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040_粗銅から金銀を抽出ついでに悪だくみ

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 040_粗銅から金銀を抽出ついでに悪だくみ

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 天王寺屋さんが用意してくれた屋敷に入った。


「小さな屋敷でいいと言ったのですがね」

「これでも小さいほうでご座いますよ」


 なるほど、天王寺屋さんにはこれでも小さいか。さすがは堺を代表するような豪商だ。


「それで例のものは?」

「こちらに」


 屋敷の一角に蔵があり、そこに木箱が大量に積みあがっていた。

 まさかこの屋敷の蔵に粗銅を保管しておくとはね。

 まあ、粗銅は重いうえにそこまで高価じゃないから、盗まれる心配はそこまで高くないか。盗むなら米のほうが捌きやすいし。


「胡蝶はどうする?」

「妾は忠治を見ておくのじゃ」

「見ていても面白くないぞ?」

「いいのじゃ」


 天王寺屋さんには帰ってもらい、屋敷を管理する人には蔵に近づかないように言う。

 蔵の扉を閉め、蝋燭の火を頼りに木箱を開ける。

 大量の粗銅があり、錬金術を行使した。


 木箱一個から得られる銀と金はわずかだが、それでも確実に回収できた。


「それが金なのかえ?」

「ああ、純度の高い銀と金だ」


 手の平の上にある少しの銀と金。

 金は一箱から数グラムから数十グラムが抽出できる。これだけの箱があればそこそこの量になるだろう。

 錬金術で次々に銀と金を取り出していく。


 三時間ほどで全部の箱を開けて、銀と金を抽出した。

 錬金術で銀と金を取り出すより、箱を開けるほうが時間がかかったよ。

 今度来る時は、全部の蓋を開けておいてもらおう。


「これは大変な量なのじゃ」


 粗銅によって銀と金の含有量は違った。

 産地の差か、粗銅にした職人の腕の差かは分からない。

 銀がおよそ百キログラム。金が五キログラムくらいになった。予想通りそこそこの量になったよ。


 胡蝶の膝枕で耳かきをして待っていると、天王寺屋さんがやってきた。


「これほどとは……」


 俺も胡蝶も驚いたが、天王寺屋さんもビックリしている。


「ははは。これはいいですなぁ。粗銅をもっと集めます!」


 天王寺屋さんはノリノリで粗銅を集めると言う。


 取り出した金銀の半分が俺の取り分。数時間でそこそこの実入りになるから、俺も美味しい。


「この屋敷の敷地内は自由にしていいですかね?」

「はい。この屋敷は賀茂様のものです。好きなようにお使いください」

「なんかすみませんね」

「いえいえ。これだけの利益をもたらしてくださる賀茂様ですから」


 天王寺屋さんはいい笑顔だ。

 俺も笑顔を返そう。ニコッ。

 しかしこれだけの銅があるんだから、あることを試してみたいよね。天王寺屋さんは話に乗ってくるかな?


「ところで、これだけの銅があるのです。銅銭を造りませんか?」

「まさか私鋳銭を造られると仰るのですか?」

「いけませんか?」

「……いえ、構いませんが、悪銭や鐚銭を大量にばら撒くと、市場が混乱しますので」


 その懸念は当然だ。だから悪銭や鐚銭なんて造らないよ。


「もちろん、品質のいいものをちゃんと造りますよ」

「その技術が賀茂様にはお有りなのですね?」

「はい」


 錬金術でちょちょいのちょいです。


「そういうことでしたら、その話に乗りましょう!」


 いい笑顔で返事された。

 多分、いけないことだけど、なんとかできると考えているんだろうね。

 俺も銭を造るとは思っていなかったけど、せっかくこれだけの銅があるからね。


「一応、俺のほうもお義兄さんに許可を取ってからになりますが、前向きに取り組むということでいいですかね」

「それはもう。よろしくお願いいたします」


 天王寺屋さんの顔がにやけてだらしないんですが。


「あ、錫ってあります?」

「錫ですね。手に入れますが、どれほど必要でしょうか」

「銅に少しの錫を混ぜるだけですから、そんなになくても大丈夫です」

「承知しました。次にお越しになる一カ月後までに用意しておきます」

「よろしくお願いします」


 さて、俺はお義兄さんに私鋳銭の許可をもらわないとな。

 胡蝶が俺の袖を引っ張る。なんだ?


「この銀と金はどうするのじゃ?」

「半分は俺が引取っていいんですよね?」


 アイテムボックスの中に多量の金銀が入っているから、この程度の量はあってもなくても同じなんだけど、この世界の金銀だからね。

 いざとなれば異世界のものでも使うけど、それまではこの世界の金銀を稼いで使うべきだろう。


「はい。そういうお約束ですので」


 そこでふと頭の中にうちが雇っている兵士たちの防具が浮かんだ。


「この銀と金で、お揃いの防具を用意してもらうことは可能ですか?」

「それはもう。いかほど必要にございましょうか」


 天王寺屋さん、嬉しそうだね~。


「防具を揃えるのかえ?」

「そそ。どうせならうちの領兵は装備を統一しようなって思ってさ」

「それなら赤備えがいいのじゃ」

「赤備え?」

「赤い防具のことじゃ」

「ほう、目立ちそうだね」

「赤鬼の兵は赤備えなのじゃ」

「いや、俺赤鬼じゃないし」

「戦場では恐れられたほうがいいのじゃ」

「でもさー、俺が赤鬼と呼ばれているからといって、赤備えは安直じゃないか?」

「そうかえ? じゃあ、黄ならどうじゃ?」

「黄色か~」

「河越夜戦で活躍された北条左衛門大夫殿が地黄八幡と言われていて、黄備えらしいのじゃ」

「北条さんのところか……戦いの時に被ったら嫌だよね?」


 今一番戦う可能性があるのが北条さんだからね。紛らわしいのは勘弁かな。


「むむむ……それなら……それなら……」

「無理に色をつけなくてもいいんじゃないか?」

「それでは賀茂家の兵と分からぬのじゃ。目立つのがいいのじゃ」

「それなら赤と黄が混ざったものならどうだ?」


 青が入ったら信号だな(笑)


「それじゃ! 赤黄(せきおう)備えなのじゃ!」

「よし、それにしよう。天王寺屋さん、赤黄の防具をお願いします」

「そういったものになりますと、専用に造りませんといけません。少しお時間がかかりますし銭もかかりますが、よろしいでしょうか」

「いいですよ。毎月の取り分を代金にしますから、それで造れる分を用意してください。一応、二千組分の赤黄備えを頼みます」

「二千組ですね。承知しました」


 賀茂の赤黄備えか。

 なかなかいいんじゃないか?


 天王寺屋さんはほくほく顔で帰っていった。

 さて、この屋敷は俺の自由にしていいらしいので、庭先に石造りの建物を設置する。

 そんなに大きくはない。五メートル四方の真四角で、高さは三メートルしかない建物だ。ただし、滅茶苦茶頑丈にしてある。それこそ大砲で撃たれても崩れないくらいに頑丈だ。


「それは何をするのじゃ?」

「内緒~」

「意地悪をするでない。教えてたもれ」


 胡蝶が頬を膨らます。可愛いな~。


「ついておいで」


 二人で中に入る。窓も何もないくらい部屋だが、床には魔法陣が描かれている。

 そう、これは転移用の魔法陣だ。主に目的地として使うものだね。


「これはなんじゃ?」

「これは転移の魔法陣だよ」

「てんいの……まほうじん?」

「厩橋城からここまで一瞬で移動できるものかな」

「一瞬……」

「そそ。瞬きしている間に移動できるんだよ」

「それは凄いのじゃ!」

「これは誰にも知られてはいけないからね。内緒だよ」

「分かったのじゃ!」


 そんなわけで転移してみる。


「お待たせいたしました~。厩橋城~、厩橋城~でご座いま~す」


 車掌風に言ってみた。


「本当に厩橋城なのじゃ……」


 お口があんぐり。そんな胡蝶も可愛いねぇ~。

 これで厩橋城と堺の屋敷が繋がったよ。ふふふ。飛んでいくのも時間がかかるからね。これならドア・トゥ・ドアさ~。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク』と『いいね』と『レビュー』をよろしくです。


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