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……い


…おい


「叶和野!」


びくっ!


目が覚めたら私は教室で授業を受けていた


「は、はい!先生なんでしょうか!」

「堂々と寝るな!何考えてんだ」

「あ、いや、死について考えてまして…」


ぽかっ


「お前、やっぱりどうかしてるよ。トイレ行って顔洗ってこい!」

「ひゃい…」


周りの生徒がくすくす私のことを笑った


━━━━━━━━━━━━━━━


葬儀場に知らない誰かの名前が書かれた看板が立っている


歩行者用信号の足元に花と缶コーヒーが置かれている


駅のホームでは駅員が退屈そうに

「危ないから」とマイクで呼びかけている


「ただいま〜」

「おかえりなさい、冷蔵庫にジュースがあるわよ」


リビングでは母が洗濯物を畳んでいた。

つけっぱなしのテレビから今日誰かが死んだことが冷たく告られていた


「うげっ…このジュースまっず!吐いちゃったよ」


新発売のジュースはとてもまずかった。まずすぎて、シンクに吐いてしまった


前に聞いた話だが私が生まれてすぐの時、真っ先に母の手を掴んだらしい。そうして、いつの間にか息をしてる、いつの間にかこの足で歩いている。勉強しないとお金が稼げなくて住む所も失って病気になって死んでしまうからそんな何となくの理由で高校まで進学した


人は死にたくない


死にたくないから動き続けている


それがこの世界の約束ごと


だからあんな事はありえない筈だ。

本当にありえない。死んだ人間が生きかえる?生き返るから死んでも平気?


いやいや、そんなゲームじゃないんだから


まさかね…

……


もう一度


確かめてみるか


「母よちょっと出かけてきますね」

「あら?昨日も今日も?また深夜に帰ってくるとかはやめなさいね。睡眠不足になっちゃうから」

「わかってるよ〜」


スーツケースを手に私はもう一度あのダンジョンへと向かったのだった


※スーツケースは特殊な構造で出来ており鎧やら武器やらも何故か入る。仕組みは不明


━━━━━━━━━━━━━━━


相も変わらず殺伐としてるな


人は皆、血走った目で武器ばかり構えて今にも誰かを殺したがっているし、天井には見たことない鳥が旋回し続けてるし


さて…確かめるにはどうしたらいいのかな


「みーつけたー!」


不意に誰かが私に抱きついた。思わず、私は距離を取ってしまった


「だ、だ、誰ですか!?いきなり!」

「んー?そんなびっくりしなくてもー」


その姿には見覚えがあった。昨日、私と一緒に死んだはずのあの人ではないか。あの時は混乱していて気づなかったが、ぱっちりとした目にふくよかな胸、割と美人かもしれない


「なんで体操着?!」

「あ、これ?動きやすいし可愛いかなって」


女の人は人差し指を頬につけてえへへと笑ってみせた


「ってそんなことより聞きたい事があるんですよ!!」

「なーに?」

「私たち…死にましたよね?」



私はずっと言いたかったことをぶつけた

すると、女の人は口を開けて笑いながら答えた


「うん、死んだよ。でも生き返った」

「それが分からないんですよ…なぜ死んだのに

生き返ってるんですか」

「だって、六秒経ったから」

「へ?」

「実際に見せてみるね」


すると、女の人は手に軍用自動拳銃を持って

頭の左横に突きつけた


ばんっ


銃弾は解放されるや脳内を一直線に走り去って、反対側から抜けていった


そうして、女の人は消えた


「だからそうやって簡単に命を…」

「はい、六秒経った〜」


消えたはずの女の人は私の頬を人差し指でつついた。それで思い出したけど、昨日お風呂入り忘れたっけ。ヤバい気づかれないかな


「ね?生き返ったでしょ」

「ま、まあ…」


後ろで手を組んでけらけら笑ってもまだ私は納得していない。むしろ余計に信じられなくなった


「面白いのはね…こうっ!」

「え?!」


女の人は近くを走っていたネズミらしき何かを撃ち抜いた。もちろん一発でネズミは死んだ…はずなのだが


「一分数えてあっちを見てみると…ね」

「うわっ!」


なんと!死んだネズミは元気に地面を駆けずり回っていた


「じゃあいつまで経っても凶悪なモンスターが倒されないのでは?」

「それがまたここの面白いとこだよ。残念なことにしばらくしたらなーんかモンスターはいなくなっちゃってるんだけどね」

「はぁ」

「そんな顔してないでほ〜らっ」


私に投げてきたのはさっきの拳銃だった。

おもちゃじゃない、ずっしり重くて持ち手が少し汚れてる拳銃


「あげるよそれ、確かトカレフとか言ったかな」

「いやいや、私、銃なんて撃った事無いですよ…困ります」

「まあまあ」


「これから私に着いてくるんだからいざとなったら銃ぐらい撃てないと…ね」

「え?」


またも女の人はけらけら笑った。しかも、腕を背中側で組んで片足を上げながらだ


かわいい

不覚にも私はそう思ってしまった


「とにかく責任は取ってもらうからね。あんなにかっこいい死に方したんだから。私が満足するまで一緒に来てもらうわよ」

「は?」


待て、待て、待て!どうしていつの間にかこの人と一緒に旅することになってる!?いや、確かにかわいいし強そうだけどこの人とは一緒にいたらヤバい、ヤバい気がする


「そうだ、まだ私の名前を言ってなかったっけ」


その時、頬を叩くような風が吹いた


「私の名前はカオリン、あなたは?」

「とわ…いや…エマ…エマです」

「トワイライトエマくんね。長いからエマくんって呼ぶね」

「エマ…くん?」

「そう、男の子だからエマくん。私のことは

カオリでもカオリンでもカオちゃんでも好きなように呼んでくれてかまわないよ」


か、カオちゃん…?これは願望なのだろうか?それとも遠回しの拒絶なのだろうか?分からない、この彼女の笑顔を見ていると意図がわからない、ただわからないのだ


「あ、そうそう」


「生き返るからって簡単に死んじゃダメ!私はともかく生き返った時にどこに現れるのかわかんないんだからね」

「それは…私からなるべく離れたくないってことですか?」

「うっ……」


カオリンはぷいっと顔を逸らして、手を身体の前で組んだ

「そういうかわいくないこと言わないの!!

ほら先、行っちゃうからね」


「ああ、待ってくださいよ」



これが私たちの狂った生活のはじまりである













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