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029_お義姉さんの食欲が少しでましたね

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 029_お義姉さんの食欲が少しでましたね

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 いやー、温泉はいいねぇ。あの厩戸皇子も道後温泉に浸かったらしいよ。

 たしかあの有名な夏目漱石の『坊ちゃん』の舞台はこの道後温泉だよね。歴史のある温泉だよ、まったく。今は夏目漱石よりも俺のほうが先に温泉に浸かっているけどね。


 混浴もあったけど、貸し切った。混浴ということは、俺が他の女性の裸を見られるだけでなく、胡蝶の裸も見られるということ。それは絶対に許さん! だから貸し切り。銭の力は今も昔も現代も貸し切りができるのだ!


「いい湯だな」

「気持ちいいのじゃ」


 二人っきりの温泉。なんとも言えないエロス。胡蝶の肩を抱き寄せる。柔らかな横乳があたる。興奮してきたぜ!




 道後温泉でゆっくりしたかったけど、俺たちは土佐に飛んだ。あっちこっち聞き込んで、柚子が手に入った。まだ実が生っていて良かったよ。


 さらに豊後に飛んだ。豊後には別府温泉があるとのこと。是非行かなくては!


 うひひひ。温泉じゃーっ! え、入れないの? 海地獄とか血の池地獄とか……駄目? 熱すぎるから、源泉かけ流しは駄目なの?

 実際に海地獄のお湯を触ってみたが、確かに熱い。草津温泉より熱い。俺でも入れない。あれは入ってはいけない温泉だ。まさに地獄だね。

 まあ、普通に温くしてあるほうに入るんだけどね。


「ああ、気持ちいいな……」


 温泉というのは、なんでこんなに気持ちいいのだろうか。温泉と聞くだけで癒される気がする。これは日本人のDNAに刻み込まれているものだな。俺も日本人だから、温泉が大好きなんだと思う。


「胡蝶の裸が見れないのは、目に優しくないのだがな」


 この温泉、赤茶色なんだよ。お湯の中がまったく見えないのだ。責任者出て来いや!


「何を言っているのじゃ、まったく忠治は」


 呆れられてしまった。でも、その目もいいね。興奮するよ。はぁはぁ。




 香母酢は意外と簡単に見つかった。檸檬に近いさっぱりとした柑橘類だから妊婦でも口にできるだろう。

 あと蜜柑だけど、普通にあったよ。薩摩というところにあった。やったね!


 蜜柑を食べたけど、酸味が強い。多少甘味もあるけど、現代日本で食べる蜜柑と較べると、どうしても味が一段落ちる。でも妊婦には酸っぱいくらいがいいと思う。

 あと香母酢と柚子は酸っぱすぎるから、一工夫が必要だね。料理で使う感じかな。


 目的は果たした。帰るか。


「有馬の湯もいいもんじゃな」

「胡蝶と一緒ならどんな湯でもよく感じるよ」

「忠治……」

「胡蝶……」


 帰る途中で有馬で一泊。温泉を貸し切り、胡蝶と二人っきり。ふふふ、何をしても誰にも迷惑をかけないぜ。

 ん、帰らないのかって? 帰る途中で夕方になったから一泊したの。決して温泉巡りをしているわけではないのだよ。




「お義兄さん、只今戻りました」

「兄上、ただいまなのじゃ」

「忠治殿、胡蝶。無事に帰って来てくれて嬉しいよ」


 そう簡単には死にませんよ。それに胡蝶を危険に曝すこともね。

 さっそくお義姉さんに蜜柑を食べてもらう。お義姉さんといっても年下なんだけどね。

 気分が悪そうだけど、蜜柑を口にしたら目じりを垂れた。


「美味しいです」


 お姉さんは蜜柑を二つ食べた。あまり無理してはいけないので、お腹が空いたら食べるくらいでいいと思う。

 さて、蜜柑のビタミンCで風邪とかの予防はできるが、これだけでは栄養が偏る。お腹の子にもっとちゃんとした栄養を摂ってもらわないとね。


 下働きの女性に川魚を焼いてもらい、香母酢の搾り汁をかけたものをお義姉さんに試してもらう。


「あ……これも美味しいです」

「そうか。しっかり食べるのだよ」


 お義姉さんもお義兄さんも嬉しそうだ。

 魚が食べられれば、体力も少しは回復するだろう。少しでも食欲が戻って良かった。


「忠治殿。ありがとうございます。足利の方があんなに料理を食べるのはいつ以来でしょうか」

「食事が摂れるようになってよかったです」


 俺も温泉を堪能できたし、いいこと尽くめだ。


 最後の柚子はジャムにしてみた。砂糖はアイテムボックス内に大量に収納してあるものを使った。柚子のよい香りがするジャムが出来上がってお義姉さんにも好評だけど、胡蝶が美味しいと言って食べてくれるのが一番嬉しい。


 ジャムはおやつ感覚でパンにつけて食べる。この時代にも小麦はあるのでパンは作れる。ちょっと硬いけど、クッキーのようにサクサクして美味しい。


 砂糖が手に入るとこういったジャムを作れるけど、砂糖は高級品で蜜柑などよりも手に入りづらい。この時代は色々不便だ。


「忠治、お代わりなのじゃ」

「食べ過ぎると太るよ」

「ななななんじゃと!?」

「お腹の肉がたっぷんたっぷんするからな」

「うぅぅ……美少女は太らないのじゃ!」

「どんな根拠だよ」

「忠治がいつも言っているのじゃ。胡蝶は美少女だと」

「まあ、言ってるけどさ。それ、根拠にならないんだけど」


 そっと胡蝶の前にクッキー風パン(柚子ジャム付)を置いてやる。胡蝶はぐぬぬぬと言いながら手を出しては引っ込めるを繰り返す。葛藤しているのだろう。

 あ、パンを手に取った……口に運ぶまでに何度かの葛藤。そして食欲が勝ったようだ(笑)


「忠治、稽古するのじゃ!」

「いきなりどうした?」

「食べた後は体を動かすのじゃ!」


 食っても体を動かせば太らないということだな。しっかり食べてしっかり体を動かすと健康にもなるよね。


 胡蝶は木の薙刀、俺は木刀。二人で対峙すると、爺やさんが縁側に座り込んだ。見物か?


「はっ」


 いきなり突きか。やるな。

 木刀でいなすと、今度は横に薙いでくるのを受ける。


「せいっ」


 真剣な眼差しの胡蝶の薙刀を受けつつ、体勢を入れ替える。

 華奢な体なのに胡蝶の薙刀は鋭い。下手な男よりよほど筋がいいと思う。戦場に出れば姫武将として名を馳せるだろう。出さないけど。

 胡蝶は俺のお姫様なのだ。誰が戦場なんかに出すかよ!


 爺やさんがやんややんやと胡蝶を褒める。応援するのはいいけど、あんた仕事は? 休憩? 俺に用があるんだったら、そう言おうよ。




 昼餉を食べて、さて昼寝でもするかと思ったら小太郎さんの気配がした。報告がある時は、わざとらしく気配を洩らすんだよね。


「どうしたの?」


 姿を現す小太郎さんに、最近は胡蝶も慣れた感じ。一応俺が先に何かいうから、心の準備ができるようになったみたい。


「武田の軍が信濃を北上している」

「朝廷の仲立ちで和議が成立したよね? うちを攻めるの?」

「今のところ諏訪郡から筑摩郡へと進んでいる。狙うは新田勢力以外の土地だろう」


 北信濃には武田勢でも新田勢でもない国人がいる。そういった国人を攻めて、佐久郡と小県郡以外の信濃全域を手に入れようということだろう。


「武田さんも必死だよね」

「武田は海を欲しがっているからな。越後か越中に出る道筋を手にしておきたいのだろう」


 海がないのは新田も同じ。群馬県の前身である上野国は、海がないからね。でも新田は利根川を使った交易が盛んだから、なんとかなっている。もっともお義兄さんも武田さんのように、海が欲しいと思っているようだけど。

 越後でも海があるんだけど、あっちは冬になると雪で閉ざされてしまうから、連絡するのも大変になるんだよね。だから武蔵が欲しいんだろうね。


 前回お義兄さんは武蔵の北部を制圧し、今はその統治に苦心している。北条の調略も頻繁に行われているらしく、武蔵はまだまだ安定しない。


 それに上総の古河公方さんも色々やっているらしい。北条さんに隠居させられた前古河公方さんのほうね。

 新田が武蔵北部を制圧したことで、調子に乗ったよう。であっちこっちに檄文を出している。


「古河公方は北条の怒りを買った」

「そうか~。お義姉さんのお義父さんだから変なことせずに大人しくしておいてほしいんだけどな~」


 最近知ったことだけど、お義兄さんのお嫁さんの足利の方は、古河公方の養女で本当の娘じゃないらしい。俺はてっきり実父だとばかり思っていた。お義兄さんはそれを承知で妻に迎えたらしいから問題ないけどさ、知らなかったら大問題だよね。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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