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賢者が恋した賢者の恋  作者: 北条ユキカゲ
第四章 バスタキヤ奇想曲 第二部 伝説の起源
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甦る災厄

 爆音が連なり、響き渡る────。数隻の戦艦と無数の魔導機が、地上に停る一隻の巨大な戦艦を攻撃している。

 壮絶な光景に、キシャルクティアが言葉を無くす。独り言のように、リサイリは言った。



「あれは……何処の軍隊?」

 

「空から攻撃しとる艦は共和国の【エル=ハナン】やな。地面でやられとるでかいヤツはダラジャトゥの【金剛仁王】や」



 金剛仁王がレーザー砲を乱れ撃ち反撃しているが、ダラジャトゥが劣勢である事は一目で分かった。

 戦場はシャムアルジールの北東。市街地から遠く離れた砂漠地帯。都に被害が及ぶ心配はない。


 でも……だけど────。リサイリの心に、絡まり合う糸のような、複雑な思いが湧き上がった。


 大神という忌まわしい力を利用して政権を奪い、その暴挙に抵抗した咲きにける雷を危機に追いやったダラジャトゥは、紛れもない敵。

 しかし今、ダラジャトゥが都の人々を守ろうとしているのは事実。

『シャムアルジールを守ってくれ!』────。あの時、ディブルガルがマリーチに言ったあの言葉が、偽りだとは思えない。


 なにが善で、なにが悪なのか? その答えも、自分の取るべき行動も見つけられないまま、リサイリはただ、猛攻に晒される金剛仁王を見つめる。


 リサイリは率直に、金剛仁王を助けたいと思った。


 それが敵であれ何であれ、人が命を落として良い理由などあるはずがない。


 今の自分には力があり、人の命を奪わず、誰も傷付けることなく、争いを治める事が出来る。

 しかし、そうする事が本当に正しい行いなのかどうか、リサイリは確信が持てなかった。


 暗闇に迷い込み、進むべき道を見失ってしまったような気がした。

 

 今、僕がするべき事、したい事、それは────。リサイリは躊躇いを振り払う。



「とにかく、早くマリーチを探そう!」



 この瞬間はっきりと見える進むべき道筋は、それしか無い。遠くで大勢の命が失わている今、その決断は非情と思えたが、リサイリはそう言い切った。

 激戦の空から目を背けるように、地上へ視線を投げ出す。

 リサイリが背を向けた空を、言葉なく見つめていたキシャルクティアが、震える声で言った。



「リサイリ待って……あれ……あれを見て……」

 

 キシャルクティアの怯えた眼差しの先、激戦のそのさらに先へと、リサイリは視線を送る。

 仄暗い闇に沈むブラシカ山脈の稜線が、暗雲に覆われた黒の空に波打っている。


 稲妻が走った。


 瞬く雷光が暗闇を露わにし、その中に渦巻く災厄の姿を、リサイリに見せた。



「龍……!?」



 樹木の枝を思わせる巨大な角と、揺らめく炎のたてがみ────。不気味に艶めく漆黒の龍が、のたうつ様にうねりながら、暗い空を飛び翔ている。


 狂気と、煮え(たぎ)る怒りが、その姿から伝わってくる。

 

 当然、リサイリもキシャルクティアも、それが一体何なのかなど知る由もない。しかし、二人が連想するものはひとつしかなかった。



 ────シャーリア!?



 色こそ違えど、その龍はブラシカ山脈で目撃した龍、白銀に輝くイェシェダワの龍と同じ姿に見えた。

 

 単純に、龍である以上、それはシャーリアであると考えた方が自然だが、リサイリは自身の想像を否定する。


 そんなはずはない、あれがシャーリアであるはずがない────。なんの確証も無く、リサイリは願うように、そう思う。


 だとしたら、あの漆黒の龍は何なのか? 慈雨たる御手が、その答えを知らせる。


 

「……おいリサイリよ……ありゃあやべえぞ……」


「あの龍が何か、慈雨たる御手は知ってるの!?」


「いや、ワイのデータベースには無えから正確には分からねえが、ありゃ思念体だな。凄まじい怒りが、強大な魔力でもって実体化したもんや……」


「凄まじい怒り……!?」



 太古の昔、驕り高ぶった人間たちへ下された怒りの鉄槌。古の神々によって生み出された憤怒の化身【イェシェダワの暗黒龍】────。その存在についてリサイリは何も知らなかったが、黒雲の空を走るその漆黒の龍が最悪の災厄であるということは、本能が感じ取った。


 あれは止めなければならない────。直感だけがリサイリにそう思わせた。しかし、安否の確認すら出来ていないマリーチを放って、この場を離れる訳にはいかない。


 

 ────とにかく今は、マリーチを見つけ出す事が最優先。他の事はその後で良い。



 リサイリは迷いを断ち切り、龍から目を逸らした。その瞬間、キシャルクティアが言った。



「止まった……」



 視線を、災厄へと戻す。空をかき乱すように走っていた黒の龍が動きを止め、暗雲を纏ってただ空に浮いている。



「止まっとるな、何してんねやろな」



 慈雨たる御手が不思議そうに、そう呟いた。


 理由は分からないが、龍は止まった。またいつ動き出すとも知れないが、今はそれに構っている時ではない。

 共和国軍と金剛仁王の戦闘も続いている。


 一刻も早くマリーチを見つけ出し、その後の状況に応じ、どうするか判断する────。リサイリは決断する。



「キシャル、まずはマリーチを探そう!」


「う……うん……そうだよね……そうしよう!」



 躊躇いがちにキシャルクティアはそう言うと、眼下の森へと目を凝らす。

 リサイリはマリーチの無事を祈って、地上を目指す。


 慈雨たる御手の背を向けた険呑の空、遥か彼方で、災厄が宙に留まっている。

 漆黒の龍は、怒りに満ちた深紅の双眸を一点に向ける。


 その視線は、深い慈愛と屈強な覚悟を、捉えていた。



 

 なんだかもうあっちこっちで大変な事態になってるんですけど!? だけどリサイリは、マリーチを優先しました! すぐに見つかると良いんだけど、マリーチはナジャハヴァルドに保護されている状態。当然簡単にいきそうにはありません! 慈雨たる御手もいるけど、姿を現す訳にはいきません。戦いになっちゃいますからね。となると、リサイリとキシャルでどうにかしないといけないんだけど、大丈夫かな!? そんなところへ、思いがけない味方が……!?


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