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二つの変異!

ドンッ!


重い一撃がアーニクの肋骨に叩き込まれた。彼はうめき声を上げながら二歩後退し、ブーツが滑らかな訓練用フロアを擦った。


痛みが脇腹に広がる。骨は折れていないが、それに近かった。


彼は鋭く息を吐く。顎から汗が滴り、視界を覆うきつく結ばれた黒い布に染み込んでいった。


見えるのは闇だけ。


響くのは機械の唸りだけ。


そして、声。


「聞け、アーニク!」ヴェインの声が訓練室に鋭く響き渡る。「お前の目は欺く!音を信じろ――空気の揺れを感じろ!左だ!」


バキッ!


アーニクは考えるより先に動いた。青く光る拳が冷たい金属にぶつかる。ドロイドの腕は関節から砕け、火花を散らして全体が床に崩れ落ちた。


「下!」


ブォン!


彼は頭を低くした。刃が空気を裂いて、髪の毛をかすめた。


踵を軸に身体を回転させ、拳を上向きの弧で振り上げ――


ドガン!


拳がドロイドのコアに命中した。青いエネルギーが手から迸り、金属を砕き、内部のギアが破片のように飛び散る。ドロイドは崩れた。


だが、さらに現れる。


床を通じて振動が伝わる――機械の足音のリズム、空気に満ちるエネルギーの脈動、接近する四肢による微かな風の変化。


彼は動いた。


ガンッ! 拳が別のドロイドの側面に命中。


ウィィィン! 背後でサーボの低い駆動音が唸る。


ドンッ! 肘が振り返り、攻撃前の顔面プレートを砕いた。


訓練室の端では、ヴェインが優雅に彫られた椅子に座り、指先で磁器のティーカップをそっと支えていた。その隣には、常に無表情なルミスが影のように立っていた――沈黙のまま、まばたきひとつせず。


「成長していますな、旦那様」ルミスが言った。「型は荒いですが…効果的です。」


ヴェインの唇がわずかに笑みに歪んだ。「制御できぬ力は弱点にしかならん、ルミス。だが、奴は他より吸収が早い。」


そして、より強く叫ぶ。「右だ!」


ガンッ!


アーニクは回転し、光る拳がドロイドの胸を貫いた。火花が散り、ドロイドは崩れ落ちた。


彼の呼吸は乱れ、腕は痛み、筋肉は震えていた。


だが彼は立っていた。


「終わらせろ!」


アーニクが咆哮した。


ガンッ! ガシャッ! メキッ!


怒涛の連撃が炸裂する――ひとつひとつが速く、重く。低く身を屈めて膝で一体の顎を砕き、回転肘打ちで別の首を飛ばす。最後の一体が突進――


彼はその腕を途中で掴み、肘で砕き、床に叩きつけた。


ドロイドが火花を散らし――沈黙した。


静寂が訪れる。


アーニクは砕けた機械の残骸の中に立っていた。胸が上下し、拳はまだ光っていた。身体は痛みにうずいていたが、彼は倒れなかった。


遠くで、ヴェインがティーカップをソーサーに「カチ」と音を立てて戻した。


ルミスが口を開いた。「成長しています。三日前とは、まるで別人です。」


ヴェインはゆっくり頷き、鋭い眼差しでアーニクを見つめた。「確かに強くなった。だがまだ粗削りだ。動きは本能――痛みによって学んだだけ。型も美しさもない。」


アーニクは目隠しを外し、まぶしい光に目を細める。髪が汗で顔に張り付いていた。


「やったぞ…」彼は息を切らしながら拳を掲げる。「次は何だ? 軍隊か? 精鋭部隊か?」


ヴェインは気だるげに背もたれに寄りかかる。「いや」彼は答えた。「もっと…個人的なものだ。」


彼は隣を指差した。


アーニクが目を細める。「…執事ってことか?」


ルミスが静かに一歩前に出る。「お手合わせ、光栄です。」


ヴェインがくすりと笑う。「壊すなよ、ルミス。」


「承知いたしました、旦那様。」


ルミスは手首を返しながら袖をまくる。皮膚の下には淡い紅の線が浮かび上がり、脈打つように脈動していた――まるでマグマのように。


アーニクの目が細くなる。拳に再び青い光が灯る。


「よし。“執事”の力、見せてもらおうか。」


彼は突進した――


スパッ!


青い残像が空を裂く。


ドゴッ!


だがルミスはただ身体を傾け、二本の指でその拳をはじいた。


「単純だな」彼は静かに言う。


アーニクの足が床を滑り、続けざまに回し蹴りを放つ――


ドスッ!


ルミスはその足を途中で捕え、手のひらで太ももを打ち下ろした。


「速さだけでは通用しない。」


アーニクは唸り声を上げながら、拳を雨のように放つ――


バン! バン! バン!


だが、すべてがあっさりといなされた。ルミスはまるで影のように攻撃の波をかわし続けた。受け流し、回避し、軌道を変える。


一度たりともリズムを乱すことはなかった。


「それで終わりか?」ルミスが冷たく尋ねる。


「まだ始まったばかりだ!」


アーニクは叫び、再び突進。ルミスの肩に一発を叩き込んだ。衝撃で彼は半歩後退した。


ルミスの目が細くなる。笑みが消えた。


椅子に座ったまま、ヴェインがわずかに身を乗り出した。「…適応しているな。」


だが次の瞬間――


ドンッ!


ルミスの掌底がアーニクの腹にめり込む。派手さはない。光もない。


だが、アーニクは吹き飛ばされた。


ガキィン! 床を滑り、一膝を強く打ちつけながら喘ぐ。


「集中を切らすな」ルミスは袖口の埃を払うような仕草をした。


アーニクは歯を食いしばる。拳が再び光る。


すると――


その光が脈打った。


光がねじれ、変化する。


青から――橙へ。


拳から炎が踊り出す。


「…なんだと?」ルミスが低くつぶやく。目が細くなる。


部屋の温度が一気に上がる。


アーニクが咆哮し、炎を引きながら突進した。


ルミスが腕を上げる――ドガァン! 衝撃で彼の足元に亀裂が走る。


ヴェインは立ち上がり、目を細めた。「興味深い…」


アーニクは止まらない。


ゴォッ!


炎をまとったアッパーカットがルミスの防御を打ち破り、肋骨に命中。ドガン!


ルミスは後退し、踵が床に痕を残す。


荒い呼吸の中、アーニクは堂々と立ち、腕には炎が揺れていた。「終わりだ。」


ルミスは息を吐き、赤い血管のような光がさらに輝く。「まだだ…若きハンダーフォールよ。」


彼の構えが変わる。


だが――


「やめろ、ルミス!」ヴェインの声が鋭く響く。


ルミスは即座に静止した。彼の気配は風の中の煙のように消えた。


袖を直しながら、彼は低くつぶやいた。「…二つの変異を同時に…?理論を超えている。」


ヴェインがひび割れた床を歩き、片膝をつき、肩で息をするアーニクの前で止まる。


彼は軽くかがみ、落ち着いたが威厳ある声で言った。


「不可能とは言わなかった。」


アーニクの目をまっすぐ見つめる。


「お前は“最初のミュータント”の末裔だ。始まりの者。世界の法則を塗り替えた力の系譜。だからこそ、お前には複数の変異を扱うことができる。」


彼は立ち上がる。


「…それは、お前の血に刻まれているのだ。」



読者の皆さんへ、

心からの感謝を――

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます!

これからも応援よろしくお願いします!

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