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その昔、まだ私が幼児だった頃はキャミソールを下着としか覚えておらず、キャミソールと聞くたびに「えっ!なの!だめ!」と言っていたそうだ。逆にワンピースはお出かけ用のお洋服としか覚えておらず、母親がワンピースを着てる姿を見る度に「おえかけ!」と騒いだそうだ


その頃の私がキャミソールワンピースを見たら一体どんな事を言うのだろう。今、目の前ではしゃいでる女性が今まさにそれを着ているのだけれど


「なんでキャミソールワンピース?さすがに動きにくくないですか?」

「だってこれが着たい気分なんだもん」


着るのは勝手だが、腰に中華包丁を携えるのはやめてほしい。ミスマッチだし


「そう言えばエマくんってモンスターを殺したことは?」

「んー」


そう言えばここに来てからモンスターを倒したことまだ無かった。そもそも人の生き死にから逃げ回ってばかりだったからな


「まだ無いですね」

「そっかぁ。練習にちょうどいいのがいればいいんだけどね」

「ですねぇ」


街と違って今歩いているここは薄暗い、ていうか街がなぜあんなに太陽も出てるわけじゃないのに何故明るかったのだろう。分からない事が多すぎる、多すぎてその重さで肩がこってしまいそうだ


…不意打ちにはもってこいの場所じゃないか

まあ、だからと言って私レベルじゃ対処は出来ないんだけどさ


「リラックスしてなよ〜このカオリンちゃんが守ってあげるから〜」

「でも…」


性別が、若さが、私のモヤモヤをますますこじらせる。わかっている、本当は女の子に守られるんじゃなくて守ってあげなきゃダメだってことを。でも、でも、銃があっても鎧があっても決意があっても…どうにもならないものはどうにもならないぜ自分


どすんっ


「あ、空から何か降ってきたみたいだよエマくん」

「ちょっと…近づくのは危険ですって!爆弾かもしれないんですよ!」

「そしたら余計うれしい〜」


カオリンはスキップしながら何かに近づいていった。私も慌てて後を追った


しかし、何かの正体は爆弾なんてもんでは無かった


「あ、人間か」

「ひぃっ…!」


私たちが見たそれは白目を剥いている紛れもない人間ひとつ


待てよ…前にこんな状況があった気がする。

私は恐る恐る前を見た


そこにはゴツゴツとした岩肌の恐竜、ティラノサウルスに似た何かが立っていた


「き、恐竜…!」

「恐竜?あ、もしかしてハイドラーのこと?」


どうしよう…足が筋肉が…かたまったまま…こきゅう…みだれて…


「どうしたの?行かないの?」

「…ぁあっの」


私は首を横に振って答えた


「もしかして…あれが怖い?」

「…」

「うなずくってことはそっか。じゃあ、お姉ちゃんにまかせなさい!」


軽く私の肩を叩くと、カオリンはハイドラーとやらのとこへ行ってしまった


「動いちゃだめだよ〜そこで待ってなさいね」


手には手榴弾が握られていた


だめだ…落ちつけわたし…まずは呼吸を…ゆっくりと…


爆裂音!!!


「な、なんだ!?」


音のした方を目をぱちぱちさせながら、見た。そこには白い煙が漂っているばかり


そして、煙が消えぬ内にまた爆音がした


い、いる!ていうか手榴弾ごと自身を吹き飛ばしながらダメージを与えてる!?


ハイドラーにとってそれは正に悪夢であった

跡形も無く潰してもご自慢の尾で弾き飛ばしても数秒後には目の前にいるのだから。しかも、手には数秒前と変わらない量の手榴弾を持っている


ごがぁぁぁあぁぁあぁぁあっ!!!


雄叫びを上げる。それでも攻撃は止まない

それどころか激しさを増しているようだ


ていうか私も応戦しないと!銃を…銃を…


……


だめだ!竦んで撃てやしない!


「だめだって〜そんなんじゃ足りないんだよ。

もっと〜殺意を込めてごらんあはは!」



ぎらぁあぁあぁああぁああぁあっ!!!!


それは大地が震えるような叫びだった。足を広げて風と立ち向かうように私も両足で踏ん張らなければならないほど


「おまけにもう一発!!!」


節分の豆まきみたいに撒かれた手榴弾は全て

ハイドラーの頭上で爆破した


そして、ハイドラーは緑色の血を身体中から垂れながらしたまま、逃走したのだった


「ね?簡単だったでしょ?」

目を弓みたいにして笑いながら、カオリンは私の目の前で言った


「でも逃がしちゃいましたよ」

「いいのいいの〜どうせ復活するんだから」


ところがハイドラーはそうもいかなかった


ハイドラーを追ってみると、突如横から蹴りが炸裂し、ハイドラーを地に倒したのだった


そうして、倒れたハイドラーに水筒らしき何かを向けると、そいつは呟いた


「確保」と


ハイドラーは水筒の中に吸い込まれてしまった


「つまんないことするね〜復活すればまた遊べるのに」


カオリンはひどく憎たらしげに言った


「これが正義のやり方だ。じゃあな」と

そいつは吐いて、どこかへ去った



「うわぁあぁあぁぁんっ!!!」

「わ!どうしたいきなり泣き出して!?」


私は久しぶりに女の子の前で泣いた。慰めてほしいとか思うより先に








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