表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

6

更新が滞ってしまい申し訳ありません(-_-;)ヘイベルナ閣下視点は■□マーク、サリュ姐さん視点は◆◇マークで区切らせて頂いてます。

■  ■  ■  □  ■  ■  ■  □


サリュシア=アノバテート先生は朝から軍の詰所に顔を出している。そう…先日より焼き上げていた菓子が出来上がったのだ。そして隊員達一人一人にアノバテート先生、手ずから菓子の袋を渡している。


「これ、焼き菓子です。良かったらお召し上がり下さい」


「っ!?やったーー!姐さんから貰えたっ!」


「サリュ姐さん!俺にも下さいっ…」


「お前は軍部の者ではないだろう?近衛は散った散った!」


俺がジロリと睨みながら近衛騎士の若造を睨むと、近衛騎士は俺を睨んできた。何だ?やるのか?


「怖い怖い…隊長止めて下さいよ…」


副官のクレルド=ビーン少佐が呆れたような顔で俺を見ている。


「先生だって欲しいと言ってくれる奴にあげた方が渡して喜ばれるし、一層嬉しいですよね?」


クレルドがそう聞くと、アノバテート先生はクレルドに向かって目潰しの笑顔を浮かべた。


「はいっ!喜んで頂けるのでしたら~勿論差し上げます」


「うわっ…眩し…」


やっぱりクレルドも目潰しを受けている。気を付けろ…女神を見る時の注意点は直接、顔を見ずに斜め下を見ることだ。しかしそこには女神の巨乳もあるので更に注意が必要だが…


アノバテート先生は近衛の若造にも笑顔で焼き菓子を渡している。おまけに反サリュシア派…があるかどうかは知らんが、普段から何かとアノバテート先生に突っかかっている奴らにも笑顔で焼き菓子を渡している。先生っ!そんな奴らには笑顔は要りませんよっ!


「嬉しいな~頑張って作った甲斐があったな…皆、喜んでくれていますね」


そう言ってはにかみながら、俺に微笑んでくれている先生は今日も可愛い…


先生は「鍛錬場も行ってきます」と行って詰所を出て行った。


「なんすか、アレ…めっちゃ可愛い…」


「アノバテート先生はいつも可愛い」


普段からサリュシア=アノバテートは認めん!と豪語しているビクリュム大尉が珍しくアノバテート先生を褒めたので、すかさず更に可愛いを連発しておいた。ビクリュムとクレルドに驚愕の表情で見詰められた。


「朝から…惚気ですかね…」


クレルドが素っ気無くそう言った。


「え?マジですか?」


ビクリュム大尉がもっと驚いたような顔をした。


しかし今日はどんなにクレルドやマーカスに怒られても嫌味を言われても気にならないぞ。


何と言っても本日はようやく念願叶って、サリュシア=アノバテート先生のご自宅で夕食を共に出来るのだからな。


今日は残業しないぞ…魔獣も出るなよ…揉め事を起こすなよ…大人しくしておけよ…


「隊長…心の声が駄々洩れです…」


俺は書類を書きながら無意識に心の声を呟いていたらしい。


マーカス=シスリー中尉が呆れた顔をしながら室内に入って来ると、俺の執務机の前に立った。


「ビィルワンド王太子殿下がお呼びです」


「何の用だ…」


マーカスはちょっと目を見開いてから


「詳細はお聞きしておりません」


と答えた。


なんなのだ…今日はアノバテート先生との夕食会に向けて気持ちを整えておきたいのに…


王太子殿下は俺と同い年で所謂、幼馴染同士だ。殿下は今は一児の父だ。自分が先に婚姻して子供もいるからと恋愛関連では何かと煩く俺を突いて来るのだが…今回もソレか?


王太子殿下の執務室にお伺いすると…ビィルワンド殿下は、少し顔を強張らせていた。強めの眼差しでこちらを見る時はビィルワンド殿下もアノバテート先生に目元が似ていることに気が付いた。流石、従兄妹同士…少し胸がざわついた。


「人払いを」


俺が室内に入るのと交代に殿下の側近方が部屋を出て行く。何だろうか…


「まあ…座れ。話が長くなるかもしれないしな」


殿下の対面のソファに腰かけると、ビィルワンド殿下はすぐに口を開いた。


「たまたまなのだが、うちの側近が噴水広場で逢引をするお前とサリュシアを見た…と報告して来た。別の日でもまた噴水広場で逢引をしていたと聞いた…率直に聞こう、お前…サリュシアと付き合っているのか?」


「…っ!」


付き合う…とは男女交際のことか?それならば否…だが食事に付き合っている…と点に関しては、是とも言える…


「どうなんだ?どっちなんだ?」


ビィルワンド殿下は俺に返答を急かしてくる。


「アノバテート先生のご自宅には伺っては、いる…」


「自宅に押し掛けているのか!?」


押し掛……そんな野蛮な感じではないが夕食時にお邪魔しているのは間違いない。


「主に夜に会っている…」


俺がそう答えるとビィルワンド殿下は息を飲んだ。


「…っ!…そうか、うん…サリュシアが相手か…サリュシアも相手には苦労すると思っていたが…お前なら…そうか!」


な、なんだ?ビィルワンド殿下は一人で大きな声で叫んでから頷いて何かを納得してしまっている。


「よしっよしっ!ルドガーとか…これは意外な…と思ったがお堅い同士いい感じかもしれない!いやぁ盲点だったよ!そうだよ、あまりに近すぎてそこに目が向いてなかったよ!だがっ心配するなっルドガーよ!私が迅速に派手に進めてやろうじゃないか!」


「は…はぁ?」


何だかよく分からない…ビィルワンド殿下はものすごく一人で話しまくり、一人で納得し、何かの結論を出すと立ち上がり、執務机に座ると猛烈な勢いで手紙?を書いている。


「こっちは上手くしておくから、今日はもういいぞ」


ビィルワンド殿下の『こっち』発言に『あっち』があるのか?と何か分からないまま、首を捻りつつ王太子殿下の執務室を退室した。


そうだ、殿下の戯言に付き合っている時ではない。来たるべきアノバテート先生との夕食に向けて心と体を整えておこう…


「少し体を動かしてくるか?」


その後、鍛錬場に行き…部下を相手に体を動かした。すっきりした。


◆  ◆  ◆  ◇  ◆  ◆  ◆


夕方、青痣だらけの軍の若い子達が大挙として医術室に押し掛けていた。


「姐さんッ頼むよ!こんな鍛錬受けてたら…シヌ…」


「あの筋肉馬……閣下を何とかして下さいよ!」


「姐さんの技巧で足腰立たないようにしてやって下さい!」


技巧…足腰立たなくねぇ…そんなの私以外の女性でも難しいんじゃないかしら?女性に対して足腰立たなく…は分かるけど、あの体力のありそうな閣下よ?


どんな手練手管を使えばいいのよ、逆に私が知りたいわ。


「あーはいはい~やれるだけやってみるから。あなた達こそ体力を付けて……」


「ちょっ…!ヤレるだけヤッて搾り取ってくれるんだって!?」


「姐さんが本気出してきたぞっ!」


「隊長を寝台の上に沈めて下さい!」


「……」


この子達…本当に人の話を聞かないわね。


まあ物理的に寝台の上に沈めるのは無理だとしても、私の作ったお料理を美味しいと思ってもらって、精神的にひれ伏して貰えるように頑張りましょう!


夕方急いで帰宅すると、料理の仕込みに入った。魔獣肉と魔獣鳥を挽肉にして、手ごねハンバーグを作った。挽肉の残った細切れ肉は根野菜と一緒にスープで煮ることにした。


メインの料理を作り終わって、お酒のつまみを作っていると玄関の呼び鈴が鳴った。


ヘイベルナ閣下だわ…布巾で手を拭いてから玄関先に移動した。


玄関扉を開けるとヘイベルナ閣下が今日も神々しい美しさで立っていた。


「いらっしゃいませ、ヘイベルナ閣下」


「お邪魔します、アノバテート先生」


そうして今日も閣下はモスグリーン色の可愛いソファに座って微笑んでおられる。似合わな過ぎて…申し訳ないけれど…それも可愛いなんて思うなんて…いけないいけないっこんな素敵なルドガー=ヘイベルナ閣下に可愛いなんて表現を当てはめていけないわね。


「本日はハンバーグにしましたの、お召し上がり下さい」


ヘイベルナ閣下の前に配膳をしていくと、閣下はそれは嬉しそうに微笑まれている。


「アノバテート先生の作られるお料理は本当に美味しいので、いつも楽しみです」


「まあ、ウフフ…閣下今日のデザートは蒸しプリンですよ」


「おお…そんな手の掛かる菓子まで作って頂いたのですか?」


ヘイベルナ閣下の嬉しそうなお顔を見たい為です…なんて言えるはずもないけれど


「はい、是非お召し上がり下さいませ」


そう伝えると閣下は目を輝かせている。


この夕食会が最近の楽しみの一つだわ。閣下が飽きるまで付き合って下さると嬉しいのだけど…


その夕食会の数日後


医術医院の診察時間中に、実家のアノバテート公爵家の使いの者がやって来た。


「公爵閣下がお呼びです。お仕事が終わり次第、公爵邸に戻られるように…との事です」


「え?お父様が?」


勤務中の時間にこんな風に呼び出してくるのは、初めてね。はっ…!?もしかして、どなたかが亡くなったのかしら…


「ムラゼ、どなたか亡くなったの?」


私の脳裏に母方と父方の祖父母の顔がちらついた。どちらもご高齢だわ…


「いえいえっ!逆に押し掛けて来られるほどお元気で!」


「お…押し掛ける?」


なに?その表現は…


「はい、屋敷に押し掛けて来ておられます…」


お父様付きの侍従ムラゼは顔をしかめている。屋敷に祖父母達が来ているの?益々不安になるわ…何があったの?


ああ、どうしよう。


緊張しながら診療を終えると、ご丁寧にも私を待っていたムラゼと一緒に馬車で公爵家に帰った。


「待っていなくてもよかったのに…」


「お嬢様の逃亡防止の為です…」


ムラゼは何故か顔を強張らせている。


逃亡?どうして…?私が逃げ出すような何かが待っているの?益々怖いわ…


緊張感に包まれたまま、馬車は公爵家(実家)に到着した。やけに笑顔のメイド長が出迎えてくれて、それもまた怖い…


恐る恐る皆が待つという貴賓室に向かい、メイド長の開けてくれた、扉の中を覗き込んだ。


目の前に誰かが走り込んで来た!?しかも思い切り抱き付かれた…!?この方は…


「おばあ様!?」


な、なんと抱き付いて来られたのは前王妃…今はご隠居生活中の王太后陛下だ!?ていうか、前国王陛下(祖父)と父方の祖父母(前公爵、公爵夫人)もいる。本当に全員揃っている。しかも元気そうだ…


「おめでとう!サリュシア!」


「なにが?」


抱き付いて来た、おばあ様の顔を覗き込んだ。


おばあ様は満面の笑みを浮かべて叫んだ。


「ルドガー=ヘイベルナ公爵子息との婚姻よ!」


「……え?」


な…なぁんですって!?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ