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賢者が恋した賢者の恋  作者: 北条ユキカゲ
第一章 揺蕩いのプレリュード
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永遠の少年

 僕の名前はバルシャ……揺蕩いし叢雲(たゆたいしむらくも)に着いた途端、月影の神エルミラ様に拉致されて……おままごとをに付き合わされていたんだ……そう……つい、さっきまでは……



「おい、バルシャよ、そこで何をしておる、早うこちらへ来ぬか」


「え!? あの! はい!……今すぐ、今すぐ行きます……」



 何がどうなっているんだ……エルミラ様は急にいなくなっちゃうし……この人は一体誰なんた……!?



「早うせよと言うておるのが分からぬのか!?」


「あ! は、はいー!」



 師匠……僕は一体どうすれば……?

 音もなく揺らめく青白い炎が、ジュメイラの美しい瞳に映りこんできらきらと瞬いている。

 ジュメイラは熱を帯びない炎が放つその神秘的な輝きを、静かに見つめていた……

 


「あ、あの……さっきから……何かご用でしょうか……?」


「あ、やっとしゃべった」



 ひたすらジュメイラに見つめ続けられていた叢雲が、とうとうしびれを切らしてその口? を開いた。


 基本的に好奇心旺盛なジュメイラは、叢雲に対して非常に強い関心を持っていた。


 まず間違いなく人ではない。そもそも、生物という訳でもなさそう。これは一体何なのか?────。セルシアスに聞けば済む話ではあるが、ラシディアの手前あまり積極的にセルシアスに関わるのは気が引けるという事もあり、ジュメイラは直接叢雲の所へ来て、じーっと観察していたのだった。


 ただただ黙って見ていたジュメイラだったが、叢雲も反応したので、折角だから聞いてみる。


「ねえ、あなたって、一体何なの?」


「え⁉……何って……叢雲……ですけど……」


「それは分かってるけど、名前じゃなくって、何なのかって聞いてるの!」


「だからあの……むらくも……」


「ははは、ジュメイラちゃん! それくらいにしといてやりな可哀想だから」



 叢雲に詰め寄るジュメイラの姿がいじめている様に見えたのか、後ろからやって来たナドアルシヴァは、笑いながらそう言って叢雲に助け舟を出した。



「叢雲はな、この揺蕩いし叢雲その物、言ってみりゃ、心?……いや、魂って言うのかな……そんなもんだ」


「へぇ~、叢雲! あなたすごいんじゃん!」


「え⁉……いやぁ……そんなことは……」


「叢雲はね、お兄ちゃんが命を吹き込んだんだよ!」



 可愛らしい声にジュメイラが視線を下ろすと、ナドアルシヴァの後ろからリサイリがひょっこりと顔を出した。



「あら! リサイリ! あー、もう可愛い! ちょっとこっちいらっしゃい! ぎゅーしちゃう!」


「うん!」



 リサイリが無邪気にジュメイラに飛びつくと、ジュメイラはぎゅ~と言いながらその豊かな胸でリサイリを抱きしめる。


 セルシアスと同じ輝く様な銀髪で、少しくせっ毛のリサイリは、青い半ズボンにサスペンダーを掛けていて、大き目のボタンが可愛らしい、ぱりっと糊のきいた白いシャツを着ている。

 しっかりとお話が出来る事を考えると、少なくとも六歳か七歳くらいかとジュメイラは思っていたが、改めて見ると遥かに幼く、大きさ的には四歳か五歳に見えた。


 近所の子供たちに武道を教えたりして、日頃から子供に接していたジュメイラは、リサイリの外見的な幼さとと、時折見せる、それとは不釣り合いな成熟した精神面に違和感を覚えていた。


「ねえリサイリ? セルシアスさんの弟さんなんでしょ? 一体いくつ離れているの?」


「本当はね、僕はお兄ちゃんとそんなに歳は変わらないんだ」


「えぇ⁉ ど、どういう事⁉」


「えっとねえっとね、僕ね、精神のほとんどを、魔導機にあげちゃったから、子供になっちゃったんだ」



 リサイリの言っている意味が分からずにジュメイラが首を傾げていると、「ははは、それじゃあ分からねえよな」と、ナドアルシヴァがリサイリの隣に腰を下ろす。



「こいつの操る古代魔導機ってやつは特殊でな、人の魂を依り代として動きやがるのさ」


「人の……魂を……?」



 今ひとつ理解が及ばないジュメイラはそれだけ呟くと、ナドアルシヴァを見つめて次の言葉を待つ。



「だから文字通り、リサイリは自分の魂の大部分を魔導機にとられちまって、当の本人は体も精神も子供になっちまったって訳だ」


「取られたって……それってつまり……元々大人だったリサイリが、子供になってしまったって事なの……?」



 ジュメイラはリサイリへと目を向けると、リサイリはおとなしい笑顔でジュメイラを見つめ返した。



「でも……どうして?」



 ジュメイラがそう問いかけると、ナドアルシヴァはリサイリのくせっ毛の頭をわしわしと撫でてから、古い記憶を辿る様に遠くへと視線を向けて口を開いた。



「随分前な、俺たちだけで散りぬる陽に挑んだことがあったんだ」


「散ぬる陽に…⁉」


「そんで、まあ……こっぴどくやられてよ、ああ、あれはひでえ目にあったぜ……その時、俺もセルシアスも死にかけた」



 それまで穏やかで優しい表情だったナドアルシヴァの目が、その瞬間、別人の様に変わるのを、ジュメイラは見た。



「その時俺たちを助けてくれたのが、このリサイリって訳だ」


「じゃあ……その時に……」


「こいつは俺たちを助けるために、その命を全部魔導機にくれちまいやがってよ、まさに、命を擲って(なげう)ってやつだ、おかげで俺たちは助かったがこいつは消えちまいやがってな……あの時のセルシアスときたら、見ちゃいられなかったぜ……」


「あのセルシアスさんが……」



 いつでも冷静で、取り乱す様子など想像する事さえ出来ないあのセルシアスにも、そんな一面があるのだと思いながら、ジュメイラはリサイリを見つめる。そして、その命をなげうって皆を助けたリサイリの笑顔に、目頭が熱くなった。



「でもねでもね、あの後、お兄ちゃんが助けてくれたんだよ僕の事、今でも覚えてるよ。魔導機の中でねえ……あ、そうだ! 僕の魔導機見せてあげる!」



 リサイリはそう言うと、ジュメイラの手をぎゅっと握って走り出す。



「え⁉ ちょ、ちょっと待って⁉ どこ行くの!?」


「こっちこっち! こっち来て!」



 ジュメイラはリサイリに手を引かれ、柔らかい光を放つ美しい通路を走って行った。

バルシャの前に現れた謎の女性は一体何者!?

そして、明かされるリサイリ壮絶な過去! 一体何があったのでしょう!?

このお話も、もう少し先でちゃんと描いて行きますよ!


面白い! 続きが楽しみ! と思って頂けたら

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