×6
砂ばかりだ…
「ダンジョンなのに砂漠地帯があるとは…」
「面白いでしょ」
やっと明るい場所に出たと思えばひたすら砂、砂、砂ばかりだ。植物の一切ない、歩いても歩いても砂ばかり
「そう言えばカオリン、キャミソールワンピースじゃないんですね今日は」
「まあね、なんせこの先がこの先だから」
前日とは違って、カオリンはベージュのブラトップを着ていた。私は相変わらずこんな金メッキの鎧だけど……
「でもこういう場所は気をつけた方がいいよなんせ…」
「カオリン?」
軽かった足取りが急にピタっと止まった。
モンスターか?人か?いや、周りを見ても何もいないみたいだ
むぐっ…!
「しーっ」
彼女はダイナマイトを手に取ると、前方へぶん投げた。そこは何も無い場所
…に思えたが
ダイナマイトの爆破と共に砂の中から何かが一斉に飛び出した。ホオジロザメに似た何かが三メートル近く
「あれは!?」
「地中ザメ、地面に隠れて獲物を下から襲ってくるやつだよ」
「え?てことは」
私は嫌な予感がして、その場から数歩動いてみた。その瞬間、目の前を身長百六センチはある私の二倍ぐらいあるサメが飛び出したのだった
「ひゃぁ…!!一旦引き返しましょうよ!ここは危険すぎますって!」
「目的地に着くためにはここを抜けないとダメなんだって!それに引き返しても一緒だよ」
「うっ…」
じゃあセーブポイントに戻るか?いや、カオリンをほっといて私だけ戻ったらマジで嫌われてしまう。それだけは
「構えて!」
「は、はい!」
ええい、こうなったら戦うしかない!こっちには銃だって中華包丁だってあるんだから!
「来た!!」
カオリンはデザートイーグルを目の前に向けて発砲した。しかし、サメはまた地に潜ってしまった
「エマくん、後ろ!撃って!」
「え…は、はい!!」
震える手で私もなんとかサメに向けて発砲してみる。早い、サメの野郎かなり素早い
「…大丈夫、私の言う通りにしてくれれば」
「ふぇぇ…」
そうは言われても心臓がはち切れそうだし、
身体は汗びっちょりだし、何より暑いし
「お辞儀!頭下げて!」
「はい…ぃ!」
「体育座りして!」
「は、はい!」
「前転!マット運動の転がるやつして!」
「はい…?」
…何か変なような気がしてきた。確かにサメは避けられてはいるけど、これが指示なんだろうか
「砂をベットだと思って空を見るようにごろんして!!」
「はい!」
「片足あげて!」
「はい!」
「私とハグして!」
「はい!」
言われた通りにカオリンを抱き締めると、頭を殴られてしまった
「バカ!冗談をほんとにやるやつがいるか!」
冗談だったんかい…こんな時にやめてほしい
「おっと!危ない!」
カオリンは一匹のサメを斬り落とした、苦しんだのち、サメは消えた
「やっと一匹…」
「道のりは長い…ですね!」
「だね…てか!前!」
しまった!サメが私に襲いかかって…おわった?
ばんっ
終わってない!当たった!?当たったよ!
私の弾が!!
「はしゃがない!もう一発!」
「あ、はい!」
私は悶え苦しんでるサメの灰色の腹にもう一発、弾丸をお見舞いしてやった。そうして、
一匹のサメは消えた
「やるじゃん!」
カオリンは私の背中を強く叩いた
「さてと…そろそろまとめて倒しちゃおっかな」
「まとめて倒せるんですか!?」
「うん」
「なら早くそれを言って下さいよ〜」
「ごめんごめん、ピンチな感じになりたくって…いい練習にはなったでしょ」
練習どころか死にかけてるんですが…
「よっと」
ざしゅ
「え…えぇえ!?」
「なによ、指を一本切り落としたぐらいで大袈裟なんだから」
カオリンは切った右手の親指をひょいっと拾うと、後ろにぶん投げた
「んでさ、エマくん背中貸して」
「え?いいですけど」
「そんじゃ、遠慮なく〜」
そう言うと公園のベンチを行儀悪く登るみたいにカオリンは私の背中をひょいひょい登った。そして私の肩を利用して…大
じゃ〜んぷっ!!!
と、飛んだ!?人ってあんな高さまで飛べるのかよ!?軽く二メートルはあるぞ
ていうか
ていうか
あんたって人はこんな時に
なんでスカートじゃ無くてデニムなんか履いてるんだよぉ〜!!
どっっかあぁああぁあぁあん!!!!
血の臭いに釣られて、飛び出したサメごと
手榴弾でカオリンは爆散した
落ちてくる、砂、口に入る砂!
くそっ!最悪だぜ!
しばらくして、私の周りに落ちてくるサメ
すぐに消えてしまったサメよ、相手が悪かったな手を合わせてやろうせめて
「どう?見事だったでしょ」
「えぇ、見事でしたよ!」
「どうしたの〜そんな怖い顔しちゃって」
「うるさい!」
砂を吐き出して、私は先に進んだ
目的地はまだ先、今は砂ばかりだ