039_温泉掘ってみました
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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039_温泉掘ってみました
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「ふ~。癒される~」
「本当なのじゃ~」
胡蝶と風呂に入って、長旅の疲れを癒す。
そういえば、前橋には温泉はないのかな?
よし、風呂から上がったら掘ってみよう! 二、三キロメートル掘れば湧いてきそうな気がする。
何せ日本は温泉大国だからね!
それに日本ならどこを掘っても温泉が出るって、偉い人が言ってたよね。(言ってません)
「何を考えているのじゃ?」
「温泉を掘ろうかな~なんてね」
「温泉を掘るのかえ?」
「そそ。出てこないこともあるけど、結構出るみたいよ」
「温泉はいいものなのじゃ~」
胡蝶が反対しないから掘削決定。
今は胡蝶を引き寄せて、その柔肌を官能だ。うひひひ。
胡蝶にお酌をしてもらい、徳利をくいっとする。
「うま~い~」
最近はスルメも手に入るけど、今日は煮物を肴に一杯だ。
胡蝶が芋を半分に切って、箸で掴む。
「あ~んなのじゃ」
「あ~~~ん。もぐもぐ。美味しいな~」
煮物も美味しいし、酒も美味しい。何よりも胡蝶と一緒に風呂に入って一杯が美味しいのだ。
風呂から上がったら、温泉を掘ってみよータイム!
魔法で穴を掘っていくだけの単純作業です。
―――ドッパーンッ。
「おおお~。出たよ。本当に温泉が出てしまった(笑)」
厩橋城の一角に温泉を造る。
せっかくなので、場外にも温泉を引いて領民にも入ってもらおう!
温泉施設をせっせと魔法でこしらえる。
男風呂と女風呂を造って~♪
こういうのは楽しいよね。戦いをやっているよりも作業が進むよ。
「それで、これはなんでご座いますかな?」
朝一で爺やさんに捕まった。
「えーっと、温泉です」
「ほう。温泉ですか」
そのじと目を止めて。
「温泉はいいものです。ですが、このようなものを造る時は、某にひと言もらえますかな。造る前に」
「あ、はい。すみません」
爺やさんは眉間を揉みほぐし、ほっと息を吐いた。
「それで、この温泉はどのように運用すればよろしいのですか?」
「領兵と領民なら無料で―――」
「無料はいけません。些少でもいいので、銭をとりましょう」
「でも皆―――」
「領民を想う殿のお気持ちは某も理解できます。しかし無料はいけません。五文でも十文でもよろしいので、銭を払ってもらいましょう。厩橋の民だけ無料で温泉に入れると他領の民が聞けば、不満が溜まることでしょうから」
「なるほど……。分かりました。五文だけもらいましょう。子供は二文かな。迷惑行為をした人は、使用禁止。それから掃除をしないと不衛生ですから、掃除は徹底させてください」
「分かりました。そのように手配します」
これで今夜から温泉に入れる!
あ~、別に夜まで待たなくていいのか。徹夜で仕事したから、今から温泉に入って疲れを癒せばいいんだ。
「ふっふっふふふ~ん♪」
鼻歌を奏でながら屋敷に設置した温泉へ~♪
ぱぱっと服を脱いで、いざ行かん! 温泉が俺を待っている!
「え?」
「忠治かえ? いい温泉じゃな~」
すでに胡蝶が入っていた。
「早いな、胡蝶」
「温泉は大好きなのじゃ~。朝から温泉とは、贅沢なのじゃ~」
すっかり温泉が好きになっているね。
俺も好きだから、似た者夫婦だ。
かけ湯して温泉に浸かる。
「おおぉぉぉ~いえぇぇ~」
「変な声を出すでないのじゃ」
「気持ちいいんだよ」
じゃばんと手で掬った温泉を顔にかける。
やや茶色のぬるっとした肌によさそうな湯だ。
胡蝶といちゃいちゃ。
最近、出遭った頃より少し大きくなった胸をつんつん。
一生懸命揉んでいるから、大きくなったのかな~。
「胡蝶。ここでしたら、子宝に恵まれそうな気がするんだ」
「なななな何を言うのじゃ!?」
「子宝」
「……子宝」
「そそ、子宝」
「むむむ。好きにするのじゃ!」
よっしゃーっ!
城下を視察すると、開墾が進んで田圃が増えていた。
水路が必要なら、俺が造っている。
利根川から水を引いているから、水不足になることはない。といっても今は冬だから水は入ってないけどね。
平地が多い厩橋城の近くは、田圃が多い。でも歪な形の田圃ばかりだ。
藤吉郎さんに頼んでいる開墾は、四角の田圃にしてもらっている。棚田だとそうもいかないけど、平地が多い厩橋城の周辺ならできるだろう。
俺でも知っている正条植えをするためには、四角のほうが都合がいいのだ。
あとは塩水選と苗代で苗を育ててから植える方法など、現代でやっているようなことを進めていく。
うちの親は兼業農家で、サラリーマンをしながら田圃で米を作っていた。俺も田植えや色々していたから、現代の田圃事情はそれなりに知っているんだよね。
既存の歪な形の田圃は開墾がある程度進んでからね。人手に余裕があれば手をつける。
何せ開墾で人手がとられているから、既存の田圃まで手が回らないのだ。
俺がやってもいいけど、爺やさんに止められている。なんでも俺がやると、他の領地が云々と。
今は秋から冬に季節が移り変わる頃で、農閑期だ。
農民の多くは藤吉郎さんが指揮している開墾に出て銭を稼いでいる。
しかも他の領地からも出稼ぎに来ているから、かなり賑わっている。
堺で米を売った銭があるけど、有限だからね。もっと銭を稼いでこないとね。
「それじゃあ、行って来ますね」
「行って来るのじゃ」
「無事のお帰りを祈っております」
爺やさんは大げさだな。ちょっと堺まで行ってくるだけなんだからさ。
堺に向けて胡蝶を抱っこして飛ぶ。
徐々に速度を上げて、マッハを超える。
ちゃんと防御結界を張っているから、風圧や気温の変化は感じない。胡蝶が一緒だから、特に念入りにね。
「大きい池なのじゃ」
「あれは琵琶湖だね。湖だよ」
「びわこ?」
この時代では琵琶湖と言わないのか?
「京の近くにある大きな湖のことだよ」
「もしかして近淡海のことかえ?」
「ちかつ……ごめん、分からんわ」
琵琶湖の次は京だ。荒れているな。酷い状態だ。
「帝のおわす地があのように荒れているのは悲しいことなのじゃ」
俺から見たら、自業自得だけどね。
帝に代わって日本を治める人が将軍なら、日本を治められない将軍を変えようとしないのは帝の責任だ。
今の状態が嫌なら他の人を探せばいいのに、それをしない。言いわけできない怠慢だよね。
人の上に立つ以上は、責任が生じる。そういった責任をまったく感じていないわけではないと思うが、憂うだけでは世の中は変わらないよね。
「堺が見えてきたぞ」
「海なのじゃ!」
多くの船が浮かぶ海が見えてきた。
町のど真ん中に降りると騒がれるから、人気がないところへ着地。
二人で手を繋いで町へと歩いて行く。
「へへへ。いい女じゃねぇか。男は殺して身ぐるみ剥せ」
まさかの追剥ぎです!
しかも胡蝶をエロい目で見ているよ!
お前らギルティーーーッ!
「うぎゃっ」
「あぎゃっ」
「ぶへっ」
パンパンと手を払う。
「追剥ぎなんて馬鹿なことをするから痛い目をみるんだ」
殺しはしないけど、二度と悪さができないように右腕を折っておいた。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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