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放課後の男子更衣室。
部活動を終えると日もとっぷりと暮れ、汗にまみれた体操服を脱ぎながらダンはスマホに目をやった。
メッセージによる着信が一件。アプリを開くと、発信の主は【麻子】とあった。
「おっ、麻子さんじゃん」
思わず固まるダンの背後からカミュランが画面を覗きこみ、他の着替えていた男子バレー部員たちの視線が一気にダンに集まる。
「えっ。先輩、あの麻子さんからっスか?」
「ついにデートか?」
「違う! 麻子さんはそんなんじゃなくて!! ただのバイトの先輩!!」
にやにやと笑いながら冷やかす群衆に向かい、ダンは動揺しながら叫ぶ。
ふぅと息を吐いてからアプリを開くと、
『おつかれさまー(絵文字)』
『店長が明日のお昼空いてるかって(絵文字)』
『お昼ご馳走してくれるみたい(絵文字)来れる?(絵文字)』
麻子の使っているスマホは古すぎて、比較的新しいダンのスマホでは絵文字が表示されない。
しかし今日も指摘が出来ないまま、ダンはすぐさまスマホに指を滑らせた。
『行きます!!!』