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賢者が恋した賢者の恋  作者: 北条ユキカゲ
第一章 揺蕩いのプレリュード
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果たされた出会い

 ラシディアとジュメイラはセルシアスの後に続き、白く艶やかな床の上を進んで行く。


 しばらく歩くと、陽の光を受けて鈍く光る床に、不思議な模様が描かれている場所に着いた。



「二人とも、模様の描かれている所まで入っておいで」 



 セルシアスに言われた様に、二人がその模様に足を踏み入れると、まばゆい光に包まれ、次の瞬間には何処か違う場所に移動していた。



「わ! びっくりした……セルシアス様、ここは?」


揺蕩いし叢雲(たゆたいしむらくも)の内部だ、これからはここが皆の家だよ」



 二人は言葉なく辺りを見回す。白っぽい壁や柱は半透明で外が透けて見え、正面には人の頭ほどの大きさの、ゆらゆらと青白い炎の様なものを纏った球体が浮かんでいる。



「叢雲、新しい家族だ、挨拶をしてくれ」



 セルシアスがその球体に向かって話しかけると、暫しの静寂の後、球体から、と言うよりも周囲全体に声が響く



「……えっ⁉ あ! あの……その……お、お元気……ですか……?」

「……⁉」



 ラシディアたちは、その球体が答えたという事よりも、その声がめちゃくちゃ緊張しているという事に衝撃を受けた。



「あ……ええ……元気よ……でも、何て言うか、あなたは大丈夫?」



 ジュメイラが優しくそう答えるが、ラシディアは笑ってしまっている。



「ははは、叢雲は極度の人見知りなんだ、許してやってくれ、そのうち慣れる。それと……」


 セルシアスがそこまで言うと、後ろから「おかえりなさい、セルシアス」と、品格を感じさせる女性の声が聞こえた。


 ラシディアたちが声のする方を振り向くと、大きな窓の外に広がる青空を背に、波打つ青藍の長い髪をした背の高い美女がゆっくりと歩いてくるのが見えた。



「ただいまジュベラーリ。この二人のご両親にもてなして頂いてね、すっかりご馳走になってしまったよ」


「あら! そうだったのね! 今度何かお返ししなきゃいけないわね!」



 キラキラ輝く紫のドレスに身を包み、女王のような気品を漂わせるジュベラーリだが、その気高い雰囲気とは対照的な親しみやすい口調でそう言うと「初めまして! 私はジュベラーリ、よろしくね!」と、屈託の無い笑顔でラシディアたちを迎えた。



「私はジュメイラよ! こちらこそよろしくね!」

「ラシディアです! よろしくお願いします!」とラシディアは平静を装う。


 何しろラシディアは、ジュベラーリのあまりの美しさに実はひっくり返る程の衝撃を静かに受けていて、本当は内心穏やかではなかった。


 女の自分でさえ見とれてしまう魅惑的な身体に、男であれば酔ってしまうのでは無いかと思う程の色香を放つ絶世の美女ジュベラーリ……果たしてこのジュベラーリはセルシアスとどういった関係なのか? 



 ────まさか……奥さん!?



 衝撃の想像に一人でくらっとするラシディアだったが、それとは別に、もうひとつ気になる事があった。


 話す感じも嫋やかで、聖女の様に優しい雰囲気のジュベラーリだが、その青藍の髪で僅かばかりに隠した左眼には、強力な魔術を施した眼帯をしている。



 ─────あの眼帯は一体……?



 ラシディアが眼帯に気を取られていると、横からまた誰かが声を掛けてきた。



「真っ赤な方がジュメイラで、そっちの水色の子がラシディアだな! 俺はナドアルシヴァだ、シヴァで良いぜ! そんでこっちがリサイリで、こいつがメイダーン」


「僕リサイリ!」


「あ、メ、メイダーンだ……よろしく……」



 白髪混じりの短髪で、如何にも戦士と言った風貌のナドアルシヴァと、セルシアスと同じ銀色の髪をした五歳ぐらいのかわいらしい少年リサイリ、そして、珍しい漆黒の髪を一つ縛りにした細身の美青年メイダーン。

 しかしもはやそんな事は一切目に入らず、ラシディアはジュベラーリをじーっと見ている。



「あら? ラシディア? どうしたのかしら?」


「……はぁっ! ごっ、ごめんなさい! あの、あ、あんまりその、綺麗なもんだからつい……」と、ジュベラーリの所作振舞いを観察して、彼女がセルシアスに対してどの様な感情を持っているのかを真剣に分析していたとは当然言えず誤魔化す。


「まあ嬉しい! もっと言って!」


「あ、は、はい!」



 そんな様子を眺めながら、ナドアルシヴァがメイダーンの肩に、そのごつくて大きい手をどかっと置く。



「いやー嬉しいねえ! あんなに可愛い子が来てくれて! しかも二人も! やっぱり華やぐねえ、なあメイダーン……ん?……あれ? んー?……あーっ!」



 反応の薄いメイダーンの視線の先を目で追ったナドアルシヴァが大声を上げる。



「あー! お前! ジュメイラにひとめぼぉぶぶぶぶ………」


「待って待ってっててぇええ―!」



 メイダーンは『お前ジュメイラに一目ぼれしやがったな!』と何の遠慮もなく大声で言おうとしたナドアルシヴァの口を押え込む。



「え? 私?」


「あぁっ!……な、何でもないんだ!  あ、あの……ちょ、ちょっと待って!」



 ナドアルシヴァの声に振り向いたジュメイラを見て、メイダーンは顔を真っ赤にすると、ナドアルシヴァの口を押えたまま後退りして離れて行く。


 すると、それと入れ替わる様に、リサイリがジュメイラの前にトコトコとやって来て「メイダーンはもうジュメイラの事好きになっちゃったみたいだよ」と、にこやかな顔でぺろりとばらした。

 


「さて、ラシディア、ジュメイラ、彼らについて少し話しておこう」セルシアスはそう言って紹介を始めた。



「リサイリは古の魔導機を操る古代魔導騎士で、あちらで揉めているメイダーンとシヴァは、もののふと聖魔導士だ」


「え⁉ リサイリって、あの子が魔導騎士⁉」と、ジュメイラが驚いてリサイリの方を見て、その隣では、「もののふ?」とラシディアが首を傾げる。


「もののふとは異世界の屈強な戦士の事で、私が召喚したのだ」


「異世界の屈強な戦士……あの、それってシヴァの方よね?」



 ジュメイラが、向こうの方で揉めているメイダーンとシヴァを交互に見ながらそう言うと、「そう思うだろう?」と言って、セルシアスが、してやったりといった表情でニヤリとする。



「もののふはメイダーンの方だ、シヴァはああ見えて癒しの女神の加護を受けた『慈しみの聖人』なのだよ」


「えぇー⁉ 全然そんな風に見えない!」



 ジュメイラとラシディアが声を上げて驚くと、セルシアスが「ははは、私はね、こうして彼らを紹介するのが大好きなのだよ、みんな一様にそう驚いてくれるからね」と言って本当に嬉しそうな顔をした。そして「では本題のジュベラーリだが……二人はどう思う?」と二人の顔を覗き込む。


 セルシアスにそう言われて、ラシディアとジュメイラは、優雅に脚を組んで椅子に座っている、まさに麗しいという表現こそが相応しいジュベラーリへと目をやると、ジュベラーリもなんと言う答えが返ってくるのか、わくわくした表情で二人の方を見つめ返す。



「私はてっきり、ジュベラーリさんが癒しの庇護者かと思っていたんですけど……」


「普通考えたらそうよね。まさかあっちのゴリゴリの方が癒しだとはね」



 ジュメイラがそう言って、未だに向こうで揉めているナドアルシヴァたちに目を向けると、「さあ、二人とも、あっちの二人はどうでもいいから、私が一体何者で、どんな役割を担っているのか……答えてみて! さあ!」と、ジュベラーリが返事を待ち切れないと言った様子で回答を催促する。



「月影の神のエルミラもいる事だし、もしかして、女神……だったりして」


「あ、なんか精霊とか?」



 二人の回答が余程嬉しいのか、ジュベラーリは両手を口に当て、碧眼の瞳をうるうるさせながら「……嬉しいわぁ……!」とだけ言うと、パッと両掌を広げ「でも残念! 二人とも不正解!」と言って悪戯に微笑む。



「えー、じゃあ意外と、ジュメイラみたいな戦士だったりして」とラシディアが訊くと、ジュベラーリが「あ、近い近い! 正解はね……」と言いかけたところでセルシアスが口を挟んだ。



「ジュベラーリ、私の楽しみを取らないでくれ、君の正解発表は私の何よりの楽しみなんだ」


「フフ、そうね! じゃあ、お二人に正解を教えてあげて!」



 ラシディアとジュメイラがセルシアスに注目する。

 セルシアスは嬉しそうに二人を見る。



「ジュベラーリは……」



 ラシディアとジュメイラは息を飲みさらにセルシアスに注目する!

 セルシアスはさらに嬉しそうに二人を見る!



「ジュベラーリは殺戮の狂戦士スラーダーベルセルクルでした!」



「えぇえーーー⁉」

麗しいジュベラーリはまさかの狂戦士! 実はジュベラーリ、とんでもない過去をかけているのですよ!



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