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012-2_新田家

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 12-2_新田家

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 お義兄さんが苗字を新田に改めて数日後、国人たちが金山城へやってきては、お義兄さんに頭を下げるようになった。

 その多くは新田に臣従するというもの。爺やさんたちの悪だくみが功を奏した感じだね。


 堀越さんが提案した噂を流したのは、小太郎さんだ。こういうことに小太郎さんたち忍者は精通しているからね。小太郎さんは赤鬼が敵対者を滅ぼしに行くぞと噂を流したらしい。そしたら次から次に使者が金山城にやって来ているわけだ。


 そして十日程した時だ。結構なビッグネームが現れた。爺やさんの興奮はこれまでにないもので、あまり興奮しているからぽっくりいかないか心配になったよ。


「当家は決して新田家に敵対するものではございません」

「どの口が言っておられるのか、長野殿。貴殿は進んで関東管領に従い、この金山城を攻めようとしていたではないか。今さら敵対する意識がないと言っても誰も信じないぞ」

「うっ……」


 西上野の長野信濃守さんは、爺やさんの口撃にあって口ごもった。しかしこの人も信濃守さんなんだね、横瀬さんも信濃守だから紛らわしい。それはともかく、この人は上杉さんが殺された場にいた人だ。ただ俺に攻撃しなかったから、死なずに逃げられた。


「臣従する気がないのであれば、好きにされよ。それで何があっても我らは知らぬによって」


 爺やさん上手いね。お義兄さんから俺の名前を使って脅すのは禁止されているから脅しはしないけど、名前を出さなくても気を持たせる言い方をしている。


「お待ちくだされ!」


 爺やさんの術中に嵌った長野さんが慌てて頭を下げた。


「臣従いたしまする」

「そうか。では西上野の八幡壮は当家にお返しくだされ。あそこは新田が治めるべき由緒正しき土地ですからな。よろしいな」

「彼の地は和田殿の土地なれば……」

「それを交渉なり和田を攻めるなりして献上することが肝要でござるぞ、信濃守殿」

「……承知仕った」


 長野さんご愁傷様。そして横瀬さん悪辣……。

 臣従した人たちにこうやって土地を献上させているんだよね、横瀬さん。それが新田の直轄地になるわけだから、悪くない。でもやりすぎると国人の恨みを買うから、あまり派手にしないようにね。




 風呂はいいなぁ。この時代、俺のように毎日風呂に入る人は珍しい。それなのに戦争になると、風呂に入ることができないんだ。もう最悪。

 異世界でも風呂はあまり入れなかったけど、戦国の日本もかなり風呂状況は悪い。てか、ない。風呂、ないんだ。サウナっぽいものはあるけどさ。俺、サウナより湯船派なんだよね。


「力加減はどうじゃ?」

「うん、いい感じ。あとから胡蝶の背中も洗ってあげるからね」


 小さな手で手ぬぐいを持ってごしごししてくれる。


「旦那様にそんなことはさせられないのじゃ」

「いいからいいから。これは俺がしたいの」


 むふふふ。石鹸作って良かった。俺、胡蝶と洗いあっこするんだ。




 爺やさんが銭の勘定をしている。その横では爺やさんの息子の四賀孫八郎義光さんがお手伝いをしている。今年で二十一になるという孫八郎さんと爺やさんは、なかなか仲が良い親子だ。


「孫八郎、悪銭はどれだけあるか」

「はい。ざっと五千貫にございます」

「ざっととはなんじゃ、ざっととは。しっかり数えんか、馬鹿者め」

「父上のほうこそいくらあったのですか」

「儂のほうの良銭は七千と八百三十五貫じゃ。儂は何事も全力で取り組むのだ。安易な手抜きなどせぬわ」


 うん、仲がいいね。目を逸らして別のところに行く。

 しかし銭持ちだね。この銭のほとんどは関東管領軍を撃退した時に得たものだ。米と銭などたくさんの物資が放置してあったのを全部いただいた。

 米も蔵に入りきらないほどおいていってくれたから、本当にウハウハだよね。

 もちろん、金山城に集まってくれた家臣さんたちにも配った。それでもこれだけある。




 横瀬さんが武具の手入れをしている。防衛戦で使うからと購入したけど使わなかった刀だ。


「どの刀も名刀ですよ、ご家老」


 配下の一人が目をキラキラさせて興奮している。


「うむ。賀茂様が何かしたと言っていたが、それが原因だな。これらの刀を売ってより多くの刀を購入してそれを賀茂様に名刀に変えてもらえば装備だけは日ノ本一になるぞ。さっそく孫九郎殿に相談するか。ははは」

「賀茂様はいったい何者ですか。本当に物の怪ではないでしょうか」

「物の怪であっても天下無双の剣の達人であるし、我らが殿に背かぬ限り守護神となって護ってくださる。それで良いではないか」

「それもそうですね」


 なんだか俺の仕事が増えそうな予感。いかん、いかんぞ。せっかく戦争が終わったのに、胡蝶とイチャイチャする時間が減るじゃないか。


 そんなことを考えつつ胡蝶のところに行こうと思ったら、伊勢守さんの姿があった。


「これは師匠。ご無沙汰しております」


 伊勢守さんの機嫌がいい。


「こんにちは。伊勢守さん、ご機嫌ですね」

「ええ。師匠のおかげで我が城を取り戻すことができましてご座いまする」


 関東管領軍撃退の後に、伊勢守さんは上泉城をもらったそうだ。元々伊勢守さんの城だったけど、北条に取られてしまったものだね。城を取られた後、たまたまお義兄さんのところに寄ったら俺と試合することになったのだとか。

 旧領復帰だから笑顔が自然と浮かぶんだろうね。


 そういえば上泉城復帰のお祝いをしてなかったね。よし、ここは師匠として太っ腹なところを示そうじゃないか。

 伊勢守さんには内緒で爺やさんに手配してもらおう。サプライズだ。


「師匠。久しぶりに稽古をつけていただけないでしょうか」

「稽古ですか……」


 胡蝶との時間が少なくなるけど、久しぶりに顔を見せてくれた伊勢守さんの頼みを無下に断るのも後味が悪い。


「いいですよ」


 OKすると、伊勢守さんが破顔する。尻尾があったら千切れんばかりに振れているんだろうな。でも伊勢守さんはオッサンなんだよね。キ●タク似のイケメンなんだけど、やっぱり男じゃね。


 伊勢守さんと稽古すると聞きつけたらしく、胡蝶、爺やさん、お義兄さん、そして風魔の小太郎さんまで観戦にやってきた。


「なんで小太郎さんがいるの? 城のほうはいいの?」

「手の者がやっている」


 相変わらずぶっきらぼうな喋り方だ。遠●憲一さんのような強面で皺が深いけど、肉体は二十代くらいの若々しさなんだよね。本当に不思議な人だ。

 小太郎さんも城をもらった。北条がいなくなったから空いた城がいくつかあり、その一つだ。

 これまでお金で雇っていたけど、これで正式に俺の家臣になった。なんで俺の家臣なのかとお義兄さんに聞いたら、小太郎さんがそう望んだらしい。

 しかし城のことを部下に丸投げとか、いいご身分ですね。


 え、俺は城をもらったのかって? いや、俺はもらってないよ。もらっても管理できないからね。あと小太郎さんと同じように俺の家臣になっている人が、他にもいる。それが今目の前で木刀を構えている伊勢守さんだ。他に数人俺の家臣になった人がいるけど、紹介は割愛する。

 俺は領地の代わりに銭をもらうことにした。年俸三千貫だ。その三千貫を両替で作るのが俺の平時の仕事なんだけどね(笑)


 伊勢守さんと稽古を一時間ほどして、その後は伊勢守さんの弟子の人たちの稽古を二人でつけた。合計二時間くらいいい汗をかいた。


「師匠。今日はありがとうございました」

「「「大師匠様。ありがとうございました!」」」


 体育会系の暑苦しい人たちだが、悪い人たちではない。むしろ清々しいほどに剣に打ち込むから、見ていて気持ちがいい。

 腹黒な人よりこういう人たちのほうが、俺は好きだな。


 そうだ、爺やさんにサプライズを頼んでおかないとね。


「承知しました。上泉城へ銭を届けておきましょう」

「うん。小太郎さんの城にもお願いしますね」


 伊勢守さんだけじゃあ小太郎さんが拗ねちゃうもんね。気配り大事。俺は空気が読める人なんだ。多分。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク』と『いいね』と『レビュー』をよろしくです。


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