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031_文官が不足してるから

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 031_文官が不足してるから

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 木下さんを雇用して三カ月が経過したけど、変な動きはしていない。それどころか家内の雑務の改革を行い、不要な業務を削減してくれた。おかげで煩雑な業務が減って、さらに木下さんが色々やってくれるから爺やさんの仕事がかなり減った。


「あの男は使えますぞ!」


 二か月目で足軽小頭に昇進させてやってくれと、爺やさんに言われた時は驚いた。あの爺やさんが人を褒めるなど、滅多にないことだ。爺やさんがそこまで言うから、足軽小頭に昇進させた。


 そして三カ月が過ぎた今、木下さんを普請奉行代理にすることにした。城下の街づくりや耕作地の管理など多岐に渡って働いてもらうためだ。


「儂のようなどこの馬の骨かも知れぬ者をいいのですか?」

「爺やさんが推挙したから採用。うちはね、爺やさんで持っているようなものだから、木下さんが次代の爺やさんになってくれることを願っているよ」

「はははぁぁぁっ! ありがとう存じます!」


 爺やさんも年だから、いつまでも激務を押しつけるわけにはいかないもんね。俺が働けばいいのかもだけど、それは最終手段。基本は俺なしで回ってくれることを願います。




 数日後、木下さんが話があるというので、爺やさんと聞くことにした。


「儂のような新参者がこのようなことを言うのは憚られますが……」


 ずいぶんと神妙な表情で、言いにくそうだ。どんな難しい話を持ってきたの?


「石高に較べて兵の数が明らかに多いと思われます」


 ああ、なるほど。常備兵の数が多いことを指摘しているのか。


「石高が四万一千石に対し、常備兵が一千五百は明らかに多いです。しかも足軽一人に米が四石と銭が四貫。毎年米が六千石と銭が六千貫も必要になります。それ以外に家臣の方々の俸禄もあるのです。財政は火の車のはずです」


 たしかに石高だけを考えると、赤字になりかねない。

 でも利根川を利用した交易と石鹸の販売があるから、うちは十分に黒字なんだよね。

 そこに両替もあるから、銭はどんどん溜まっていく。米をお金に換えなくてもやっていけるから、税として徴収した米も出て行かないんだよね。

 木下さんは利根川貿易と石鹸販売、そして両替でどれだけの利益があるか知らないものね。


「爺やさん。そろそろ木下さんにもうちの内情をしっかり教えていい頃ですかね」


 小太郎さんからは、木下さんの動きに怪しいところはないと報告を聞いている。まだ三カ月だから、動いてないだけかもしれないけどね。引き続き監視は続けるけど、多分大丈夫じゃないかな。


「殿がそう仰るのであれば、よろしいかと」


 木下さんは首を傾げている。そんな所作が猿回しの猿のようでコミカルだ。


「百聞は一見に如かず。ついてきてくれるかな」


 三人で秘密の両替部屋へ。ここは風魔党が護っている。この城の中でも胡蝶の部屋の次に警護が厳しい場所になる。一番は胡蝶だから!

 この部屋には大量の銭箱がある。今はおよそ一万貫くらいだろうか。銭用の蔵は他に二カ所あって、それぞれに一万貫くらい収められている。

 今現在銭がどんどん増えて困っていて、蔵を増設しようかと爺やさんと話しているくらいだね。

 それに俺がせっせと悪銭を良銭に錬金すれば、また悪銭が増えていく……。悪銭がある限り、賀茂家の財政は盤石と言えるだろう。


「ここで悪銭を良銭にしている」

「え? ……冗談ではないですよね?」

「実際に見てみればいい。ただしこれは極わずかな者しか知らないことだ」


 錬金をしてみせた。


「えっ!?」


 木下さんは飛び上がって驚いた。


「新田の赤鬼は伊達ではないのだぞ、藤吉郎」

「へ、へい! 御見それいたしましてございまするー。へへー」


 爺やさんが黄門様の印籠を出すような感じで、木下さんに良銭を見せると平伏しちゃったよ。

 木下さんは簡単に両替のシステムのことを教えると、すぐに理解してくれた。


「へへへ。まさに打ち出の小槌ですね、殿」

「赤鬼に打ち出の小槌か、上手いこと言うではないか。藤吉郎」


 爺やさんが褒めると、木下さんは恥ずかしそうに顔を赤くした。なかなかいいコンビだ。

 さらに石鹸作りと、交易から得られる利益についても説明。うちの財政は常備兵一千五百人を雇っても健全なのだと教えてあげる。むしろ一千五百人では少ないくらいだ。


「これだけの財源があれば、開墾も進みます」

「全資金を使うわけにいかないからな。適度に頼むぞ」

「へへへ。分かっております。殿」


 この木下さんに、石鹸の管理も任せちゃえ。これで普請奉行代理と石鹸奉行代理の兼務だね!

 前橋湊は今まで通り爺やさんが担当ね。


 その木下さんに部下をつけてあげないといけない。武官はそれなりにいるけど、文官はな~。

 そうだ! 文官を育てればいいんだ! 爺やさんに頼んじゃえ!


「農家の子供や親のいない子を集めて教育を施しましょう」

「いきなりですな。その趣旨をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「文官が少ないから、文官を育てるんですよ。十人集めて、一人か二人使えるくらいになればいいな~って感じでいいんです」

「なるほど……しかし親のない子は居つきませんぞ。それに農家のほうも子供を働かせていますから、集まるかどうか」

「親がいない子は、長屋に住まわせましょう。衣食住の面倒をみるのです。そうすれば子供がいなくなることはないでしょう」


 それでもいなくなる子供はいると思うけど、居つく子供のほうが多いんじゃないかな。


「農家の子供には食事を用意しましょう。親も子供の食事がもらえるなら、出してくれるのではないですかね」

「子供に食事ですか……」

「いいじゃないですか。どうせ蔵に米が余っているのですから、そこから二、三百石くらい出しましょう」


 俺の領内に住む子供を食わせる程度なら、そのくらいで足りるよね? 足りなくても米はあるのだから、子供にたくさん食べさせてあげたいじゃん。


「承知しました。そのようにしましょう。しかしどこで教育するつもりですか? 長屋も必要ですから、それなりの場所が要りますな」

「厩橋城の一角でいいと思いますよ。俺が増築しますから、今夜やっておきます」

「上泉城と蒼海城のほうにも連絡しますか」

「あー、そうだね。伊勢守さんと小太郎さんには、親がいない子供がいたらこちらで引き受けると言ってもらえますか。農家の子供はどうするかお任せすると。子供に食べさせる米はこちらで用意しますとも」

「少しは出してもらったほうが良いのでは?」

「二人は俺の家臣扱いなんだから、それくらい面倒見ましょう。ね、爺やさん」


 爺やさんは仕方がないといいながら、すぐに使者を出してくれた。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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