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賢者が恋した賢者の恋  作者: 北条ユキカゲ
第四章 バスタキヤ奇想曲 第二部 伝説の起源
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残照に誓う

 空間を引き裂く轟音が響き渡った。


 龍の口から放たれた黒の光線が、赤い雷電を纏う極大な直線となり、朱を滲ませる淡い青空を分断した。


 空を漂う雲が、暗黒の光に巻き込まれて消えていく。


 暫くの後、天空を二分する黒の光は消えた。澄み渡った空は、無音を取り戻した。


 静寂の夕空、白く波立つ大海────。想像を絶する激烈な攻撃に、エルゼクティアは言葉を無くした。



 ────危なかった……あのまま突撃していたら、あの攻撃はかわせなかった……



 龍の口から黒の光線が放たれる直前、特攻しようとしていたエルゼクティアはシャーリアの言葉によって咄嗟に攻撃をやめ、空に駆け上がっていた。


 必死の懇願を宿すシャーリアの一言が、(たけ)り立つ闘志に一瞬の冷静を与え、そして救った。それを知ると同時に、エルゼクティアは確信した。



 ────シャーリアは、龍と意識を共有している。



 南下を続ける龍が『白く背の高い建物』を目指している事、そして、たった今目撃した未曾有の攻撃を、直前に察知した事────。


 それは、シャーリアが龍の思考を理解しているからだとしか思えなかった。


 エルゼクティアの膝の上、小さな手で服を掴んでいるシャーリアが、黙ったまま何処か遠くを見つめている。その視線の先、光線の放たれた方向へ、エルゼクティアは目を凝らす。


 シャーリアと龍────。その疑問に向けられていた意識が、視界に映し出された光景に塗り変えられた。



「────なんて破壊力……!」



 龍の圧倒的な力を示すその景色が、エルゼクティアにその驚愕を言葉にさせた。


 遥か彼方にあるブラシカ山脈の一部が抉り取られ、そこにあったはずの緑豊かな山々が、姿を消していた。



 ────あんなの撃たれたら、王都なんてひとたまりもない!



 戦慄と共に、後悔が湧き上がった。


 ウードメッサ地方にのみ伝わるイェシェダワの伝説を知らないエルゼクティアは、文明を滅ぼした神の怒り、漆黒の龍の存在など知らない。シャーリアを連れ出した事で龍は解き放たれ、こんな事態を引き起こすなど予想できるはずはなかった。


 だからこそエルゼクティアは、イェシェダワの龍とシャーリアが何か特別な関係にあると知りつつも、眠らるる樹海からシャーリアを連れ出したのだった。


 あの時、幼いシャーリアを暗闇の山中にただ一人、置き去りにする事など出来ようか。


 たとえ、そうする事で邪悪な龍が目覚めると知っていたとしても、決してそんな事はしない。


 シャーリアを救う事は、運命だった。この強大な邪悪、漆黒の龍を屠る事も、自分に課せられた運命なのだと、エルゼクティアは思った。


 水平線に沈みかけた太陽が、最後の陽光でエルゼクティアの横顔を照らす。微かな後悔は残照に熔け、湧き上がる覚悟に熱を与える。

 

 

 ────何としても、龍を止めなければならない。シャーリアを連れ出した自分にはその責任がある。



 命を賭す覚悟を固めたエルゼクティアの眼下、悠然と、龍が動いた。


 真上に居るエルゼクティアの事など見向きもせず、真っ直ぐに、南の方角へと鎌首を定める。

 海中に沈んでいた巨躯が這い出してくる。漆黒の鱗を流れ落ちる海水が残照に煌めき、龍が再び、シャムアルジールを目指して空へと浮かび上がる。


 絶対に、王都へ行かせるもんか!────。エルゼクティアは断罪せし聖女を構え、龍へと突進して行った。

 決死の覚悟で龍に挑むエルゼ。でもたった一振の大剣で龍を倒す事など出来るのでしょうか!? 彼女が今いるのはユールベルタと王都の間に位置するマサフィ湾上空。そこへ、龍の出現を受け王都を緊急出動したダラジャトゥの近衛師団が……!!!


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