スクールライフって何ですか?
「ふぁ…退屈だったな。こんな一銭にもならねーことやりたくねぇ」
入学式を終わらせ、ライドと共に教室へと向かう。
アスクの行動理念は金であり、基本的にはお金にならないことはやりたくない。これも全て金遣いの荒い師匠のおかげで、幼少期より苦労し続けているからである。
「それにしても、リーナさん綺麗だったなぁ…」
「お前、この前からそればっかりだな」
自分の妹が綺麗と言われるのは、悪い気がしないが、同じ話を繰り返すライドにそろそろ嫌気が差してきた。
「お、イリス!」
前方に一人で歩いていた見知った顔に声を掛ける。
「アスク、ここにいたのね。ちゃんと入学式出席して偉いわ。あなたのことだし、一銭にもならないとか行って、サボりそうなのに」
「こいつが出ろ出ろってうるさいんだよ」
呆れながらライドを指差す。
「あ、アスク…お前、俺以外に知り合いいたのか…」
「うっせ。こいつはイリス。俺の昔からの知り合いだ」
「イリス・フォン・アイクシュテットです。よろしくお願いしますね。えっと…」
挨拶の仕草を見ると、さすが魔王の妹だなと感心するアスク。幼い頃は辺境の土地で過ごしていたといえ、イリスは先代魔王の娘にして、現魔王の妹。下手な貴族よりも高貴さを感じさせる。
「ら、ライド・スカイマークですっ!よ、よろしく」
えらく緊張しているライド。
「お前、もしかして女苦手なのか…?」
「そ、そ、そんなことない!!!!!」
食い気味に否定するライドを見てアスクは確信した。間違いなくこいつは女に慣れてない。
「ライドさんって言うんですね。よろしくお願いします」
「ひゃ、ひゃい!」
相変わらずイリスの猫被りはすごいなぁと感心していると、足に痛みを感じた。
「アレイスターさん?どうしたんですか?」
コメカミをひくつかせながら、イリスはアスクを見る。『何も言うな』とその表情が語っているのをアスクは長年の付き合いで感じとる。
「い、いや。なんでもないです。はい」
猫被っているときのイリスはいつも以上に怖いので流しておく。触らぬ神に祟りなし。クワバラ、クワバラと呪文を唱えておく。
「そう言えば、イリス。お前はどの寮になったんだ?」
「私はエルメス寮です。私の制服は黒。あなたとライドさんの制服は白でしょ?この学園は制服の色で所属寮がわかる様になっている様ですよ」
そう言われて周囲を見渡すと、ほとんどの学生の制服は黒だが、たまに白色の制服を着た生徒が混じっている。
「この学園の下位5%がライネス寮所属になるようです。一年生は入学時の成績、上級生は昨年度の成績によって移動があるみたいですね」
「「なるほどなぁ」」
ライドと二人で感心する。
「ん?待てよ、てことは俺はその下位5%ってことか!?」
「そうなりますね」
アスクは入学試験を思い出すと、
「俺、実技試験満点だったんだぞ…そんなに筆記試験まずかったのか」
ライドは笑いを堪えながら、アスクの肩を叩いた。
「この学園の試験は筆記が7割。実力試験が3割だって噂だぞ?実力試験で満点とっても、あんまり意味ないって。あの実力試験は魔法を全く使えない生徒を落とすためだけって話だし」
アスクに衝撃が走る。魔族の価値観では実力が全てのため、なぜ筆記試験が優先されるのか理解できなかった。
「あ、アスクがどうしてもあの寮に住みたいって思うのなら、私の部屋に———」
「あ、教室着いた」
イリスの言葉を遮る様にライドがそう言う。イリスに睨み付けられるライド。
席も決まっていないので、三人固まって席に着くと、一人の教員が教室へと入ってきた。
アスクら生徒を一瞥す。
「よし、全員いるな。では、クラスルームを始める」
黒髪の長髪を縛り上げ、ポニーテールにした女教師。いかにも気が強そうな雰囲気が仕草、声、表情から伝わってくる。
「私は沙織・九条だ。珍しい名前だと思うが、東の国出身のためこの様な名前だ」
「おい、イリス」
「えぇ…まさか、こんなところで再開するなんてね」
アスクとイリスにとっては見知った顔。まさかこの学園で教師をやっているとは思わなかった。イリスと耳打ちをしていると、沙織からの視線を感じた。
「私語は慎め。貴様、放課後に職員室へ来い」
「ウゲェ…」
いきなり呼び出しを食らったアスクを見て、隣でライドが笑いを堪えている。呼び出されたが無視して帰ろうと決意したアスクであった。
その後、それぞれが自己紹介をしてその日は解散となった。
「アスクっ!合格していたんだね!」
放課後になると、すごい勢いでアスクの元へと走り寄ってくる女性とが現れた。
「シャノン!受かってたんだな!」
「うん!さっき、先生に呼び出されていたの見てびっくりしたよ。私語話ちゃダメだよ」
シャノンは悪戯っぽくそう言うと、アスクの手をとった。
「ほら!アスク、一緒に帰ろ!」
「ちょっと、あなた。いきなり出てきてアレイスター君をどうするつもりかしら…?」
アスクとシャノンの間に、イリスが入り込む。面識のない女が突然現れてアスクの手をとったのだ。本人に自覚なくてもアスクに恋心を抱くイリスとしては、もちろん面白くない。
「あぁ———君がイリスさん?アスクは僕と帰るんだ。イリスさんこそ何なのかな?」
「そ、そう。残念だけど、アレイスター君は私と帰る約束があるのよ」
「へ、へぇ。それじゃ、アスクに決めてもらおうよ。僕とイリスさん、どっちと帰りたいか」
「いいわね。アスク、私と帰るわよね?」
完全に被っていた猫が脱げているイリス。
「アスクは僕と帰りたいよねっ?」
思わぬ敵の出現により、いつもの穏やかさがなくなっているシャノン。
二人が振り向くと白髪の少年の代わりに、オレンジ髪の少年が椅子に縛り付けられていた。
「あ、アスクは帰りました…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
もはや縛られている事に文句すら言えないライド。目の前に繰り広げられる女の喧嘩に完全に飲み込まれ、謝ることしかできないポンコツと化している。
———プツンっ。何かが切れた。
この日、クラスメイト達は心に決めた。
『この二人は敵に回さないでおこう』と。
ライドを身代わりに教室を脱出したアスク。ブラブラと学園を散歩しながら寮へと向かって歩く。
「あの手の喧嘩はめんどくさいって師匠に習っといてよかったぜ…」
久々にクレアに感謝したアスクだった。
空を見上げながら歩いていると、昨日の出来事を思い出した。
———5年ぶりの再開。
彼が実家を追い出されて、既に5年が経った。その間に人が大きく変わることは理解している。彼自身も、性格は大きく変化した。
しかし、しかしだ。
「昨日のリーナの様子は明らかにおかしい」
テイクとの邂逅。5年ぶりのテイクは想像通り、いけ好かない貴族になっていた。しかし、死んだと思っていた存在が生きていたことへの、驚きは表情に現れていた。
一方で、リーナは表情を微動だにさせなかった。
アスクを大好きだったリーナの姿はなく、人形の様に、感情を失ったかの様に、彼女はただ立っていた。
この5年間でリーナが大きく変化した可能性もある。しかし、5年程度であそこまで人は変わり得る物なのだろうか。その可能性も否定できないが、最もあり得る可能性———。
「あの、クソ親父。リーナに何かしやがったな…」
リーナの才能に目が眩んで、父親であるハインツ・ローゼンクロイツが彼女に何かの魔法を施した可能性がある。
「俺の顔を見て慌ててテイクの奴も帰りやがったし…あの様子じゃ本家に報告してるだろうな…」
アスクの存在が本家に伝わり、下手に対策を打たれる可能性も否定できない。動くなら早く動いたほうがいいだろうと判断し、調査の段取りを脳内で組み立てていく。
王都政府の調査加え、自分の実家の調査も行う必要が出たことを考え、頭が痛くなるアスクであった。
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