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034_胡蝶のおねだり

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 034_胡蝶のおねだり

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「某、若狭国熊川城主沼田光兼が子、沼田上野之助祐光(すけみつ)と申します。賀茂様の噂を聞き、家臣となりたく若狭よりやってまいりました」


 若いね。二十代前半かな。

 しかし父親が城主をしているのに、他国で仕官してもいいの?

 爺やさんを見ると、頷いた。いいようだ。


「沼田さんというと、沼田城の沼田さんの縁者なのかな?」

「若狭沼田は上野沼田より分かれたと聞いております。よって、某は庶流にございますが、上野沼田とは面識もつき合いもございません」


 聞けば、かなり昔に分かれた分家筋らしい。だから沼田城の沼田さんとは同族だけど、つき合いはないのだとか。


「なんで俺に仕官をしようと思ったの?」

「某は陰陽道を学んでおります。賀茂様は陰陽師として有名にございます。できうることなら、某にご教示いただきたく!」


 あー、そっち系の人かー

 俺、陰陽師じゃないんだけどさー。(棒読み)


「俺、陰陽師の修行なんてしたことないよ」

「某もそうお聞きしておりまして、半信半疑で上野までやってきました。しかし! この厩橋城を拝見して確信しました! 賀茂様が陰陽師でなくても、これほどの城を一夜にして築いたお方なのです! 弟子入りするのに、なんの躊躇がありましょうや!」


 あ、熱い……。

 凄く熱く語るのはいいんだけど、唾を飛ばさないでほしい。

 あと一夜では築いてないからね。

 しかしこんな人もいるんだな。陰陽師馬鹿というべきか、なんというべきか。


「たしか若狭国には陰陽師の土御門家があったと思うけど、そっちに弟子入りしたほうがいいんじゃないかな?」

「某、治部卿様と陰陽頭様に師事しておりましたが、そのお二人から賀茂様のことをお伺いし、勧められた次第にございます」


 治部卿様と陰陽頭様って誰よ? 話の流れから、土御門家の誰かか?


「ゴホンッ。治部卿様が土御門有春(ありはる)様、陰陽頭様がそのご子息である有脩(ありなが)様にございます」


 爺やさん、物知りだね。

 ちなみに土御門家は安倍晴明の末裔になる。

 賀茂家は勘解由小路と家名を変えて公家として残っているが、戦国時代、安土桃山時代、そして江戸時代期に断絶している。

 俺の賀茂家は勘解由小路家の庶流だったため、本家の衰退に関係なく現代まで残ったらしい。細かいことはしらんけどさ。

 こういった話に興味を持つ前に、異世界に召喚されちゃったんだよね、俺。だから祖父が酔って話していた賀茂家の歴史くらいしか知らないんだよ。


「どうか! どうか、某を弟子に!」


 家臣にって話だったよね? もうさ、心の声がダダ洩れ状態ですよ(笑)


「沼田さんは計算とか得意ですか?」

「計算……算術ということですか。それなら大丈夫です。易学と天文学も得意ですから!」

「分かりました。沼田さんを()()にしましょう」


 ふふふ。文官候補をゲットだぜ。


「ありがとうございます! 某のことは、上野之助とお呼びください!」

「上野之助さんね。了解。爺やさん、上野之助さんに湊関係の仕事を教えてあげてもらえますかね」

「承知しました」


 上野之助さんがどこまでできるかは未知数だけど、易学や天文学を学んでいるんだから計算くらいできるっしょ。多分。


「それじゃあ、彼の監視もお願いね」

「分かった」


 爺やさんと上野之助さんが下がった部屋の外に、小太郎さんが音もなく現れた。


「藤吉郎さんのほうはどう?」

「まったく問題ない」

「そっか。じゃあ、監視を解いていいよ」


 小太郎さんは音もなく消えた。





 夏の暑さが厳しくなるつつ昨今、金山城はかなり慌ただしかった。

 奥向きの人の目が血走っている。お義兄さんも落ちつきがない。凄くいづらい雰囲気だ。

 そんな雰囲気の中、その声が聞こえた。


「お生まれになりましてございます。元気な男の子です」

「「「おおおっ!」」」


 新田家の跡取りが生まれた瞬間だった。


「お義兄さん、おめでとうございます」

「「「おめでとうございまする!」」」

「うん、うん。皆、ありがとう! して、足利の方の具合はどうなのだ?」

「ただ今は眠っておりますが、無事にございます」


 お義兄さんは足利の方さんの寝所に向かった。凄く嬉しそうな背中だ。

 後から俺も足利の方さんに挨拶に行こう。産後は何があるか分からないからね。


 お義兄さんの長男は、満次郎と名づけられた。なんでもお義兄さんの幼名が満次郎なんだとか。この時代は親の幼名を子供につけることが多いんだとか。特に嫡子の場合は、その傾向が強いらしい。


 足利の方さんに回復魔法を施し、満次郎君にも念のためにね。

 これでしばらくは大丈夫だと思う。


「胡蝶。私にも抱かせてくれないか」


 先程から胡蝶ばかり抱っこし、お義兄さんは抱っこできていない。


「嫌なのじゃ。満次郎も妾に抱っこされたいのじゃな~」


 胡蝶が満次郎君から離れないんですが……。

 これも子供がほしいアピールなのかな?


「姉上。私にも抱かせてください」

「仕方がないのじゃ」

「え、私は!?」


 幸寿丸君には抱かせてあげるんだね(笑)

 今年は他にも二人の側室の出産もあるから、お義兄さんは慶事が続くね。


「忠治。妾も子供がほしいのじゃ」


 最近の胡蝶は子供がほしいと、よくおねだりしてくる。俺も子供がほしいけど、こればかりは魔法でどうこうできるものではないからな。

 あの駄女神は大丈夫だと言っていたが、本当に大丈夫なんだろうな……。ちょっと心配だ。


 俺たちは厩橋城に帰った。

 もちろん、子作りしたよ。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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