私は彼の番じゃない
「よお、ヴィー」
ガヤガヤと賑わう、冒険者ギルドに最も近い酒場。
そのカウンターの端に座り、エールを喉に流し込んでいれば、誰かから声を掛けられた。
入口のあたりに目を向ければ、艶やかな黒髪と浅黒い肌。そして、狼のようにふわふわの耳を持った美丈夫と目が合う。
ニカっと笑った彼を無視して、無言で隣の椅子に置いてあった自分の荷物を片付けた。
空いたその椅子に、彼――Sクラスの冒険者、テオヴァルトは、さも当然という風に腰掛ける。
そして、私のものよりも少し強いエールとつまみを注文した。
なんでもないその姿すら、美人だというだけで絵になるのだから、不思議なものだ。
新人と思しき、注文を取りに来た女の子が見惚れている。気の毒に。
なぜ、こんな美丈夫と、地味な見た目――くすんだ灰色の短髪に、珍しくもなんともない青い目。左頬には刀傷があり、おまけに体形の分かりにくいローブを纏っている――のしがないCクラスの冒険者である私が親しげに接しているのかというと、話は一年前にさかのぼる。
――あの日、私は自分の仕事を終えて、ギルドに帰る途中だった。
そしてその途中で、たまたまテオヴァルトを見かけたのだ。
……黒龍と対峙している、とんでもなく美しい獣人を。
伝説級の大物との戦闘というだけでなく、剣を振るう彼の動作があまりにも綺麗で、私はその場から動くことができなかった。
やがて彼は、危なげなく黒龍を倒してしまい、素材を回収するために、獲物に近づいた。
その瞬間、私はとっさに、球状にした結界を全力で彼にぶん投げた。
それと同時に、最後の力を振り絞り、黒龍が彼に向かって火を噴く。
しかし、黒い炎が彼の肌を焼く前に、私の結界が展開された。
今度こそ絶命した黒龍を見て、彼は短く息を吐く。
そして、私の方を見て軽く目を見開いた彼は、大股で私の方へ近づいてきた。
「結界、ありがとな。助かった。俺はテオヴァルト。テオでいい。君は?」
「……ヴィー」
「分かった。ヴィー、報酬は半分渡すから、ギルドまで一緒に来てくれないか?」
……その言葉のせいで、出会って早々喧嘩になった。
最後の最後にテオを守っただけで、報酬を半分ももらうなんて、割に合わないにもほどがある。
それに私は、報酬が欲しくて彼を守ったわけでもないのだ。
そして結局、酒場で彼におごってもらうことでカタが付いた。
テオは不満そうだったけれど、私だってこれ以上は譲歩できない。
そしてそれ以降、酒場でお互いを見かけたら、なんとなく一緒に飲むようになった。
……なんて、昔のことを考えていれば、その男はちゃっかり、私の注文したつまみ――外側がカリッとするまで揚げたポテトに軽く塩を振ったもの――に手を伸ばしてきた。
油断も隙もありゃしないったら。
無言で皿を彼から遠ざけ、これ見よがしにポテトを一つつまんで頬張って見せると、彼はムッとした表情で口を開いた。
「別にいいだろ、少しくらい。俺のもやるから」
「いらない」
そちらを見もせずに黙々と食事を続けてやる。
隣からわざとらしいため息が聞こえたが、先ほどと同じように無視する。
少し時間が経ってから、彼のエールとつまみが届いた。
ジョッキの持ち手を掴んだ彼は、それを無言で私の方に差し出す。
同じように、私も無言で彼のジョッキに自分のものをぶつける。
「乾杯」
爽やかな笑顔でそう言われて、トクンと心臓が高鳴ったけれど、それを気取らせないようにして、私はグッとほろ苦い液体を飲み干した。
タンっと音を立てて、ジョッキを卓上に置いたところで、何かを口の中に突っ込まれた。
ジュワリと、肉の旨みが口の中に広がる。
彼の頼んだつまみ――骨付きのソーセージだ。
そんなにポテトが食いたいかと、軽く隣を睨みながらも、大人しくつまみの入った皿を二人の間に置く。
借りを作るのは嫌いなのだ。
「サンキュ」
その言葉とともに、彼はポテトを一つつまんでトマトソースに浸し、自身の口に放り込んだ。
無言でいるのにも飽きてきたので、私はソーセージを食べ終えてから、彼に話しかけた。
「今日の依頼は何だったの?」
「ああ、ちょっくら赤龍の討伐に行っていた」
「ちょっくらどころのレベルじゃないんだけど」
胡乱な目を向ければ、何が楽しいのか、彼はくつくつと笑う。
まったく、笑いごとじゃないってのに。
もう慣れてしまった非常識なやりとりは、酒場をざわめかせるには十分だった。
周りでは、さまざまな会話が飛び交い始める。
「まさか、龍殺しの英雄のテオヴァルト?」
「本物!?噓でしょ……」
「やだ、話しかけられないかな……?」
――失言したかもしれない。
素早く話が伝播してゆくのを感じて、小さくため息を吐く。
(しばらくは騒ぎになるんだろうなあ)
そう。
件の黒龍、以前――といっても数百年前――は、軍隊が向けられたこともあるというのだ。
しかし、それでもドラゴンを倒すことはできず。それ以降、そのドラゴンは、一度暴れれば手が付けられないことと、吐く息と体液に毒が含まれており、ドラゴンの住む周辺が汚染されてしまうことから、討伐対象として登録され続けてはいるものの、できる限り刺激しないように、という共通認識のもと、数百年もの間放置されていたそうだ。
それをたまたま、色々と規格外なテオヴァルトが単身で倒してしまい、彼の名は一気に広まったというわけだ。
しかし、普段はあまり自分から名を名乗ろうとせず、英雄視されることもそこまで好まない――周辺国の王族がこぞって褒美を出そうとしたり、お抱えの騎士にならないかという申し出をしたりしたが、それをすべて拒否して別の国にさっさと移動した――ことから、彼の姿は有名ではない。
本人は別に隠そうとしているわけではないのだが、冒険者として、気ままに旅をしながらそういった仕事を引き受けているため、噂が届きこそすれ、彼を一目見て、“あの”テオヴァルトだと気づく人はほとんどいないのだ。
まあ、私もあちこちを点々としながら冒険者をやっているし――なんなら、なぜか彼とよく経路が被っている――そのことを否定するつもりはない。
だが、目立つことは嫌いだ。
たとえ皆が見ているのはテオヴァルトだけだとしても、自分の方に視線が集まると、私はひどい苦痛を感じてしまう。
彼もそのことを思い出したのか、苦い顔をして、「悪い」と謝ってきた。
「気にしないで、別にテオが悪いわけじゃないし」
そう言って、視線を気にしないようにしながらポテトを口に放り込んだ。
そんな私をじっと見ながら、テオはぽつりと呟いた。
「なあ、ヴィー。お前は何故そこまで、注目されることを厭う?」
――あの一瞬で、俺に結界を張れる腕だ。その気になりゃ、Sクラスにだって余裕でなれるだろ?
そう続ける彼の瞳は、いつになく真剣で。
私は眉間に皺を寄せ、はあっとため息をついた。
話してやるべきだろうか。
そもそも、話してもいいのだろうか。
そんな風に葛藤しながらも、気がつけば私は、テオヴァルトの目をまっすぐに見て、口を開いていた。
「いいわ、話してあげる。――私ね、ちょっと前までは、貴族だったのよ」
***
豪奢なシャンデリアの輝く、とある国の王宮。
そこで開かれていた夜会に、わたくし、ヴァイオレットは出席していた。
銀に輝く長髪は何の細工もされず、背中に流されていて、それがまた美しい。
瞳の色はありふれたものではあるが、左目の下には泣き黒子があり、それが色気を漂わせる一因となっていた。
そして何より、谷間の見え隠れする豊満な胸と尻。そして、キュッとくびれた腰。
その肢体はひどく美しく妖しい魅力に溢れていた……らしい。
そんなわたくしは良くも悪くも人目を引き、会場入りするや否や、たちまち皆の話題へと上がった。
「まあ、ご覧になって?あの下品な体。なんてふしだらなのでしょう」
「髪を結いあげないなんて……常識もないのかしらね?」
「おお、ヴァイオレット嬢のご登場だ。今宵はどんな男を釣り上げるのか……」
「一度は楽しんでみたいものですねえ。まあ、結婚だけは御免ですが」
――いつも、こうだ。
この社交界に、私の味方はいない。
常ならば会場の隅でじっとしていて、頃合いを見てさっさと帰っていた。
でも、今日は違う。
カツ、カツと音を立てて、わたくしは広間の中央に立った。
そして、談笑している王太子と王弟に向かって一礼する。
ふわり、と笑みを浮かべたわたくしは――
ザシュッッ
わたくしは、ドレスの袖に潜ませた短剣で、自身の左頬を深く傷つけた。
真っ白な肌に真っ赤な液体が滴り落ちる光景は、さながら、たった今食事を終えたばかりの吸血鬼の様だっただろう。
飛び散った鮮血が、淡い緑のドレスにどす黒い染みをいくつも作り、丹念に磨かれた広間の床をも汚す。
甲高い叫び声が聞こえる。
誰かが倒れたような音もした。
バタバタと、憲兵たちがこちらに向かって走る気配を感じながらも、わたくしは止まらない。
あえて結い上げずに垂らしておいた髪を左手で一つに纏め、血のベッタリと付着した短剣をそこに当てる。
血で切りづらくはあるが、無理やり刃を押し付け、時折ぶちぶちと音を立てながらも、母親譲りの銀髪を断ち切った。
皆が啞然とする中、わたくしは口を開く。
「――これで、わたくしがこの体を使って殿方を誘惑していた、なんてことはおっしゃられませんよね?だって、皆さま曰く『けしからない淫らなわたくしの体』には、わたくし自身で傷をつけたのですもの」
十六でデビュタントを果たしてから五年間、ずっとずっと言われ続けてきた。
――常に男を誘っていると。
わたくしはただ、他のご令嬢方よりも発育が良かっただけ。
脂肪が胸と尻にばかり行き渡ってしまうことが、わたくし自身、嫌で嫌で仕方がなかったのに。
……そんなわたくしだって、初めは夢を見ていた。
素敵な貴公子に見初められる、甘やかな夢を。
――なんて、馬鹿だったのでしょう。
デビュタントを果たしたその日に、わたくしは休憩室へ引っ張り込まれかけた。
それも、運の悪いことに、女好きで有名な伯爵から。
身分が下だということもあって、強すぎる抵抗もできず、終始泣いていたのを覚えている。
相手が酔っぱらっていたことも幸いして、なんとか逃げることができたけれど、世間はそう見てはくれなかった。
訴えてやりたかったのに、相手の身分が格上だったから、泣き寝入りせざるをえなかったことも、噂を膨らませる要因になってしまった。
そして、何よりも。
「そんなけしからん体をしている方が悪い。誘っていたのだろう?私はそれに乗ってやっただけだ」
抗議しに先方を訪ねれば、伯爵からはそう言われ、
「主人を誘っておいて、抗議しようだなんて、白々しい!二度とあたくしたちに近づかないで頂戴!」
きっとわたくしの味方をしてくれると思っていた伯爵夫人からは、そう罵られた。
それで、わたくしの心はポッキリと折れてしまったのだ。
そこに存在しているだけで罪なのだと、そんなことを言われて耐えられるほど、わたくしは強くなかったから。
そのうえ、わたくしの両親ですら、顔をしかめてこう言い放ったのだ。本当に、わたくしが誘ったのではないのかと。
わたくしのことを、信じてくれると思っていたのに。
――そう、信じていたのに。
さらに、その夜会以降わたくしは、さまざまな男性から言い寄られることとなったのだ。
と言っても、物語のように可愛らしいものでも、美しいものでもない。
デビュタントと同じように休憩室へ連れ込まれかけたり、馬車へ引きずられかけたり。勧められた飲み物に媚薬を混ぜられていたこともあれば、庭園の死角で無理やり事に及ぼうとした者もいた。
幸い、騎士の兄から護身術を習っていたし、そこそこの魔法を使うことができたから、どれも未遂で済んだけれど。
だけど、そんなことが重なって、気がつけばわたくしは、女性からは男を誑し込む悪女だと陰口を叩かれ、まともな異性からは遠巻きにされるという最悪な立ち位置に居た。
ただの男爵令嬢が、その噂を打ち消すことができるはずがなく、気がつけばわたくしは、傾国の悪女と呼ばれるようにまでなってしまった……なんて、まったく笑えない。
このころになると、家族ですらわたくしのことを一切信じてくれなくなった。
母や父。兄からは、何か新しい噂が立つたびに怒られて、侍女たちからは聞こえるように悪口を言われ、女性にだらしない庭師からは遊びの誘いを受けた。
それでもわたくしは、壊れてしまいそうな心と体に鞭を打って、家族のために少しでも良い結婚相手を見つけようと、夜会へ出席していた。
……でも、耐えきれなかった。
ふしだらな女だと言われるたびに心が抉れて、擦り切れていった。
信じてもらえないとわかっていても、みっともなく縋り付いて、誤解だと、それは嘘だと叫んで、汚名を雪いでやりたかった。
そんな中、ある出来事があった。
――とある夜会で、王太子殿下と王弟殿下がわたくしのそばに近づいてきたのだ。
もしかしたら、わたくしの不名誉な噂を気にして下さったのかもしれないと、一瞬、淡い期待を抱いた。
しかし、彼らの会話で、それは粉々に打ち砕かれることとなる。
そしてその言葉を、わたくしが忘れることはついぞなかった。
――王太子は言った。「おしとやかな貴族令嬢たちも良いが、たまには破天荒な女とも付き合ってみたいな」と。
その言葉のあとに、わたくしの方に向けられた彼の視線には、小馬鹿にしたような色が浮かんでいた。
――また、王太子を咎めるようにして、王弟は口を開いた。「王太子ともあろう者が、そんな浅はかな考えを持つな。それに、そういった女は既成事実さえできれば、培った手練手管で愛人の座に収まり、贅沢を極めてお前を困らせるようになる」と。
王太子と同じように、ちらりとわたくしの方を見たその瞳には、明らかな侮蔑が宿っていた。
――王族であるこの方々も、わたくしを噂通りの女だと信じて疑っていない。
その事実は、わたくしの肩に重くのしかかった。
そして同時に、それはこの国にはわたくしの居場所がないことと同義であると、わたくしは思った。
だって、そうでしょう?
家族からも、王族からも信じてもらえないような“悪女”なんて、物語の悪役そのもの。
だからわたくしは、この国を出ることにした。
幸い、そこまで裕福な家庭ではなかったから、家事や畑仕事などはそれなりにできる。
培われた護身術も、魔法も役に立つだろうから、市井で暮らすことに心配はなかった。
――だけど、この国に何の爪痕も残さずに去ることだけは、しない。
わたくしがいなくなれば、きっと恋人の仲を引き裂こうとした悪女は正義の前に怯んで逃げ出した……といったお話が創られるでしょう。
それなら、皆の言う「ふしだらな体」を傷つけて、わたくしの噂を否定すれば良い。
馬鹿げた復讐方法だけど、それ以外の方法なんて、思いつかなかった。
だから、わたくしはそれを実行して、さっさと国外へ発ったのだ。
そして、それなりの待遇を受けることのできる上、顔に傷があっても不自然ではない冒険者になって、色々な国を旅している。
自分で思っていたよりも強い魔法を使えることができたから、最初に登録したギルドでは、とんとん拍子にランクが上がった。
だけど、侮蔑や色欲にまみれた視線に晒され続けたせいで、大きな仕事を終えて、たくさんの人から称賛され、憧れの眼差しを向けられるだけで、体が委縮した。
今は、それを避けるために、Cランク以上にはならないようにしている。
とても遠くまで来たものだから、私は、今あの国がどうなっているかは知らない。知るつもりもない。
そして、幸せな恋をしたいだなんて願望も、もはや抱いていない――否、むしろ毛嫌いしている。
髪色をくすませ、適当に短く切ったままにしているのも、頬の傷を治そうとしないのも、体の線が全く分からないようなローブしか持っていないのも、そのためだ。
だって、もう二度と「誘惑している」なんて、言われたくないから――
私の話を聞き終えたテオは、しばらく黙って、俯いていた。
それを横目に見つつ、私は静かにジョッキを傾ける。
先ほどと全く同じものを飲んでいるのに、それよりもずっと苦い。
シュワシュワと弾ける炭酸も、どこか重く感じた。
思い出したくもないことを話したからというのもあるが、どちらかというと、テオが落ち込んでしまったからということの方が大きい。
――だって、彼には笑顔が似合う。
テオに話した昔話には、ひとつだけ噓を混ぜた。
それは、私は恋なんてものを毛嫌いしているということ。
その感情も、最初は――具体的に言えば、テオに出会ってから少し経つまで――、紛れもない本心だった。
でも、彼に出会って。
下心を含まない、快活な笑みを向けられて。
まっすぐで、邪な感情を欠片ほども映さぬ瞳で見つめられて。
一切の先入観を持たずに私を知ろうとしてくれるその姿勢を目の当たりにして。
この人は、私を傷つけた人間とは違う。
この人は、信用できる。
この人は、好意を抱いても、きっと――否。
信用してはいけない。
信用してはいけない。
私は何度、繰り返した?
ちょっと優しくしてもらえたかと思えば、すぐに手のひらを返されて。
今の私には、昔のように無自覚に男性を誘ってしまう要素はないとしても、私は警戒を解こうとは思っていなかった。
――思って、いなかったのに。
でも、自分の感情を制御することは、驚くほど難しくて。
――気がついたとき、私は、テオへの恋情を胸に宿していた。
彼はお誘いをかけてくる女性を冷たくあしらっていて、そういった感情を向けられることを嫌っているに。
彼が私に笑いかけてくれるのも、話しかけてくれるのも、私が彼に色目を使ったりしないために、気軽に話しやすいからなのだと知っているのに。
そんなことを考えながら飲む、爽快感の欠片もないエールに思わず顔をしかめる。
すると、ずっと無言だったテオが、口を開いた。
「……ヴィー」
ゆっくり、嚙みしめるようにして、彼は言葉を紡いでゆく。
「辛いことを思い出させて、悪かった」
ひどく悲しげな瞳で、そう言ったテオに、私は笑いかけた。
「別に、気にしてないから。それより私こそ、重たい話してごめんね?せっかく良い気分で飲んでたのに」
そう笑いかけても、テオの表情は晴れない。
暗い表情をそのままに、彼は再度口を開いた。
「なあ、ヴィー。お前はもう、愛だの恋だのを嫌いになったと言っていたが……それなら、俺の国に来ないか?」
「テオの、国?」
私が色恋の類を厭うことと、彼の国へ行くこととの関係性が分からずに、首をひねる。
「俺の祖国は、獣人の国だ。そして獣人ってのは、自分の番としか結婚しない」
「番?」
「ああ――獣人は誰でも、恋をする相手は生涯一人だけなんだよ。その相手を、番と呼ぶ。大抵相手は獣人なんだが、ごく稀に人間とかの他種族のこともあるな。あと、他種族の場合はともかく、獣人同士ならお互いを番だと認識するから、片思いだとか失恋とかいった言葉は、獣人には通じないことも多い。番同士は互いに引き合うから、番が見つかんねえってことも、そうそうあることじゃねえな」
「番が他種族の場合は?」
「一人前になったらすぐに国を出て、番を探す。俺もそのクチだ」
「……なるほど。つまり、欲情する相手がたった一人だから、私がテオの祖国へ行けば、私の出身国みたいなことは絶対に起こらないって言いたいのね」
「ああ」
「あと、私は人間なんだけど、移住できるわけ?」
「俺が紹介状を書いてやる。向こうではそこそこの立場があるから、大丈夫だ」
「――仮に、私の番がそこにいたとしたら?」
「……俺たち獣人にとって、番は何よりも大切な存在だ。番が嫌がることは絶対にしない。だから、無理やり関係を迫られるようなことはないから、安心してほしい」
「……なるほど、ね」
それはなかなか――否、とても魅力的な提案なのだろう。
冒険者という仕事は精神的に楽だし、私の性にも合っているが、どうしたって危険が付きまとう。
ならば、将来のことを考えれて、彼の祖国へ居を移すことが賢明だ。
――だけど。
「……ごめんね。でも、断らせてもらうわ」
だって、テオの祖国へ行けば、次に彼と再会できるのは、彼が番を見つけて帰国したときだ。
そのときが来るかも分からないし、そもそも来ないでほしい。恋人を連れた想い人と笑顔で会うことができるかと聞かれれば、その自信はない。
一方で、冒険者を続けていれば、テオに会える機会は増える。
今日のように、一緒に飲むことだってできるだろう。
だから。
「そう、か……」
なぜか、少し悲しげな表情で、テオは言った。
彼はエールを追加注文し、その後はずっと黙って酒を飲み続けた。
いつも、会話するときはテオが話題を振ってくれていたので、必然的に沈黙が続く。
店内の喧騒から、私たちの居るこの空間だけが切り取られたかのように錯覚した。
それが、なんだか落ち着かない。
だけど、そんな彼に自分から話しかける勇気など、私にありはしなくて。
そのため、お互いに沈黙したまま黙々とエールを飲み、つまみを口に放り込むことを繰り返しているという、一見すると崩壊寸前の恋人同士のようになってしまった。
お互いに離れるタイミングを逃した私たちは、店の閉店する時刻――要するに真夜中――までその異様な状態から抜け出せずにいた。
ちなみに、お店の人からめちゃめちゃ申し訳無さそうに閉店する旨を伝えられた。
完全に誤解されているが、どうせこの場所に長くいることはないので、忘れることにする。
店を出ようと立ち上がれば、テオが立ち上がろうとしない。
とんとん、と軽く肩を叩いてみれば、意味不明な「だぇらゃぁ」という寝言らしきものが返ってきた。
――この人、泥酔してないか?
そんな一抹の不安を覚えながらも、私はもう一度、今度は強めに彼の体を揺する。
「ヴぃぁりゃあ」
――結果は、変わらなかった。
私は、大きなため息を吐きつつも二人分のお代を払い――財布に優しくない値段だった――浮遊魔法を併用しながらテオの体を支え、店の外へ出る。
そして私の宿まで、彼を運んだ。
他の部屋が空いていれば、宿の人に放り込んでもらえばいいし、空いていなければ私の部屋に連れ込んで、私は朝まで飲める店へ行こう。
責任感が強い彼のことだ。
そこまで世話をされてしまえば、何か礼をしなければならないと考えるだろう。
たとえ、私がすでに別の場所へ移動していても、テオは私の居場所を探して会いに来る。
……そうすれば少しでも、彼が心の赴くままに番を探すことを防げるかもしれない。
そんなことを思ってしまうから、私は。
気づけば、宿の前に着いていた。
女将さんに部屋があるかを尋ねれば、一部屋だけ空いているという答が返ってくる。
「本当に別部屋でいいのかい?なんならあんたの部屋にもうワンサイズでかいベッドを置いても良いんだよ?」
もちろん無料でね、とニヤニヤしながら出された提案は、当然却下した。
これ以上揶揄われるのはいたたまれないため、私は話を早々に切り上げて、テオを部屋まで運んだ。
そしてベッドの上へ放り投げる。
鍵を掛けることは出来ないが、彼ならば、泥酔していたとしても、大抵のトラブルは自分で対処できるだろう。
そう結論づけて、私が部屋を出ようとした……そのとき。
突然、テオが抱きついてきた。
しっかりと筋肉の付いた腕の中に閉じ込められ、驚きのあまり固まってしまう。
彼はそんな私の耳を食み、そっと囁いた。
「ヴィー……愛してる」
――は?
冗談を言うなとそう言えれば。テオを拒絶し、突き飛ばすことができれば、どんなに良かっただろう。
でも、酔って口にしたにしては、あまりにも切ない声色でそんなことを言うものだから、どうしていいのかわからなくなってしまった。
……テオは今、どんな顔をしているのだろう。
胸元に頭を押しつけられているせいで、彼の表情を見ることはできない。
こんなテオは初めてだから、想像することすらできない。
抵抗らしい抵抗もできずにいると、ふと体に違和感を感じた――と思うと、私のローブがバサリと音を立てて床に落ちた。
「……バッカ野郎!」
身体強化の魔法を自分自身にかけ、渾身の力でテオを突き飛ばす。
もちろんローブの中にシャツを着てはいるけれど、彼に服を脱がされたという事実が私を正気に戻した。
このまま流されてしまえば、朝になったときに、テオはひどく後悔するだろう。――番ではない私を抱いてしまったことを。
そんな彼を見るのは、嫌だ。
突き飛ばされたテオはというと、酔っていたこともあって、案外呆気なく吹っ飛んでくれた。
だが、流石と言うべきか、彼は床にぶつかる寸前に受け身を取り、素早く起き上がった。
しかし、吹っ飛ばされた影響で酔いが覚めたのか、テオは真っ青な顔色で私を凝視している。
それが少しばかり不憫だったので、私は無理やり笑顔を作ってみせた。
「テオ、大丈夫よ。今のことは忘れるから、貴方も忘れて頂戴」
「っ…ヴィー、」
テオの顔が、くしゃりと歪む。
そのことに動揺しながらも、私は早口で言葉を続けた。
「酔っていたんだもの、これは事故よ、事故。大物と対峙した後なら、番が相手じゃなくても、そんな気分になるのは仕方ないでしょうし……未遂で終わったんだから、気にした方が負けよ」
それだけ行って、私は逃げるように彼の部屋から飛び出した。
夢中で自室まで走ったけれど、テオが追いかけてくる気配はない。
安心したような、ひどく苦しいような感情に襲われて、ぎゅっと目を瞑ってそれに耐える。
――あのまま身を任せてしまえばどうなっていたのかな。
未練がましいけれど、そんなことを考えてしまう。
ああ見えて、責任感の強い彼のことだ。
彼の番ではない私でも、結婚しようと言ってくれるだろう。
そして、本物の番を探すことを諦めてしまうのだ。
それでも良いんじゃないかと、囁く自分がいる。
相性は悪くないのだし、たとえ一方通行の恋だとしても、それなりに幸せに暮らすことはできるのではないかと。
……でも、私は恐らく、心の奥底では番を求めるテオと居続けることが、耐えられなくなるだろう。
だから、これでいい。
そう、自分自身に言い聞かせて、私は部屋のベッドに倒れ込んだ。
***
……どうすれば、いいのだろう。
ヴィーの居なくなった部屋で、俺は頭を抱えていた。
理由は単純。
酔いにまかせて、俺の想いびと――ヴィーを襲いかけてしまったからである。
しかも、俺は数時間前に彼女の重い過去について聞いたばかり。
その過程でヴィーが男性不信になってしまったということも知ったのに。
それなのになぜ、よりによって一番まずい行動をとってしまったのかと言うと……酒を飲んでいたということもあるが、それ以上に、彼女が俺の番だったから、というのが一番の理由だ。
俺の属する種族、獣人は、生涯たった一人の配偶者と添い遂げる。その配偶者が、番だ。
ヴィーに説明する際には省いたが、獣人は何を置いても――権力や財産、名誉などもその限りではない――番を優先するという性質がある。
そしてその性質に加えて番が一人だけしかいないとなると、当然番に対する執着やらなんやらも、人間よりもずっと強くなる。
自国に番がいなかった場合、故郷を離れてまで番を探しに旅をするのは、そのためだ。
そんなことを考えていれば、ふと、過去の記憶が蘇ってきた。
俺は、人間と比べてかなり力が強いとされている獣人の中でも、頭ひとつ抜けた身体能力を持って生まれた。
俺の国は、最も強い者を王とするという習わしがあるため、故郷から出なければ、俺は王になっていただろう。
だが、それよりも俺は、御多分に洩れず番を探すことを優先した。
腕力には自信があったので、冒険者として生計を立てることに決めた俺は、最も近くのギルドで登録してもらった。
いくつかの仕事をこなしていくうちに、ランクはトントン拍子に上がり、気づけばSランク上位にまで上り詰めていた。
しかし、そのときの俺は世間知らずであり、また、獣人と人間では力の差が大きいということは知っていたものの、それをあまり意識したことはなかった。
――だからこそ、あんな仕事を受ける気になったのだろう。
とある国の生ける厄災、黒龍を倒すなどと。
自身が人間と比べるとあり得ないほどの身体能力を保持しているという自覚があまりなかった俺は、斡旋される仕事の内容では手ぬるいと感じていた。
だから、数百年もの間放置されていた大物に挑戦することにしたのだ。
自分の腕を試してみたいという思いもあったのかもしれない。
……そこで俺は、運命の出会いを果たすこととなる。
龍を倒すのは、思っていたよりも簡単だった。
街に被害が及ばぬよう、結界を張りながら行う戦闘は少々面倒くさかったが、まあ、そこまで辛いものでもなかった。
だが、戦闘の中盤で、ある匂いが俺の鼻をくすぐった。
その瞬間、俺は身体中の血が沸き立つような強い衝動を覚えた。
一度も嗅いだことのないそれの正体は、俺の本能が教えてくれた。
――番の匂いだと。
そこからはもう、無我夢中だった。
今すぐに番の元へ行きたい気持ちを押し殺し、俺は龍への攻撃速度を早める。
程なくして黒龍は絶命し、俺はふっと息を吐いた。
そのときに、本当に絶命したかの確認を忘れてしまったのは、番の匂いで酩酊していたからだろう。
ふと気がつくと、真っ黒な炎が俺に向かって迫っていた。
あの速度なら、結界を展開するよりもきっと、俺が火傷を負う方が先だろう。そもそも、獣人は基本的に身体能力に優れているが、魔法を使うことはあまり得意ではない場合が多い。
俺も魔法を使うのは苦手だし、よしんば結界が間に合ったとしても、その効果は微々たるものだろう。
……まあ、死ぬことはないだろうが――
俺はそう悟り、大怪我をすることを覚悟して目を瞑る。
しかし、覚悟した痛みはいつまで経ってもやってこない。
目を開けると、俺の周りにはひどく頑丈な結界が展開されていた。
魔力の残滓を辿ったその先には、一人の少女がいた。
晴れた空の色をした彼女の瞳は、真っ直ぐに俺を見つめていた。
それが俺と、俺の番――ヴィーとの出会いだ。
――右目から一粒、透明な雫が伝った。
それに気づいた俺は、ゴシゴシと乱暴にそれを拭く。
彼女との思い出を振り返っただけで涙を流すなど、いつから俺はこんなに弱くなったのだろう。
はあ、とため息を吐いて、ぼんやりと宙を見つめる。
「ぜってー嫌われたよなあ、俺……」
ヴィーが最も忌み嫌っていることをしたのだから、当然だ。
でも、それでも。
「これで、終わらせるもんかよ」
夜が明けたら、ヴィーにきっちり謝罪しに行こう。
彼女は自分が俺の番だとは気づいていないようだったから、それも含めて全て話して。それから……
ダメだ。上手く考えがまとまらない。
頭を冷やそうと思い、俺は宿の外へと出た。
こういうとき、体を動かせばある程度頭がすっきりするので、軽く走ることにする。
人気のない場所へ行きたいと思い、魔物たちの住む森の方へ向かった。
走りながら、ヴィーに伝える内容を整理し、それを何度も何度も復唱する。
ふと足を止めると、森の中でもかなり奥まで来ていたことに気づく。
そろそろ戻ろうかと振り向いたところで、後ろの茂みから木の葉の掠れる小さな音が聞こえた。
嫌な予感がして振り返ると、そこには――
***
結局、一睡もできなかった。
布団に潜り込んでも、テオのことばかりがよぎり、ぎゅ、と胸が苦しくなってしまうのだ。
ぐるぐると思考を巡らせた結果、私は覚悟を決めた。
……もう、彼には会わないという覚悟を。
だけど、何も言わずに去るなんてことはしたくないから、最後に想いを告げたいと思う。
玉砕することなんかわかりきっているけれど、それでも何か区切りをつけたいから。
そう決めた私は、夜明けと共に布団から出て、テオに会うために部屋を出た。
コンコン、と、控えめに扉を叩くが、返事は返ってこない。もう一度、少し強めに叩いてみたが、結果は変わらなかった。
思い切って扉を開けると……そこには、誰もいなかった。
そこまで驚くことではないのかもしれないけれど、何やら胸騒ぎがする。
考える前に、私は思いっきり駆け出していた。
テオはかなり魔力が強いので、その残滓を辿るのは、思っていたよりも簡単だった。
彼の魔力の道は魔の森の奥深くまで続いていて、依然彼の目的はわからない。
それでも、それを追って走っていると、微かな音が聞こえてくる。
それは近づくにつれ鮮明になってゆき、やがてその光景を目で追える程度まで近づくことができた。
私の目に映ったのは、銀狼――魔獣の中でも龍に次ぐ強さを持つ種族――の群れに取り囲まれたテオの姿だった。
魔法で狼を倒してはいるようだが、その動きはどこかぎこちない。
もともと魔法を使うのが苦手だということに加えて、動きも鈍くなっているようだった。
龍をさらっと倒してしまう実力の彼ならば、普段ならばそこまで苦戦する相手ではないだろう。……普段ならば。
しかし、彼は愛用している剣を持っていなかった。
おそらく、本人はここまで奥まで来るつもりはなかったのだろう。
だが、今回は相手が悪い。
銀狼は知能が高い上、群れで行動する。
連携を上手く取ることでも有名だ。
流石のテオでも、武器なしで対峙するのはかなり厳しいだろう。
そんなことを考えながら、私はテオに結界を投げつけた上で、狼を群れごと大きな結界で囲い、その中に炎を放り込んだ。
すでに結界で覆ってあるテオ以外の物は全て燃え、一面が一瞬にして焦土と化す。
かなり手荒な方法ではあったが、今は一刻を争うのだ。
私がテオへ駆け寄ると、彼は一瞬目を見開いたあと、顔を顰める。
見れば、背中にざっくりと狼の爪の跡がついている。
だらだらと血を流す背中にそっと手をあて、治癒魔法を使う。
実を言うと、治癒はあまり得意ではないため、応急処置程度にしかならないとは思うが、しないよりかマシだ。
「っ、ヴィー……どう、して」
かなり出血していたようだし、治癒したとはいえまだ傷が痛むのだろう。
彼は絞り出すようにして、そう言う。
「昨日のこと、ちゃんと話し合いたかったのに、貴方部屋にいないんだもの。まだ陽が上ったばっかりだってのに、そりゃ心配にもなるわ」
ついつい、言葉に棘を含ませてしまう。
我ながらもう少し可愛げが出せないものかと、一人落ち込む。
つい、と彼の顔を覗き込むと、彼はなぜか、ひどく嬉しそうに破顔していた。
「――心配して、くれたのか?」
悪い、めちゃめちゃ嬉しい、と呟くテオの言葉に、嘘は全く感じられなくて。
でも――好きでも何でもない女に心配されて、嬉しいものなの?
助けられたことに感謝しているのなら、それだけ言って、さっさとどこかへ行ってくれればいいのに、なぜ私と居ようとするの?
……私なんかにこんなに嬉しそうに笑うなら、貴方は番の前で、どんな顔をするの?
「っっ……バカなの!?愚かなの!?」
色々な感情がないまぜになって、思わずそう叫んでしまう。
「、ヴィー……?」
テオは戸惑いを見せるけれど、私はもう止まれない。
「そうやって思わせぶりな言動で、私を翻弄して、楽しい?貴方が愛せる人が番だけなら、そういうのは番を見つけてから番にやってあげてよ!」
「ヴィー、ちが」
「いいわ、どうせ私がちょろいだけなんだから。ねえ、ごめんね?好きでも何でもない相手に勝手に好かれるなんて、嫌よね?」
「ヴィー!!!」
大きな声でそう言われて、思わず口を閉じた――そのとき。
逞しい腕が私の後頭部と腰に周り、あっと思ったときにはテオに口づけられていた。
角度を変えて何度も行われるそれは、完全に私の毒気を抜いてしまう。
やっと解放されたときには息も絶え絶えで、彼にしがみつくので精一杯だった。
腰に回して腕をそのままに、私の髪をくるくると弄ぶテオは、私の耳元で囁いた。
「やっと、気づいたか?俺の番?」
体が沸騰しそうなほど、熱い。
「初めて会ったときから、ずっと求愛し続けてるってのに、ヴィー、気づかねえし。でも、直接口説いたら逃げられそうだったから」
まあ、一理あるけども。
テオと出会ったころの私は、男性不信のままだったし、彼のことも信じきれていなかった。
「ねえ、ということは、昨日のは、、、」
「ああ、ヴィーの過去を知って、どう口説いたらいいのかわからなくて酒に逃げたら、隣に番がいて、すぐそばにベッドがあるっつー状況下で出てくる欲を、理性で抑えきれなくなった」
――しれっとそういうことを言わないでほしい。
こちらは、もしかしたら目玉焼きを焼けるんじゃないかと言う程度には顔が熱いのに。
でも、幸せそうに笑うテオを見ていると、そんなのどうでも良くなってしまう。
私は、ふ、と口角をあげて、彼の背中に腕を回した。
テオ 「あ、ごめん、ちょっと半日出掛けてくる」
ヴィー「え……どこに行くの?」
テオ 「ヴィーの祖国をちょっと潰してくる」(爽やかな笑顔)
ヴィー「いや、それはやめて」
テオ 「えー」(不満げな顔)
ヴィー「そんなことより、私はテオと一緒にいたい」
テオ 「ヴィー……!」(歓喜)
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