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ダンが帰った後、いそいそと出かけようとする店長を麻子は止めた。

「わざわざうちで働かんでも、あたしらで元の戻り方を調べて、教えてあげたらエエんとちゃいます? あの子、肝試しに行ったことは本当やろうけど、多分祠は壊してないと思いますよ? 悪いものが憑いてる感じはしなかったですもん。異界の獣人かもってボヤかして言いはったけど、もしかすると……」

「だから。止めるなら今のうちだって、さっき言ったでしょうよ」

店長は悪びれることなく、ドアノブから手を離し、麻子に向かって小さく肩をすくめた。

「危険から遠ざけて与えてやることだけが、優しさじゃない。それに、あのまま野放しにしてたら本当に、藤代少年にとって不利益にしかならんよ。宇宙や異界、それを敵対視する人間たち。それに対する人個人の弱さだって、麻子ちゃんもよく知ってるだろう?」

「それは……分かりますけどぉ……」

麻子は小さく言い淀む。

ソファと床の間では、犬が気持ちよさそうに挟まり、腹を見せて眠っていた。

「剛人の報告書も見たが、あれだけの大きさと周囲への影響力を持った文字禍が、藤代少年の前に現れたのも偶然じゃない。彼と同調しているものの力に惹かれて出てきたんだろう。自分の身を守る術を身に付けさせてやるのも、この妙ちきりんになった世界で生きていくのに無駄にはならないと思うけどな」

ふーん、と麻子はじっとりとした目で店長を見る。

「建前は分かりました。本音は?」

「素直で若い労力は、あればある程いい」

「サイッテー!」

「ははは。元嫁にもよく言われたよ。それじゃあ、私は出てくるから事務所は閉めといてくれ」

「女の子のお店に行くの間違いでしょー?」

その背に浴びせられる麻子からの非難も意に介さず、店長は悠々と扉を開けると事務所を出て行く。

扉の音に犬は、はたと薄目を開けて頭をもたげたが、すぐにまた伏せて眠り始めた。

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