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魔族って何ですか?

 ———深夜。


 星が瞬く下、とある密林で一つの麻袋が放り投げられた。


「んーーーーっ!」


「すまんな坊主。俺も、お前みたいなガキをこんな所に放り込むのは嫌だが、これも仕事だ。———だが、まぁ…俺もお前と同じ年頃の娘がいる。せめてもの情けだ」


 麻袋を放り込んだ男は、馬車から食料と簡単な武器や防具を麻袋に向かって放り投げた。


「じゃぁな。魔大陸の夜は冷える。さっさと火を起こさないと凍え死ぬぞ」


 男はそう言って、馬車に乗り込み、どこかへ行ってしまった。


 男が離れて数分経つと、自然と麻袋を結んでいた紐が解け、中から黒髪の少年が転がり出た。


「ようやく、外に出れた…ここは…やっぱり魔大陸なのかな」


 ———魔大陸。それは魔物や魔人が跋扈する魔の領域。魔王が支配する領域とされ、数百年前までは人大陸に住んでいる人間と大戦を繰り広げたと言われる。


「あのおじさん、怖かったけどいい人だったな…」


 しっかりと男の言葉を聞いていたアスクは、男が置いて行った剣と防具を身に付け、食料が入ったカバンを背負い込んだ。


「そうだ、僕のステータスを確認しよう…ステータスオープン」


———————————————————————

名前:アスク・ローゼンクロイツ

種族:人族


HP:80/100 MP:50/50


攻撃力:50 防御力:50

速さ:30 賢さ:10

器用さ:50 運:100


スキル:【無色の魔眼(ノーコード)】(S)

称号:【見捨てられし者】


———————————————————————


「わぁ…初めてみた。これが僕のステータス…。えっとこれが僕の魔眼か」


 スキル:【無色の魔眼(ノーコード)】の欄を触ってみると、より詳細な情報が表示された。


———————————————————————

スキル:【無色の魔眼(ノーコード)】(S)

能力:魔力視認(S)

———————————————————————


 スキル名の横に表示されているのは、スキルランク。スキルにはランクが存在しており、E〜Sランクまで存在する。

 アスクの【無色の魔眼(ノーコード)】もSランクであるが、そもそも魔眼が全てSランクであるため、Sランク以上のスキルは平等に評価されていないと言われている。


「まさか、…家を追い出されるなんて…」


 自分のスキルを見たことで、頭の隅に追いやっていた今日の出来事がフラッシュバックした。


 優しくはないが息子として扱ってくれていた父親、意地悪だが兄さんと行ってくれた弟。この二人があれほどまでに人が変わるとは思わなかった。


 そして何より、大好きだったリーナと離れ離れになることが寂しかった。


「うっ…うぅ…」


 涙がこぼれる。今日の出来事は若干十歳の彼にはあまりにも、衝撃的な事件であることは想像に難くない。


 涙をぬぐう。


「でも…いつまでも泣いてたらリーナに怒られるよね。まずは頑張って生き延びないと」


 持ち前の明るさと、リーナへの思いを胸になんとか歩みを進めていく。


「そういえば僕の魔眼って…」


 自分が追い出される原因となった忌まわしき魔眼だが、子供ゆえの無邪気さか、不思議と嫌悪感は湧いてこないようだ。


「———魔力視認」


以前、父親に習ったスキルの操作方法を実行する。すると、自分の周囲に様々な魔力が漂っていることに気がついた。


「これが魔力…」


 魔力にも様々な色があり、その漂い方も異なる。あるものは青白く、あるものは赤黒い。


 ———魔力って言ってもいろいろあるんだな…うん?


 漂っている様々な魔力の中で、少し変わった魔力を見つけた。普通の魔力は宛てもなく、その場を漂っているだけに過ぎないが、その魔力はある種の指向性を持って、森の奥へと続いている。


「行く宛てもないし、追いかけてみよう」


 魔力を辿って森の中を進むと、一件の古屋を見つけた。


 こんな森深くにあるというのに、コケひとつ生えておらず手入れが行き届いてる。


「おや、こんな所に迷い子かい?」


「———っ!?」


 突然、後ろから声をかけられ、アスクは慌てて振り返った。


 そこには、タバコを加え、スーツのような服を着崩した、燻んだ赤髪の女性が立っていた。見た目の年齢的には三十代程度であろうか。


「それに人の子じゃないか?大陸間には警備がいるはずだろうに…」


 一見、怖そうな外見の女性だが、その口使いや態度はどこから柔らかい。彼女自身、子供は嫌いではないようだ。


「えっと、あの…」


「そう、慌てる必要もないさ。まずは小屋に入って茶でも飲みながら話そうじゃないか」


 彼女に手をひかれ、アスクは小屋へと入った。


 小屋の中は簡素な家具だけ配置されており、その質素な生活を伺える。どうやら彼女はここで一人暮らしのようだ。


 椅子に座るように促され、椅子に座ると、女性が暖かい紅茶を出してくれた。


「あ、ありがとうございます」


「お、えらいじゃないかお礼を言えるなんて。まずは私の自己紹介だな。私の名前はクレア・アレイスター。クレアって呼びな。魔族だよ」


 ————魔族。小さい頃から教えられてきた人間の敵。しかし、アスクにはどうしても彼女が自分の敵とは思えなかった。むしろ、自分を追い出した人間の方が彼には恐ろしく思えた。


「ぼ、僕の名前はアスク・ローゼンクロイツです」


「ローゼンクロイツ…ふむ、ということは、人大陸の国境線を守っているあのローゼンクロイツ家の坊やってことかい」


 頷いて肯定を示す。


 そこから、少しずつ、アスクは自分に起こった出来事を話し始めた。そして———。


「なるほど。そりゃ、胸糞悪い話だね。一族のために自分の子を捨てたってのか」


 一見、クレアは怒ってなさそうな雰囲気ではあるが、彼女を取り巻く魔力が荒れ狂っているのを、アスクは視認していた。


「ほぅ…それがあんたの魔眼かい。どれ、もう少し見せてみな」


 クレアは面白そうにアレンの両目を覗き込んだ。


「なるほど、こりゃ【無色の魔眼(ノーコード)】だね。魔眼の中では最弱のものだ」


 そう言われ、アスクは肩を落とした。やっぱり父親の言うことは正しかったのだ。自分は一族の恥さらしなのだと、改めて理解した。


「で、あんたはどうしたいんだい?」


「———え?」


「別に【無色の魔眼(ノーコード)】だろうがなんだろうが、死んだ方がいい奴なんて、この世には存在しないんだよ。生きている意味なんて、死んだ後から付いてくるんだ。生きてようが、何してようがあんたの勝手さ」


「僕の勝手…」


「そうさ。父親に捨てられて、【無色の魔眼(ノーコード)】だって、自分で自分に烙印を押してくたばるのか、それとも、自分を捨てた奴らを見返すくらい強くなって自分一人でも生きていけるようになるか、どっちか、だ」


「見返す…」


 そうだ。こんなところで諦める訳にはいかない。自分はなんとしても、生き残ってリーナに再開するんだ。


 そして、強くなって、【無色の魔眼(ノーコード)】だろうが、なんだろうが、周りを認めさせてやる。


「強く———強くなりたいです。僕一人でも生きていけるように、みんなが僕を認めるように、そしてリーナに会うために」


「よし、よく言った!それなら、今から魔王城に向かうよ」


 クレアは立ち上がり、荷物を持てとアスクに言う。


「ま、魔王城!?」


 魔王城は魔族の王である魔王が住う城。人間の間では、そこにたどり着いたもので生きて帰ったものはいないと言われている。


「別にアンタを取って食わないから安心しな。」


 信頼しているクレアがそういうからには大丈夫なのだろうと思いたい、アスクであったが、今日だけで魔人と会話し、その上で魔王に会うというのだ。怖くないはずがない。


「あと、今日からあんたはアスク・アレイスターを名乗りな。私があんたの師匠さ。ローゼンクロイツの名前はもういらないだろ?」


 確かに、自分を捨てたローゼンクロイツ姓はアスクも今後名乗り続けたくなかった。


「あ、あのクレアさん」


「クレアさん?今後は私のことは師匠って呼びな!」


「は、はい!師匠!」


 魔王城に行くことが決まってからクレアのテンションがどんどん高くなっていく。アスクをそっちのけで、出立の準備を進めるクレア。しかし、アスクにはどうしても今、言っておきたいことがあった。


「ありがとうございます!」


「お礼が言えるのがあんたの美徳さ。今後も大事にしな。さて、行くよ!」


 クレアに続き、表に出る。すると見たこともない巨大な竜が二人の目の前に現れた。


「なに、驚いてるんだい。ほら、さっさと乗るよ」


 驚いて言葉も出ないアスクを抱えると、クレアは竜の背中に乗り込んだ。二人が乗ったことを確認すると、竜は羽ばたき、空へと舞い上がった。


「アスク、師匠からの一つ目の教えた。心して聞きな」


「はいっ」


 クレアにしがみつき、竜の凄まじいスピードに吹き飛ばされないようにする。


「魔族ってのは強さが一番さ。生まれも能力も関係ない。強い奴が自分を守れるし、自分以外も守れる。あんたも強くなって何かを守れる男になりな」


「はいっ師匠!」


 クレアに抱きつきながら、これから起こることにアスクの心は昂っていた。さっきまであれほどまでに落ち込んでいた心が不思議と軽い。


 これから自分は強くなってリーナと会う。そして、誰かを守れる男になるんだ。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。


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