第二話 看守長ビー・ジェー
「起床ーーーーーッ!!!!このスカタンどもッ!
もう2億回は言ったと思うが、ノータリンの君たちのためにもう一度だけ言う
今日も帝国のために働けーーーッ!!灰になるまでッッ!!」
---イエッサー!----
毎日毎日朝早くから看守がうるさい。
奴はこのマディルカ奴隷収容所の看守長、ビー・ジェー
ビー・ジェーは魔族だ。
故郷のノヴァ連合王国に住んでいたころは魔族など一度も見たことはなかったけど
存在だけは知っていた。そして奴隷としてグランディアスにさらわれてきて
初めて魔族を実際に目で見た。
そう、グランディアスは魔皇帝が統べる魔族の帝国なのだ。
「そこのグズッ!!」
明らかにおれを見てビー・ジェーが叫んでいる。めんどくせえ...
「ハイッ!ビー・ジェー看守長様!
なにかございましたでしょうか?」
おれはビー・ジェーの機嫌を損ねないように猫を被る。
「この四半期の帝国に収めるクロムライト鉱石が未だノルマに達していない!これは由々しき問題だ貴様らの労働が足らんせいでこのオレが処分をうけることになる」
それはお前が奴隷を酷使してすぐ玩具にして壊すから労働力がいつも不足しているんだろうが..
と口に出すわけにもいかないので
「なるほど... いかがしましょうか...?」
俺にとってビー・ジェーに返せる言葉は決まっている。奴を肯定するほかにない。
「よし!キサマ、今日の労働終わりにオレの部屋に来い。時間厳守だッ!」
ついにきてしまった.. おれは今まで猫を被って従順なふりをして働いていたので
目を付けられることがなかったのだが、ビー・ジェーはストレスがたまると奴隷を
自分の部屋に呼んで玩具にする。
今回はクロムライト鉱石の採掘量が少ないことへのストレスをおれという玩具で発散するつもりのようだ。
「イ、イエッサー、、」
クソッ、、これから脱出計画を考えようと思っていたのにトンだ災難がふってきた
この呼び出しを断ることは出来ない。なぜなら断ることは死を意味するからだ。
ビー・ジェーが後にしたあと、俺は酷く混乱していた。
この呼び出しに従ったら必ず壊される。ビー・ジェーは生粋のサディストだからだ。これまで奴の部屋に行った者は例外なく身体的欠損、精神的病を抱えて帰ってきた。
これからこのマディルカを脱出する計画を練るっていうのに腕の1本でも持っていかれたら今後俺の人生はどうなる。
「それとも今出るか…?」
それは無理だ。マディルカ収容所は見張りが厳重で、しかも武装している。なんのスキルも天賦もないレベル1の俺が脱出できる可能性は0だ。だから計画を綿密に練らないといけない。
「八方塞がりだ… 」
考えるのも疲れた俺は、労働終了の23時を迎えた。
檻に戻ると、看守が待っていた。
「ビー・ジェー看守長がお呼びだ 行くぞ」
おれは諦めて看守に連れていかれる。
どうすることも出来ない。抗う術がないのだから。
「ビー・ジェー看守長、例の奴隷を連れて参りました」
「よし、部屋に入れろ」
おれはビー・ジェーの部屋にいれられ、ビー・ジェーと二人になった。
「カハハハハッ!クロムライト鉱石のことで帝国がうるさくてなあ
ストレスが溜まってるんだよグズ虫くん」
そういうなりビー・ジェーは、渾身のボディブローをおれにキメてきた。
腹に鉄球を投げられたかのような衝撃が走り、身体がくの字にまがる。
「オエエエエッ! ヴォエッ…!」
おれは嘔吐し、身体が痙攣している。
魔族の放つボディブローは、人間のものとは段違いに威力が重い。
「オイオイオイオイーーーッ!何一撃で沈んでんだこのタコッ!!」
ビー・ジェーはそう言い放ち、丸太のような足で俺を蹴りつける。
「オレはよお、Aレート魔族なんだぜ! テメーみたいなハナタレ小僧じゃちょっと遊んだだけで壊れちまう!ノヴァのSランク冒険者だって殺れる自信はあるんだ」
ノヴァ王国の冒険者には強さを示すSSS〜Fランクまでの階級がある。
それと対をなすように、グランディアス帝国の魔族にはSSSレート〜Fレートと言った階級制になっている。ノヴァ連合王国とグランディアス帝国は長年覇権を巡って戦争しており、常に対立構造にあるのだ。
「オレは今サイコーにイラついてんだよお!クロムライト鉱石の採掘量がノルマに達していない理由、オレはおかしいと思ってたんだ!テメーらスカタンを死ぬほど働かせてるのに足りてねえ訳がねえってな!前から怪しいと思って調べさせてた部下からさっき報告が入ったが"ノーフェイス"の奴らがクロムライト鉱石をほかの部下に横流しさせてたらしいぜ!通りで不足する訳だ 帝国の物に手を出すイカれたマフィアがよお!」
どうやらビー・ジェーのお遊びが原因ではなく、"ノーフェイス"というグランディアスをナワバリにするマフィアがかすめとっていたらしい。まあいくら看守長といえどノルマを達成出来なければ、上から処分されるからそこはちゃんとしていたようだ。
そしてそれを理由に俺は八つ当たりされ死にかけている。
「だからその不足分を今から補わないといけねえ!明日からスカタン奴隷共はデスマーチだッ!キサマはここで死んでもらうがな!代わりならいくらでもいるんだ」
どうやら俺はここで殺されるようだ。
諦めかけたその時、俺は今までにない内から出る殺意を収めきれそうになかった。
ここで殺されるくらいなら刺し違えてやる。
お読み頂きありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、評価を頂けますと、
作者のモチベーションにつながります!
随時更新していきますので宜しくお願い致します!