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山場もなくのんびりとした話です。中盤くらいで少し騒がしくなるかもしれませんが、基本はまったりと鈍い美男と吞気な美女が食事しているお話です。異世界のお話ですが世界観はごちゃ混ぜです。なんとなくの設定だとご理解頂けたら幸いです。


一部文章表現を変えております。ご指摘ありがとうございます。

■  ■  ■  □  ■  ■  ■  □


「男前だよな?」


「そうだな」


「歳は26歳、家柄は公爵家三男、美丈夫で性格も問題ない」


「うんうん」


「唯一の欠点というか、これが大問題なんだけど……鈍い!特に恋愛方面に特化して。おまけにクソ真面目すぎて、女遊びもしない」


「う~ん…マズいよな」


「このままじゃ行き遅れだな」


「もう遅れてるっての……ん?行くというか嫁をもらう立場じゃね?」


「あ、そうか」


男達はそこで話を止めて…皆で今、噂をしていたルドガー=ヘイベルナ中将閣下を見詰めた。ルドガーは美麗な顔の眉間に皴を寄せて、書類とにらめっこをしている。


「カッコイイ~!無駄にカッコよすぎて殺意まで沸くぜ!」


「あの無駄に綺麗な顔面と肉体美を女遊びに使わないなら俺に寄越せってんだ!」


「勿体ないよな…何とかしてあげないと…」


男達はまた作戦会議を始めた。


ルドガー=ヘイベルナは男色家か?イヤ違う。綺麗な女性がいれば「綺麗な女性だな」と普通に賛辞を送っているし…性的嗜好は普通なはずだ。


何かきっかけがあれば恋愛に熱心になって嫁をもらうのでないか?


もしかすると〇貞の可能性もある。そうならば、相手の女性は経験豊富な人にお願いすればいいのでは?


待て待て、いきなり…色々なお付き合いを飛び越えてはルドガー中将には刺激が強かろう。


やはりここは……


百戦錬磨の女神様、サリュシア=アノバテード姐さんに頼もう!


男達…ルドガー=ヘイベルナ中将閣下の部下、第二遊撃部隊の隊員達は急いで、魔術師団の施設内にある医術医院に駆け込んだ。


「サリュ姐さん!」


「は~いなぁに?また怪我したの?」


そう言って男達を顧みた、サリュシア=アノバテードは魔術師団に籍を置く治療術師だ。サリュシアの顔を改めて見て、第二遊撃部隊の隊員達は生唾を飲み込んだ。


サリュシアは御年23歳だ。少し癖のある菫色の柔らかそうな髪を軽く結わえ、瞳は濃い紫色、睫毛は長く、流し目が色っぽい。肌は白く透けるような玉肌で唇はプルンとした桜色。胸は張りがあり豊満でありながら腰はくびれ…そして痩せ過ぎずほど良い筋肉をつけた締まりのある美しい体をしている。


そしてその美しい容姿を武器に男を手玉に取り、常に男との噂の絶えない百戦錬磨の女神様と呼ばれているのだった。


勿論家柄も良い。何と言っても王太子殿下の従姉妹、公爵家の次女だ。


隊員の1人がサリュシアに向かって騎士の礼をした。


「サリュ姐さんにお願いがあります!ルドガー中将閣下を男にしてあげて下さい!」


サリュシアはブブッ…と飲みかけの珈琲を吹き出した。


◆  ◆  ◆  ◇  ◆  ◆  ◆


「……と言う訳で、サリュ姐さんにうちの隊長、ルドガー=ヘイベルナ中将閣下の恋愛指南をお願いしたいのですよっ!」


「いやぁ~あのヘイベルナ閣下でしょう?指南する必要あるのかな?モテるでしょう?」


「姐さんっ姐さんっ!」


私は隊員の若い男の子達に取り囲まれた。筋肉の塊達よっ怖いって!


「あの堅物クソ真面目な隊長が女遊びをするわけがありませんっ!」


「ヘイベルナ隊長は〇貞ですよっ間違いない!」


「兎に角、ヘイベルナ隊長に男女交際のアレコレを教えてあげて下さい」


「ヘイベルナ隊長の経験値が上がれば、隊長だって姐さんみたいに、華やかな恋愛をしていつかは素敵な女性と家庭を持ってくれるはずです!」


何だかものすごく熱心ね。


「どうしてヘイベルナ閣下の恋愛問題にそれほど熱心なの?」


隊員の男の子達は体を震わせると、半泣きになった。


「だって自分が暇だからって夜中まで走り込みやらされるんですよおっっ!」


「おまけに自分が暇だからって休み取らずに連勤するんですよぉ!俺達が逢い引きで休みたいって言ったらしょんぼりするんですよ?休み辛れぇぇ!」


しょんぼりされるんだ……怒られるより辛いね。


「兎に角、姐さんが恋愛指南をして隊長を立派な男にしてやって下さい、お願いします!」


「姐さんの指南で男女交際の素晴らしさに目覚めれば、隊長も彼女の為に俺達がどれほど時間が欲しいのかも理解してくれるでしょうし、俺達の自由の為にもお願いします!」


「いやあのさ…」


「姐さんっお願いします!」


筋肉達は医術室でひしめき合いながら敬礼をした。押し切られた…


どうしようか…第二遊撃部隊の若い子達の迫力に圧されて了承してしまったけど、恋愛指南だって?男女交際だって?


そんなもの未経験だし何をどうするのか…全く分からない。


自分でもおかしなものだと思う。小さい頃から、綺麗ね可愛いねとずっと言われ続けていた。自分は人より綺麗なのだな…とぼんやり思い始めた時に学舎の同級生の貴族の令嬢達数名に囲まれてこう言われた。


「アルフレッド様はミオリーナ様の婚約者なのよ!?誘惑なさらないでっ!」


アル……って誰だ?


ミオリーナ様は知っている。今、私の目の前にいる隣の組の伯爵家のご令嬢だ。しかしアルフレッドって誰だ?怪訝な顔をしていると、とぼけないでくださいな!とドンッと友達その1に肩をつかれて後ろにひっくり返った。驚いた…人から小突かれてしかも転ぶなんて人生で初めての経験だった。


その小突かれ事件?の後に自称、アルフレッドとかいう人が私と付き合いたいと急に言ってきた。なんともぼんやりした印象の男性だった。


「私の両親に聞いてみて下さいませ、私の一存ではお返事出来ません」


と答えたら次の日から、アルフレッドが私にやり逃げされたと吹聴し始めた。どういうことよ?


今にして思えば女性に対して、やり逃げという言いがかりは適切でないと思うし、どう考えてもアルフレッドという男もよくよく自分の顔を鏡で見てから言って欲しいと思う。


あなた…私にやり逃げされるような、イケてる顔面か?


こちらにも選ぶ権利はある。同じヤリ逃げるなら男性の顔面の良し悪しは、こちらの好みの顔を選ばせてくれ。私だって誰でも良いって訳ではない。


それからの私の恋愛方面の噂話は散々だった。チャラチャラした遊び人しか声をかけてこなくなった。断るとその振った男が三倍返しとばかりに私の悪癖や男癖の悪さを吹聴する。


最初はムキになって否定していたが諦めた。特に女性は寄ってたかって噂話を広げまくり私を鼻つまみ者扱いにしていた。女の敵は女…痛感した。


だがこんな私でも数少ない女友達がやっと出来た。正直、私とは真逆の真のモテる女のエカテリーナ=ヘルベ伯爵令嬢だ。彼女の外見は可愛い。兎に角可愛い。但し中身は魔の化身のようだけど。


でも私はこれ以上悪くなりようもないほどの、どす黒い性格の彼女を一番信用している。だって一見ニコニコしている女の子ほど裏に回れば悪口を吐き散らしているんだもんね。


エカテリーナは散々令嬢らしからぬ悪態をつくけれど、決して人を蔑んだり貶めたりはしない。


文句を言う時は正々堂々と…これだ


エカテリーナは今は同い年の伯爵家の長男に嫁いで一男一女の母になっている。あんなに遊び回っていたのに、結婚したのは幼馴染の男の子だったというのが驚きだ。


「だって私のこと、可愛いっ言ってくれるのは彼だけなんだもの」


というのが結婚の理由らしい。


世の貴族子息にはエカテリーナの苛烈な性格は畏怖の対象らしいのだ。


ちゃんとエカテリーナと付き合えばわかるのに、彼女の怒りは理不尽なことに対する怒りなのだから…


そうして私はすぐにエカテリーナに連絡して、ルドガー=ヘイベルナ中将閣下の件を知らせて教えを乞うた。話を聞き終わる前からエカテリーナは呆れた顔をしていた。


「どうしてすぐに断らないのよ?いや分かってるわ。あんた昔から押しに弱いもんね」


「うん、筋肉の凄い男の子の集団に囲まれたので、恐怖で頷いてしまった…」


「サリュ~今日は夜までいるのぉ?」


私の膝の上によじ登ろうとしていたエカテリーナの息子のボルトレンティが、キラキラした翡翠色の瞳で見上げてきた。


「ボルト、ごめんね。今日は……今から閣下とご対面なのよ」


私がそう言うとエカテリーナがガバッと立ち上がった。


「ええっ!?今日なの?あんたなんでそれを早く言わないのよ!」


「だ、だって、今日閣下に偶然を装って…え~と商店街の横の広場で声をかけろって…」


「ちょっと何そのガバガバな作戦はっ!?」


「え?第二遊撃部隊の子達が…」


「あの筋肉馬鹿どもっ!」


エカテリーナはそう叫ぶと扇子を振り回した。エカテリーナは私の体を引き寄せると耳打ちをして話し始めた。


■  ■  ■  □  ■  ■  ■  □


「ヘイベルナ閣下?」


広場を通り抜けようとして声をかけられた。この声は知っている。医術医院に在籍している女神だ。直視したら目潰し攻撃を受けると男どもの間では噂されている。


生憎と自分は恐ろしく丈夫なので、直接お姿を見て治療を受けたことはない。ゆっくり振り向くと、夕闇迫る広場の噴水の横に神々しい女神は立っていた。この広場に、たまたま来ていたのだろう男女の男の方が、女神に熱い眼差しを送っている。女神は微笑みながら俺に近付いて来た。


成る程、これは危険だ。直視をしないように僅かに目線を下に向けた。丁度豊満な胸が目に入ってしまった。これはこれでいけない…


「閣下は広場にご用ですか?」


まだそれほど近づいて来ていないのに、女神からは花の香りのような良い匂いがする…気がする。


「これはアノバテード先生」


このサリュシア=アノバテードを皆は『先生』や『サリュ姐さん』と呼ぶ。彼女は優秀な治療術師だ。


彼女は医術学院を卒業してすぐに、一般外来を受け持つ術医として働き出した。するとその神々しい美しさが、たちまち巷で評判になり用もないのに受診に来る男どもが殺到した。


そのうち何故だか受診に来ている本人の家族…主に女性達から苦情が入るようになり、僅か1ヶ月で王宮外来の勤務に代わることになった。


そして王宮外来…つまり王宮勤務の役人や貴族を診察を始めたのだが、また同じく女性達から苦情が入り今度は軍属専門医になったのだった。


軍属専門医は文字通り軍人のみの診察にあたる。軍医は皆が嫌がりなり手がない。いつも欠員が出て、今は年配の男性医術医2人がいる。


何故欠員が出るのか…


我が軍は魔獣や魔物の討伐の他に辺境から異人族が頻繁に戦争を仕掛けてくる為、常に軍医も戦場に駆り出される。当然、重傷者治療や死者の検死…その上自分の命の危険もある為、過酷な職場になるので皆敬遠するのだ。


しかし、この女神サリシュア=アノバテートは一切の文句は言わずに軍属専門に配置換えに同意したという。


当然…軍人が皆、歓喜に沸いた。高嶺の花の女神とお近づきになる機会が訪れた!


まあ誰でもそう思うだろう。


だが…サリシュア=アノバテートは噂されるような男を渡り歩くような女性ではなかった。少なくとも俺の知る限りは浮ついた事も無く年配の医術医との折り合いも良く、人当たりも穏やかで治療の腕も確かで治療術師としては申し分ない人材だということがすぐに分かったのだ。

またも思い付きで書き始めました。風呂敷は広げない予定です^^;のんびりしているカップルを書いていきます。

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