視る力
「う゛ぁぁぁ゛」
春の暖かな陽気が差し込む窓側の席で、ゾンビのような呻き声を出しながら頭を抑える男が居た。
目のすぐ上まで伸びた少し癖のある髪、気だるげな半開きの目をした男――広目天真は、忌々しそうに先ほど見た夢の内容を思い出していた。
「よぉ、どうした?頭なんか抑えて」
そんな時、天真の席に一人の男が近づいて来る。
天真のクラスメイトであり、数少ない友人である里中泰正であった。
「何時も以上に人相が悪くなってるぞ」
「ほっとけ、ちょっと夢見が悪かっただけだ」
「夢見って、授業中寝てたのか?もしかしてバイトが忙しかったのか?」
「いや、別にバイトは関係ない」
「じゃあ何で授業中に寝てたりしたんだ?」
泰正のその問いに、天真は視線を窓の外へと向け、暖かな光が燦々と降り注ぐ青空を見上げながら答える。
「春の陽気に誘われて、かな」
「ただの居眠りじゃねぇか」
心配して損したと、泰正は呆れたように溜息をつく。
「それより、次の授業体育だからさっさと着替えないとマズいぞ」
「げっ、そうだった。確か今日は長距離走だっけ?」
「そうそう、あーあ、雨でも降って中止になんねぇかな」
「そりゃ無理だ。俺の視立てじゃ今週末まで晴れ続きだぞ」
「マジか、天気予報じゃ木曜日辺りから曇りとか言ってたけど」
「まぁ天気予報は外れる事もあるしな、俺のと違って」
体操服に着替えながらそんな会話を交わす天真と泰正、泰正はチラリと周囲を見回しつつ、誰も自分達に意識を向けていない事を確認すると、若干声を抑えて天真に話しかける。
「本当、天真のその目って便利だよな」
「何を今更言ってるんだか、俺の目の凄さなんて泰正も良く知ってるだろ?」
広目天真は、自身が望んだものを視る事が出来るという不思議な力を持っている。
それは透視や過去視など、視る力と言われれば真っ先に思いつくポピュラーなものだけではなく、先程やったように空を視て天気を言い当てたり、舌ではなく目で料理の味を視たりと、その力は多岐に渡る。
その汎用性ゆえ、知られればその力を目当てに大勢の人間が擦り寄ってくるのが目に見えていた天馬は面倒事を避ける為に力の事は公にしていない。
しかし泰正は天真とは小学生の頃からの付き合いであり、天真が信用し力の事を話している少ない人間の一人であった。
「」




