表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者が恋した賢者の恋  作者: 北条ユキカゲ
第四章 バスタキヤ奇想曲 第一部 太古の空
132/196

愛、それは豹変

 絹のように滑らかな舌触りと、歯を押し返す、ほど良い弾力────。噛むほどに溢れ出るほのかな甘みが口の中に広がり、嫉妬を滲ませるラファリファを恍惚の表情へと変える。



 ────なんなのコレ……すごく美味しい……!



 ひとつ、また一つと、何かにとり憑かれたように無言でお団子を口へと運び、全てのお団子を平らげるとラファリファは、そのままぴたりと動きを止めた。

 静寂が訪れ、そこに居る全員が、不思議そうに首をかしげてラファリファへと視線を注ぐ。



「お……おい、ラファリファ……どうか……したのか……?」



 微動だにしないラファリファにシンディガーが問いかけるが、反応は無い。明らかに様子がおかしい。



 ────本当に何か入っていたのか⁉



 もし自分があのお団子を食べていたらどうなっていたのか? 戦慄するシンディガーは、プラハの無邪気な笑顔を思い出して背筋が凍る。

 この異常な状態が惚れ薬によるものだったとして、これからどうなるのか想像もつかない。

 ラファリファが知るはずもない、しかも同性のプラハを好きになる事などあり得るのだろうか? それとも、ここに居る誰かを好きになってしまうのか? 


 いずれにしても、何らかの変化が起きるはず────。期待と不安の入り混じるシンディガーの視線の先、ピクリともしなかったラファリファがゆら~っと動いたかと思った次の瞬間、ラファリファはその場で、ぶっ倒れた。

 ラファリファが倒れたと同時に、シンディガーを磔にしていた【黒の懺悔】が消え去る。


 拘束の解けたシンディガーは、即座に魔法の突風を巻き起こしてダラジャトゥの兵士たちをなぎ払う。


 吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた兵士たちが呻く。



 ────何がなにやら分からんが、今のうちにラファリファを……

 

 

 拘束しようと、シンディガーが粛然(しゅくぜん)幽牢(ゆうろう)を放とうとしたその時、仰向けに倒れていたラファリファが「よっこいしょっ!」と言ってひょいっと起き上がり、拳を突き上げ満面の笑みで声高らかに叫んだ。



「だい・せい・こうーーーいえい!」


「い……いえい……⁉」



 どう考えても()()気品あるラファリファの言いそうにないその言葉と、弾けるほどに天真爛漫なお茶目な笑顔に、シンディガーも、吹き飛ばされたダラジャトゥの兵士たちも、そこに居る誰もが絶句して固まる。

 ラファリファはそんな周りの様子など気にもせず「いぇいイェイ! いぇーい!」と言いながら、嬉しそうにお尻を振って踊り始める。



「いぇーい! いぇーい! やったヤッター!……ん……何この状況? どういう状況……?」



 嬉々として踊っていたラファリファは動きを止めてそう言うと、人差し指を顎に当て、部屋の隅に押しやられた兵士たちを見渡しながら「ん~?」と口を尖らせ、不思議そうな顔で首を傾げる。


 そして、唖然とするシンディガーへと目を向けた瞬間、ラファリファは驚愕の表情で固まり、呟いた。



「な!?……なな……なんでシンディガー様がそこにいるの⁉……え⁉ 待って……じゃあこれって……⁉」



 ラファリファはわなわなと震えながら、取り乱した様子で自分の顔、胸、お尻を触わりながら狼狽える。



「待ってまってちょっと待って! やだ! なにコレ? 女⁉ なんで⁉ 誰よこの女!」



 あのお団子には惚れ薬が入っているという事だったが、この状態はどう考えても惚れ薬の効果とは思えない。

 それに、この話し方、この仕草……間違いない────。慌てふためくラファリファを見つめ、ある確信に至ったシンディガーは声を上げた。



「おい! プラハ!」


「はっ……はいーーーっ!」



 ぴりりとしたシンディガーの言葉に飛び上がり、気をつけの姿勢で固まるラファリファに、シンディガーは呆れた様な、ほっとしたようなため息を漏らした。


 やはり……このラファリファには今、プラハが乗り移っている────。どういう原理なのかは分からなかったが、あのお団子には何らかの薬が入っていたか、魔法がかけられていて、プラハはそれを食べた者に憑依する事が出来るようだった。

 


 ────食べなくて本当に良かった……なんという恐ろしい女子だ……



 あれを自分に食べさせて、プラハは一体どうするつもりだったのか? 想像もつかないプラハの思考回路にシンディガーは再び戦慄を覚えたが、奇しくもそれによって状況は一変した。

 この機会を逃すわけにはいかない────。シンディガーはラファリファの腕を掴んで引き寄せると、小声で語り掛ける。



「何を企んでいたのか知らんが、おかげで助かった、よいか、拙者の言う通りにするのだ……!」



 何が起きているのか理解できず、唖然とするダラジャトゥの兵士たちを見据えてそう言うシンディガーに、ラファリファはすっとぼけた顔で明後日の方を見ながら、おずおずと答える。



「えー?……だ……誰ですかプラハって……あ……あたし……プラハじゃないです……よー……」


「お主名前を呼ばれてしっかり返事をしたではないか! もう分かっておるわ! ちゃんと言う通りにすれば許してやる! だから言う事をきけ!」


「ほ……ほんと⁉ 許してくれるの⁉」



 嬉しそうにそう言って目を輝かせるラファリファ(※中身はプラハ)に、シンディガーが耳打ちをする。

 絶対怒られると思っていたプラハ、の憑依しているラファリファは、ニコニコ顔で「うんうん……うん……」と頷きながらシンディガーの話を聞いて「うん! 分かった!」と元気いっぱいに返事をすると、ダラジャトゥの兵士たちへと向き直り、号令? を発した。



「おーい! みんなー! 良く聞いてー! これからみんな一緒にピクニックに行くよ! だから早く支度してねー!」



 広げた両手の平を口元に添えてそう言うと「命令だぞ♡」と付け加えて、ラファリファプラハが可愛らしくウインクをかます。


 ラファリファの豹変に騒然とするダラジャトゥの兵士たち。全く事態を飲み込めない咲きにける雷の兵士たち。そしてシンディガーは「はあぁ……」と辟易の吐息を漏らし、頭を抱えた。



 

奇しくも、歪んだプラハの愛によって危機を脱したシンディガー! 多分シンディガーは、『ダラジャトゥの軍から逃れ、この場から離れる』的な事を言ったと思うんだけど……ピクニックって……どうしたらそうなるの!? 流石プラハ、頭ぶっ飛んでます! 

しかし、大神と激闘を繰り広げるリサイリたちには危機が迫ります! それに気付いたエルゼが、命懸けの行動に出ます!


面白い! 続きが楽しみ! と思って頂けたら

ブックマーク登録をお願い致します!!

そして更に!!

広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして下さいますと、張り切って続きが書けます!


どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ