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異人街文字狩り本舗  作者: みなとたぬき
第二部 一章
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「ここ最近元気なくない? 寝不足?」

午前中の授業を終えて、昼休み。

弁当に加えて大きなおにぎり三つを平らげた後、眠たそうに机に突っ伏すダンを、カミュランや他の同級生たちが心配そうに覗き込む。

「大丈夫、大丈夫……。ちょっと、わんぱくなのが朝晩大騒ぎで……」

カミュランが、ダンの上着についた白い毛を摘む。

「……犬でも飼ったの?」

朝早すぎる時間に起こされる以外にも、周囲に人の気配が無くなると、アオは外に飛び出そうとしてくるので油断がならない。

アオなりに『人に見られないように』タイミングは図っているようだが、トイレの中や移動教室に向かう最中、部活後に残って一人練習している最中にも出てこようとする。互いの認識がズレているのは明白だった。

帰宅してから、母が帰ってくるまでは家の中で好きにさせているが、初日からテレビやスマホに興味津々で、特に動物番組やグルメ番組にのめり込んでいる。

「ダン! 犬がおる!!!」

「いや、お前も見た目は犬だけどさ」

画面が切り替わった。画面いっぱいに子猫が映る。

「今度は猫じゃ!!!」

「あっ、こら!」

これが食べ物の映像になると、テレビの画面を叩いてみたり、ダンの食事にも興味を持ってきて、つまみ食いしようとする。

ふさふさの尻尾を更に膨らませ、気が付くと画面の前まで鼻先を近付けているので、抱き上げて後ろに下がらせては、根気強く、画面から離れて見るように教えている。部屋で宿題や勉強をしている時も、ダンの後ろでスマホから動画を見ている。

最初に出会った、落ち着き払った巨大な狼のような姿から一点、今や落ち着きのない小動物と化していた。

「ぐぅ……」

机に突っ伏したダンが小さく寝息を立て、カミュランたちは困惑したように顔を見合わせた。


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