろ

廊下が再び静かになった。


一瞬、5番目の出場者は口を少し開けて彼を見つめた。それから笑った——緊張した、大きすぎる、ぎこちない笑い——そして何も言わず、反対方向に急いで歩き去った。


マルクスは瞬いた。


それから首を振って歩き続けた。


何だったのか分からなかったが、気にする時間はなかった。


彼は廊下の端にたどり着いた。カーテンの縁が目の前にそびえ、縫い目から明るいステージの光が漏れていた。


前の出場者の拍手が消えた。


彼は位置についた。


カーテンの後ろの背の高い影、ヴァイオリンを脇に。


6フィートのマルクスはすでに目立っていたが、ステージの光の下では——全く別物になるだろう。


目を閉じた。


息を吸った。


そして待った。


その時——


スピーカーがザザッと鳴り、司会者の声が劇場中に響いた:


「ご列席の皆様、今晩の最後の出場者をどうぞお迎えください——マルクス・セイリュウ・セントリョン!」


ステージ上——


マルクスはヴァイオリンが自分の延長であるかのように動いた。弓は弦を軽やかに滑り、尻尾がリズムに合わせて軽く揺れた。音は周囲を満たし——大きくなく、強制的でもなく、ただ満ちていた。完全だった。


観客席——


アルニクは膝に肘をついて身を乗り出した。「これだ」と彼は息をひそめて言った。


ローズは短く頷き、口の端に笑みが浮かんだ。「落ち着けよ。大丈夫だ。」


「分かってるだろ」とアルニクは答えた。口調は落ち着いて、確信していた。


彼女の笑みがより本物のものに変わった。「ああ、だな。」


カイの目はすべての動きを追った。メガネを直したが、すぐには話さなかった。


それから、静かに、「すべての音が正確だ。」


アイカさえも身を乗り出し、顎を手で支え、緑の目がステージに集中していた。


「……うん」と彼女は言った。「これは起きてる価値あるね。」


テンポが上がった。マルクスの指は速く、正確に動いた。音楽は鋭く、クリアに高まった。注目を求めるものではなかった——すでに注目されていた。


「誰だ、彼?」と2列目から誰かが囁いた。


「自然に弾いてる」と返事が来た。


マルクスの真紅の目は弦から離れなかった。弓が最後の音を静かな力で押し出し、決着をつけた。


それから——


静寂。


動きなし。音なし。


ただ最後の音が空中に漂っていた。


1秒が過ぎた。


そしてもう1秒。


それから——


拍手。


大きく、だが乱雑ではない。急いでもいない。


急速に、強く、確実に広がった。部屋の全員が今見たものを正確に理解したときの拍手。


マルクスはヴァイオリンを下げた。肩が一度上下した。真紅の目は部屋を見渡した——称賛を求めず、ただ見ていた。


アルニクはすでに立ち上がっていた。「これだ」と彼は今度は大きく言った。


ローズは手を振って彼を座らせ、笑いながら。「やったな、マルクス!」


カイは落ち着いて拍手した。「悪くない」と、まるでそれが世界で一番当たり前のことのように言った。


アイカはゆっくり拍手したが、彼から目を離さなかった。「素晴らしい」と彼女は言った。


楽屋——


5番目の出場者は背を向けた。顎が締まり、腕を組んでいた。


何も言わなかった。


ただ影に滑り込み、戻ってこなかった。


カーテンの近く——


さっきの少女が静かに立ち、ヴァイオリンを手にしていた。


声は小さく。「彼、めっちゃ上手」と囁いた。


マルクスはシンプルにお辞儀をした。


観客の音は止まらなかった。


そして初めて、彼は緊張を考えていなかった。


考える必要がなかった。


すべてがその通りに進んだ。


これはただのパフォーマンスではなかった。


それは証明だった。

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