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056_弘治二年です

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 056_弘治二年です

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 新年、明けましておめでとうご座います。

 弘治二年になりました。


 弘治元年はどこへいった? と思うよね。

 昨年の天文二十四年の神無月(十月)に改元があり、弘治元年はわずか二カ月ちょっとしかなかったんだよ。

 なんでも戦乱などの災異のため改元らしい。

 改元で戦乱が収まるなら、毎年改元したほうがいいよね。意味がないと気づかないのかな? 気づいていても慣例だからとか、言いそうだよ。この時代の人。


 そんなわけで一五五六年の幕開けは、家族三人水入らずで厩橋城から初日の出を見ます。

 鳳がいるから富士山を見にいくことはしなかったけど、来年は三人でいってもいいかな。


 腕の中ですやすやと眠っている鳳の顔に、初日の出の光が当たる。この子の未来を作らないといけないと思った。

 戦のない平和な世になってほしいけど、人々の考え方を変えないといけない。可愛い胡蝶をお嫁さんにできて浮ついていたけど、鳳の将来を考えると不安だ。

 本気でお義兄さんに天下統一してもらい、平和な時代を築いてもらおうかな。


「寒くないか?」


 胡蝶の肩を抱き寄せる。

 彼女も俺に頭を預けてくる。


「忠治の温かさを感じるのじゃ」


 俺が抱く鳳はすやすやと眠っている。

 こんな心休まる日常がずっと続けば、いいな。


「今年も家族円満、家内安全でお願いしますよ。神様」


 あの神様は頼りないが、日本人の性なのだろう。初日の出を拝むついでに、つい神頼みしてしまう。


「忠治と鳳と楽しく暮らせる年になりますように、なのじゃ」

「胡蝶と鳳が元気で暮らせるますように」


 二人の声が被った。お互いのことを考えた祈りに、ほっこりする。

 笑って暮らせる年になったらいいな。





 新田家恒例の総評定が行われる。

 今年は、信濃衆と西上野衆の他に甲斐の武田さんの一行まで厩橋城に集まっているんだけど?

 あんたたち、直で金山城に行っていいんだよ。俺の家臣は伊勢守さんと小太郎さんだけなんだからね。この二人も名目上の家臣だし。


 信濃衆は一気に増えたな。多くの国人が供を引き連れてやってきている。

 あと武田さんも重臣たちを連れてやってきた。

 本当にわざわざうちにやって来なくていいんだからさ。長野さんとかはともかく、碓氷峠を越えてくる人たちは遠回りでしょ?


「厩橋城下の前橋湊を使ったほうが便利ですからな。ははは」


 長野さんが笑っている。そういうものなのかね?


「今年も厩橋詣でができました。よき年になりそうですな」


 は? 厩橋詣で? なんじゃそりゃ?


「知りませぬか? 新年早々に厩橋城を拝むことですぞ」

「とんと存じませんが?」


 長野さんは何を言ってるのかな?


「平城でありながら堅牢な山城のような威容、そして水堀を幾重にも配した広大な縄張り。どれをとっても日ノ本一の城にご座いますぞ」

「そ、そうですか……」


 お義兄さんの金山城のほうもそこそこ堅牢だけど、たしかに厩橋城のほうが攻めにくい城だよね。


「蟻城も、金山城もそうですが、この厩橋城を攻めるのにどれほどの戦力が要り、どれほどの犠牲を払えばよいか……。某なら攻めずに引き上げますな」

「諸国を巡って多くの城を見てきましたが、このような平城などどこにもご座いませんでしたぞ、賀茂殿」


 武田さんや山本さんまで長野さんに乗っかってきたよ。


「昨年はつつがなく武蔵の受け取りも済みましたゆえ、今年は武蔵の開発の年になるのでしょうな」

「海野殿、それはいささか情報が遅いですな」

「長野殿。それはいかなることでしょうや?」

「武蔵の地は、以前のような湿地が多い土地ではなくなったということですぞ」

「もしやそれは……賀茂様が?」

「うむ。坂東太郎や荒川、その他大小多くの川を賀茂殿が堤を築き、さらに湿地だった場所を肥沃な土地へと変えてしまわれた」


 さすがに広大な土地を開発したから、大変だったよ。

 利根川、荒川、江戸川、中川、綾瀬川等々多くの川が乱立し、川が合流したり別れたり……。魔力が何度も空になるほど、魔法を使ったよ。

 現代に先駆けて東京湾を埋め立てたのは、俺ですよ!


「なんと……賀茂様! どうか我らが信濃衆にも、そのお力を持って豊穣の地をお与えくだされ!」

「え、あ、うん。そうだね」


 信濃衆が、凄い勢いで頭を下げたよ。困ったね、これ。

 千曲川には堤を築いて水路を設置してあるが、その他の場所では特に何もしていない。

 そういう格差は恨まれる元になるから、できるだけ皆等しくだね。ただ、優先度があるからね。順番はお義兄さんに決めてもらおう。


「金山の殿の許可をもらうから、それまで待ってくださいね」

「もちろんでございます!」


 新田領の繁栄はお義兄さんも望むことだろうし、お義兄さんもダメとは言わないだろう。


 昨年同様に、坂東太郎こと利根川……逆かな? 利根川こと坂東太郎を下っていく。

 堤の上には多くの荷車が、坂東太郎にも多くの船が行きかう。皆、お疲れさん。寒いから風邪引かないようにね。


 最近、荷車がよく売れているらしい。堤の上は凹凸がなく、荷車を牽きやすいからだとか。物流が増えれば、それだけ経済が活性化する。

 米の収穫量も年々増えているし、新田領の景気はかなり良い。


 対して武蔵はかなり経済が停滞している。北条さんが武蔵を割譲し、新田の統治に代わったことで戦々恐々としているようだ。

 しかも俺が昨年末に色々やったから、今までの武蔵ではないという人までいる。

 そういった人たちの心配や不安を解消するのは、結局銭と米(食べ物)なんだよね。

 商人には銭、民には米。これをいかに行き渡らせるか。これが肝なんだと思うわけ。


 そんなことを考えていると、金山城に到着。

 先にお義兄さんに挨拶するため奥へ入ると、赤子が泣く声が聞こえてきた。

 昨年の十月に横瀬の方がお義兄さんの三男を生んだ。元気な鳴き声だ。


「お義兄さん、子だくさんでいいですね」


 部屋に入るなり、ハーレム野郎に肘打ちだ。このこの~。


「いきなりなんですか?」

「男の子が三人で女の子が一人、しかも沼田の方さんがまた妊娠したらしいですね」


 お盛んですね~。

 夫婦仲がいいからなんだろうけど、ペース早すぎませんかね。


「忠治殿も鳳がいるではないですか」

「鳳は可愛いよ。可愛すぎて食べちゃいたいくらいだけど、子供は多いほうが楽しいじゃないですか」

「そうですね。子が多いと賑やかでいいですよ」


 お義兄さんのくせに生意気な~。

 でも家族の仲がいいのはいいことです。俺も胡蝶ともっとラブラブになっちゃうんだから!




「今年は武蔵の開発を最優先で行います。江戸に巨大な城を用意してもらいましたので、そちらへの引っ越しも行います」


 武蔵の海の近くに江戸城があった。テレビで見るような大きくて立派な城ではなく、小さめの城だった。その周囲は河川が乱立していたためか、湿地が多かった。

 武蔵と下総は利根川に荒川や他の川が合流して、また分かれる。梅雨の時期は荒れるだろうなと思ったよ。


 複雑に絡み合う河川を簡素化して、巨大な堤を築いたんだ。現代の利根川や荒川の堤防より広くしているから、滅多なことでは洪水は起きないと思う。

 その上で江戸城を新しく築いた。厩橋城よりも広大な敷地に五重の水堀、さらに運河を水堀まで繋げている。おそらく徳川家康の江戸城の数倍広い城になっていると思う。


 江戸の名物が火事と言われたのは俺でも知っているから、水堀を碁盤の目のようにして延焼しないようにしてある。火事はどうしても起きるだろうから、延焼を抑える火避け地を多くとった。

 それに運河で仕切ってしまえば、攻められた時に橋を落とせば防衛も楽になる。

 治水と防衛、そして火事対策を考え、江戸城の城下町の町割りを行った。


「信濃の国人から、信濃の開発もという声があります」

「武蔵はすでに忠治殿の手を離れています。信濃に手を入れるのは、忠治殿にお任せします」

「丸投げですか~」

「はい。丸投げです。よろしくお願いしますね」

「開き直った!?」


 お義兄さんも強かだね~。いいよ。堤を築くくらいは大したことじゃないし。

 武蔵のあの乱立する河川の整備に比べたら、大したことじゃないよ。しらんけど。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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[一言] この世界では江戸城と周辺が水の都と呼ばれることになりそうw
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