表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/62

018-1_広橋国光さんがやって来た

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 ■■■■■■■■■■

 018-1_広橋国光さんがやって来た

 ■■■■■■■■■■



 田植えの頃、俺は金山城に入った。お義兄さんと海野さんのことを相談するためだ。お義兄さんの婚礼や堤防を築いたりしていたら、この時期になってしまった。


 お義兄さんの判断は、こちらから攻めるというのは駄目だというものだった。今は北条家に備えて、国力を上げることに力を注いでいる。できるだけ戦争はせずに、敵も作りたくないらしい。


「俺一人で事足りますよ」

「忠治殿が海野庄を取り戻したとして、その後の防衛はどうするのですか? 忠治殿には厩橋城を治めていただきたいし、上野から援軍を出すにしても時間がかかりますよ」


 当然の懸念だ。俺もそう思う。ただしやり様はある。

 一番いいのは、武田さんも村上さんも攻めて来ないこと。こっちが海野庄を取る際に力を見せつけることで、それは可能だろう。武田さんが馬鹿じゃなければ、ちょっかいは出してこない。

 もし攻められた際は海野さんが独自に対応することになるから、援軍が到着するまで持ち堪えるだけの防御力が必要。これは俺が城を築けばなんとかなるかも。


 問題は海野さんの戦力が、少ないことだ。城を築いても、防衛するのは人だからね。


 あまり気乗りしないけど、ゴーレムに領地を防衛させることもできる。でもこの世界でここまでやっていいのか迷うところだ。

 ゴーレムを使ってしまうと、なんでもありになってしまう。ゴーレムで領地防衛なんて、異世界感が半端ないもんな。

 いくら一緒に温泉に入った仲とはいえ、そこまでの義理はないか。


 それに武田さんに対しても恨みはない。酷いことをしてるようなので、悪感情はあるけど。


「おそらく北条とは遠からず戦うことになります。その際に、海野殿が活躍したら、考えないでもないですよ」


 お義兄さんができる最大の譲歩だろう。これ以上を望むのは無理だし、するべきではない。


「さて、話は変わりますが、朝廷から使者がやってきます」


 お兄さんが佇まいを正したから、俺も背筋を伸ばす。


「冬の間に献金した件ですか?」

「そのお礼らしいのですが、正直言って目的がわかりません。お礼は帝の宸翰をいただきました。それなのに今になってお礼というのは、どうも納得がいきません」


 宸翰というのは帝(天皇)直筆の書のことらしい。ある意味家宝になるものだ。

 現在の天皇は後奈良天皇だけど、官位と引き換えの献金を嫌われるそうだ。だからお義兄さんは三千貫も献金したのに、何も要求しなかった。そのお返しに宸翰が贈られたのだ。


 同時に足利幕府にもいくばくかの銭を贈ったらしい。こっちは受け取るだけでお礼の一言もないらしい。ずいぶんと礼儀知らずな奴らだ。


「また献金を頼みに来るのでは?」

「三千貫も献金したのですから、また献金してほしいとは言ってこないと思います。もし献金と言われても、さすがに今度はお断りしますよ」


 それもそうか。じゃあ、何が目的なのかな? 天皇なんて雲の上の人だから、俺にはさっぱり分からないや。


「今回は忠治殿にも出席してもらいますからね」

「俺は遠慮しておきますよ。お公家さんの相手なんてできませんからね。失礼があったら、お義兄さんに迷惑をかけますし」

「そのようなこと気にしませんよ。ですから出席をお願いしますね」

「いや、俺が気にしますから」


 お義兄さんはどうしても一緒に出席するようにと退かない。しかたがないから出席することにした。でも本当に失礼なことをしても知らないからね。




 小太郎さんが現れた。相変わらず何もないところポンッと現れるから、俺以外の人は驚いてしまう。わざとやっているよね、それ。


「越後で反守護代の声が高まっている」


 反守護代ってことは、長尾景虎さんに反旗を翻す人が増えているということか。爺やさんたちの思惑通りになっているんだね。


「景虎さんは勝てそう?」

「五分五分だな」


 越後の長尾家は蒲原郡(かんばらぐん)三条の三条長尾家、古志郡(こしぐん)の古志長尾家、魚沼郡上田庄の上田長尾家がある。景虎さんは三条長尾家だけど、他の二つの長尾家が反旗を翻している。


「三条長尾が守護代を独占していることに反感を持っているようだ」


 長尾三家で守護代を争っていたが、ここ最近は三条長尾家が守護代を独占している。そのことに他の二家が不満を貯め込んでいたようだ。


 さらに揚北衆(あがきたしゅう)も反景虎さんらしい。ただし他の反景虎勢とは結びついていないようだ。この揚北衆というのは阿賀野川北岸地域の国人たちのことで、独立意識が強いらしい。景虎さんの求心力が低下して、今なら好き勝手できると考えたようだ。


「元々景虎が力で押さえつけていただけだ。その力が弱まれば反発するのは当然だろう」


 越後は三条長尾勢、反景虎の長尾二家勢、そして揚北衆の三つ巴の内戦状態に陥ることになるようだ。


「田植えが終われば、本格的に動くことだろう」

「もし長尾二家勢と揚北衆が手を結んだら、景虎さんはかなり難しい状況に追い込まれそうだね」

「景虎の母は古志長尾家の者で、姉は上田長尾に嫁いでいる。この二家は景虎が守護代を辞すれば収まるだろうが、揚北衆は独立独歩が目的だ。景虎がそれを理解すれば、そこまで大きな乱にはならないだろうな」


 もし内乱になったとして、上野への塩の供給が止まるとややこしい話になるぞ。景虎さんを越後に帰す条件として、塩を安く提供するというものがある。これが守られない時は、お義兄さんが越後に攻め込む大義名分ができてしまうからね。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク』と『いいね』と『レビュー』をよろしくです。


気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。

下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。

『★★★★★』ならやる気が出ます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ